蒼ノ姫 月ノ香  ソノ、カケラ


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1: into (2002/03/09 22:36:00)[terag at pop06.odn.ne.jp]

 あなたはだれ?

                         ここはどこ?

 わたしはだれ?

                         あなたはなに?

 ここはなに?

                         わたしはなに?

 あなたはいるの?

                         どこにいるの?

 わたしはいるの?

                         どこにいるの?

 いまはあるの?






 夢。




 わたしはからっぽだ。
 いきさえできず。
 あるくことはもとより。
 なやむことも。
 くるしむことも。
 なくことも。
 わらうことも。
 あなたをすきになることさえできない。
 でも。
 もしかしたら。
 からっぽのわたしにからっぽをつめていったのなら。
 いつか。
 からっぽでないわたしができるのだろうか?




 夢。






 眼を開いて世界を視ることに何の意味があろう。それが幻視でないと誰が言い切れ
るんだ?
 この現の世にはその名に反し、現れることなど欠片もない。全ては幽かだ。
 ならば、此処にいるあたしは誰だろう?
 現世に生を受けたモノであるのに、そうではないかのように幽かなモノだ。
 ならば。
 この世の何処にも現世など有り得ないことに成るではないか。
 全ては何処にもなく、また何処にでもある。
 揺れている。
 遊螺遊螺、遊螺遊螺。
 それはまるで、水たまりに映った月のようで、不意に

 涙が出た───────



        蒼ノ姫 月ノ香 ソノ、カケラ





 一瞬世界はフラッシュバックした。
 さて。
 行き着く先はどんなトコロだろう?
 あたし、月姫蒼香はそれを楽しみにしていた。


 そして、月が揺らめく。




 私が起きた所は、見たことのない座敷だった。天井は自分の家より遥かに高い所にある。木目が斑模様に見えて、本当は禍々しいモノになるのだろうけれど、何故かそれは綺麗に見えた。
 障子から入り込んでくる光は淡く、優しい。それで、今は夜だと知れた。
 此処は何処だろう? 当然の疑問が今更になって湧いてくる。
 それでも何故か、恐いと思えないのは自分でも不思議としか言い様がなかった。
 何故か、安心する。
 そしてその安心は、どうしても未だに感じたことのない、安楽死の感情とよく似ているのではないだろうかと思った。
 どうやら、私は布団に寝かされていたらしい。勿論寝た記憶など無いのだが。
 起こしていた躰を倒して、布団に寝ころんでみた。
 ぼすっ。
 枕が音を立ててへこんだ音が夜に聞こえた。冷たくて、気持ちが良かった。
 目が疲れていた。
 思い出してみると、私は泣いていたんだっけ。
 どうして、こんな所で寝かせてもらって居るんだろう?
 思い出せない。
 月の景しか、思い出せない。

 ならば。
 月の光を見れば、思い出すかも知れない。
 それは無駄な行為だと知りつつ、私は布団から起きあがって、蒼白く透けている障子を、開けた。
 濃緑の森。景を反射する水。屋敷の天井。
 そして、蒼天には、月が、それも、真白に輝く、夢のような月が

 それを背景に。
 一人の少年が、縁側に座っていた。

 何と声を掛ければいいのか、私はとっさに思いつかなかった。
 なんて、綺麗。
 それはあまりに、そう、あまりに完璧すぎて、
 私は、どうすればいいか立ち竦んだ。
 恐い、と思った。
 触れてはいけないモノ、それが其処にいる気がする。
 完璧なモノに触れてもいいんだろうか? それはこの少年を怪がしてしまうことにならないだろうか?
 辛い。
 私は目をそらして、天の月を視た。
 それは儚く、淡く、夜の海に浮いていた。


 どうして、私はこんな所にいるのだろう?





「おはよう」
 ?
 気が付くと、少年は笑ってこちらを見ていた。
「おはよう?」
 もう一度、彼は私にそんなことを話す。
 戸惑ってしまう。
 返事をしてもいいモノだろうか?
 彼は笑っていた。私が返事をしないのが、そんなに珍しいのだろうか?
 え……っと、
「……おはよう」
 肺から息を絞り出して、私は彼に返事をした。それだけのことなのに、酷く疲れた。
「うん」
 彼は、笑ったままで、そう答えた。
 何とはなしに。


 涙が、出た









 どうも。intoです。
 蒼ノ姫 月ノ香 ソノ、カケラ の続きです。お待たせして申し訳ありません。
 羽ピン、出すかどうか迷ってます。出したら歪んでいきそうだしなー(w
 まぁ、もうちょっと悩みます。
 感想、アドバイス、待ってます。


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