灰色で敷き詰められてしまった青い空。
それは、いつもなら蒼白く浮かぶ月すらも隠してしまう。
そして、凍てつくような冴え渡る大気。
それは、最近、あまり感じられなくなった眠気すら吹き飛ばしてしまう。
もっとも眠れない理由は、その環境の為だけではないのでしょうけど。
ふと部屋の窓から外を見ると雪が降り始めていた。
思わず窓を開けて、月も星も見えない薄暗い空を眺めてしまう。
その空が、まるで私の心のようだと。
そんな私に粉雪が降り落ちてくる。
まるで私を癒してくれるかのようにやさしく、ゆっくりと。
でも、私はそんな光景を見て昔を思い出していた。
雪が振り出したのを見て、嬉しそうにはしゃぎながら、私の手を無理やり引っ張って
庭に向かう幼い頃の兄さんの姿を。そして、雪が降った事よりも、兄さんに手を握られて
いた事の方が嬉しかった私の気持ちを。
でも、今は………。
きっと今頃は、「寒いだろう」と手を握っているのかもしれない。
いや、あの鈍感でどうしようもない兄さんの事だから、そういった事には気付かない
かもしれないわね。そして、やきもきしながら、相手の方から手を握ってもらっている
かもしれないかな。もしかしたら素で優しい兄さんの事だから、自然と手を握ったりとか
してるかもしれない………。
そんな想像をしていると、やりようのない寂しさが私を襲ってくる。
だって、その相手の女性は私ではないから……。
私は今でもあの手を握られた時の事をしっかりと覚えているのに。
あの時の気持ちも、雪の感触も、凍てつくような寒さも、あの手のぬくもりも……。
でも、もう兄さんは覚えていないのかもしれない。
今の兄さんには大切な人がいるから。
でも、私は忘れられない………。
たぶんこれからもずっと……。
だって、まだ兄さんを愛しているから。
絶対に忘れない。
後書き
久しぶりにＳＳを書きました。
さっき雪を見て、即興（３０分）で書いたので非常に情けないＳＳになってます（汗
いろいろとつっこみたい所もあると思いますが、今回は許してください。
まあ、仕事が忙しかった時期も過ぎて、最近やっと書ける時間がとれるようになってきたので、
また投稿していきたいと思ってます。
よろしくです。