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慈慰:シキ


 目の前の琥珀さんは今すぐにでも踊り出しそうなほど嬉しそうだ。
 こんな夜更けに秋葉に気づかれないように密会しているというのに。
 ――いや、この『気づかれないように』『密会』しているからこそ、興奮し
ていた。
 秋葉のことを思うと目の前でいちゃいちゃするのは気が引けて、だからつい
普段はそっけなく、ギクシャクしてしまう。
 でもそれもいうなればこのための興奮剤というか刺激というべきか。
 つまりは、琥珀さんだけでなく、この俺もとても興奮してはしゃいでいた。
こんな時でもないと、琥珀さんべったりと甘えたり、また甘えてきたりするこ
とはないからだ。
彼女を甘えさせたいというのは、俺の見栄っ張り。男の矜持なのかもしれない。
でも、琥珀さんが甘えてくれるのならば、俺はなんだってしてしまうだろう。
同じ年だというのに、琥珀さんは哀しいぐらい”大人”だった。
 そんな琥珀さんが嬉しそうなのである。
 だから、俺の気分も浮つき、はしゃいでいるのは、仕方がないといえるだろう。

「ふふふ、志貴さん」

歌うように、笑いながら話しかけてくる。本当に嬉しそうだ。

「今日は趣向を凝らしてみましたよ」
「趣向?」

すると悪戯っ子のような笑みを浮かべて、近寄ってくる。
そしていきなり、耳をぴちゃりと舐めた。



なま暖かいぐにゃりとした感触と愉悦。
口から思わず声が漏れそうになる。
ゾクリとしたものが背筋を駆け上っていく。
思わず抱きしめようとすると、するりと逃げてしまう。
割烹着の女性は悩ましげにその唇を舐め上げる。

「志貴さん、そこに腰掛けていてくださいね」
「え……あぁ」

思わず反射的に頷く。

「絶対に動かないでくださいよ」

そういうと、宝石色をした瞳をもつ彼女は着物の裾をゆっくりと持ち上げていく。
足袋に包まれた白い足。
すね。
ひざ。
そして肉付きの良い太股。

それを見ているだけで、ドキリとする。

その焦茶色の着物からみえる生足はあまりにも白く、蠱惑的だった。

「あはー、志貴さん、ここからですよ」

琥珀さんは笑う。
なんて淫らな笑み。いつものあのお姉さんしている琥珀さんではなく、女の貌。
その顔は興奮しているのか少し赤くなっていて、目元が色っぽい。
そして裾をもっと持ち上げると、
そこには琥珀さん自身と――。

「これは……」

思わず生唾を飲み込む。
そこには白い太股と陰毛のまわりに艶やかな赤い牡丹の花が3つ。
くらくらしそうなほど、匂い立つ。
乱れ咲いていた。

「入れ墨、ですよ」
「……入れ墨って――」

その白い肌、淡く茶色くほっそりとした毛の間に咲き乱れる真っ赤な牡丹。
その白い肌は雪のようで。
雪の中にさく牡丹を思わせた。
そして指が伸びる。
茂みをかき分けて、わざとそこを広げる。
また咲く真っ赤な牡丹。
毒々しいまでの赤。
その色にくらくらする。
その芳醇な、甘く爛れた蜜の匂い。
芳醇でむせかえるような琥珀さんの匂い。
その匂いさえここまで漂ってきそう。

琥珀さんは鼻から息を甘く吐くと、そこをゆっくりとこすり始める。
わざと見せつけるように、襞を広げて、奥まで曝して。
そこにも真っ赤な牡丹が咲き乱れていた。
太股に、下腹に咲き乱れる牡丹の紅の花たち。
鮮やかに艶やかに咲き乱れ、男をいざなう。
深く濃いその深紅の花の中でもっとも淫らに咲く中央の花。
ゆっくりとゆっくりと襞をなで回し、躰を震わせていた。

「志貴さんも……出して……」

そのまま押し倒したくなるのを我慢して、言われるままにベルトのバックルを
外し、ズボンを下げて、トランクスから自分を出す。
 すでに勃っていた。
まぁこんなところを見せられて興奮しない男はいないだろう。
それを見て、琥珀さんの喉がゴクリとなる。
熱く潤んだ目で俺のを見つめていた。

たまらない。

何かが熱く滾っていた。
俺はそれを握ると、擦り始める。
それを見て、艶やかに微笑む。
そして指を淫らにつかって、見せつけてくる。
そこをひらいて、ゆっくりと大きく上下に動かす。
気持ちいいのか体がわなないていた。
ねっとりとした息を吐く。
そしてゆっくりと円を描き、そしてその真珠の突起に指をやる。
体が大きくゆらいで、啼く。甘く啼く。
その声に痺れてしまう。
甘い疼きが体をざわざわとさせる。
先から腺液が漏れ始め、ぬちゃぬちゃと音がし始める。
琥珀さんはあそこをひらいて、大きく動かしはじめる。
 いやらしい湿った音が聞こえてくる。
 からみつく粘膜の音。
 からみつく粘液の音。
 そしてその壺へと指をそっと沈めていく。
 見えるように、
 わざと、
 ゆっくりと、
 ひろげて、
 あからさまに。
 そして第一関節までいれる。
ふと琥珀さんの視線を感じて、見てみると、笑みを浮かべていた。
薄く、でもはっきりとした笑み――いやらしい淫婦の笑み。
とたん、指をさらに深く沈める。
第二関節まで。
すると中から滴がこぼれ、伝わって、したたり落ちる。
 俺のはさらに大きくなる。
口の中がねばついて渇き、痛みさえ感じはじめる。
 さらに奥に指を入っていく。
滴が次々にこぼれ、したたり落ちていく。
嗅げるはずのない匂いに息が詰まっていく。
琥珀さんは目を閉じ、魂さえも吐き出しそうな長く蕩けるような息を吐く。
赤い舌がちらりと見えて、唇を舐める。
そして指は完全に埋没してしまった。
しばらくそのままで、体を震わせている。
紅の牡丹の花々も震えている。
  花の、
  その香りに、
  その色に、
  その艶やかさに、
  その美しさに、
  ――――ただ、見とれてしまう。
  ――――ただ、見惚けてしまう。
 やがて。
その指をゆっくりとゆっくりと抜き始める。
てらてらと粘液で光る指が淫らで、そそる。
からみつく粘液と粘膜の音だけで。
そして全部抜ききると、近づいてきた。
 その指をそっと俺に差し出す。
ためらいもなくそれをくわえた。
琥珀さんの味と匂いがひろがっていく。
  いやらしい味。
  淫らな匂い。
  琥珀さんのオンナの味。
それをわざと音をたてて舐めて、啜る。
猥褻な音。
 琥珀さんはそんな俺を見ながら、左手でその白い胸を揉み始める。
襟元から手をいれて、触れている。
着物の上からでもその動きがわかる。
着崩れ、乱れた琥珀さんにそそられた。
息がとまるぐらい。
リボンでとめてある髪もゆっくりと乱れ、ほつれ毛がたまらない。
熱く潤んだその瞳が、
濡れたその唇が、
火照ったその頬が、
着物の下でうごく手のその動きが、
たまらなくさせる。
 そして、ゆっくりと指が引き抜かれる。
すでに味も匂いもしなくなっていたが、それでも俺はしゃぶっていたかった。
その指先で俺の唇をそっとなでる。
震えるほど、心地よい。
 そして近づいてきて、キスする。
舌がするりと入ってきて、俺の舌に絡んでくる。
俺もからめる。
唇とそれよりも少し固い舌が俺の口を蹂躙する。
俺もまけじと蹂躙する。
舌がからみ、互いの唾液を啜り合う。
舌が歯茎を、歯を、唇を、なめ回し、いやらしい動きをして俺を惑わす。
ぼおっとしてしまいそうなほどの口づけ。
それほどの甘いキス。
淡い薄紅色の唇はそのまま俺のにぴったりと重なってくる。
息がそのまま吸い込まれ、また吸い込む。
そんな口づけ。
ねっとりとした唾液を飲み干し、また飲み干される。
吐息だけが漏れ合う。
それさえも逃がしたくないような濃厚なもの。
舌が狂おしいほどにもとめあい、吸い合い、絡み合っていく。
ザラザラとした舌が口の粘膜をこすり、快感を引き出していく。
  心地よい。
  気持ちいい。
  痺れていく。
  こんなにも。
  とろけていく。
琥珀さんの味、匂いが強くなっていく。
こんなにしていれば薄まっていいはずなのにどんどん濃くなる。
口の中は琥珀さんでいっぱいになる。
舌同士の先端をつつきあい、からめ、ひっぱる。
舌の裏までも舐め尽くされ、吸い出される。
口から唾液が漏れ、したたり、服を汚す。
何度も何度も滴りおち、それがもったいなくて啜り合う。
それを見て、よこしたと思うよりも、まずもったいないと思う俺はバカなのか。
舌を使って愛撫しているのか、されているのか――それさえもわからない。
時には唇を甘噛みし、ひっぱり、口蓋をなで回し――
――――そしてようやく離れる。
離れるときに、甘い吐息が唇を撫でていく。
酩酊感でいっぱいだった。
そんな痺れるような口づけ。

 琥珀さんも名残惜しそうに離れると、今度は座り込む。
そして脚を大きくひろげ、あそこを俺に見せつける。
くらくらとするような淫猥な匂い。
ぼおっとした俺はそのまま寝てしまいそうなほど、心地よい。
でも背中にあるどろどろとした焦燥感だけが、俺の手を休ませない。
俺は自分のを擦り上げる。
いつもならばもう達しているはずなのに、まだイかない。
興奮しすぎて、その感覚までもとけてしまっているようだった。
 そして彼女はあそこを見せつけると、今度は両手でいじり始める。
右手でなで回し、左手でクリトリスをなで上げる。
右手は大きく動かし、そのままお尻の方までなで上げる。
左手はせわしく動き、その動きに合わせて甘い啼き声があがる。
甘く爛れた熟れきった果実のよう。
腐る一歩手前のたまらなく爛れた匂い。
こんなにもいやらしい匂いが、俺の鼻孔をくすぐる。
牡丹の花が汗でじっとりと濡れて、まるでそこもオンナになったかのようで。
まるで琥珀さんの下半身すべてがどろどろの粘膜になったかのようで。
食い入るように見ていた。
着乱れて、襦袢も崩れ、琥珀さんの乳房が見える。
その先端までは見えないが、逆にその様子に興奮していた。
そしてゆっくりと花を開き、見せつける。

「見てますか……志貴さん……」

鼻にかかった声で甘く囁く。
胡乱なまま頷く。

「ほら……わたしのここ……」

そういって淫らにテラテラしているそこを広げ見せる。
見せつける。
淫猥な蜜がしたたり落ちる。
花のよう。
真っ赤な牡丹が咲き乱れる。
百花繚乱。
甘ったるいぐずくずと腐った熟れきった匂い。
指を動かすたびに、
体をよじるたびに、
脚を動かすたびに、
そこに咲き乱れた牡丹はよじれ、うごめき、すすり啼き、匂い立つ。
いざなわれているよう。
俺はアソコを擦り上げる。
早く出したくて、狂いそうだ。
早く楽になりたいというのに。
そこだけを見つめてしまう。
片手では足りずに、俺も両手でいじる。
右手で握り擦り上げ、左手の指で亀頭を撫でる。
鈴口をえぐるようにこする。
たまらない。

「……ほら……こんなに……」

琥珀さんは何度も指をいれ、掻き乱して、蜜を溢れさせている。
 ぐちゅぐちゅと淫水の音が響く。
どろどろになっていて、そこにこれを入れたくてたまらない。
でも、今は見ているだけ。
見ているだけでこんなにも興奮してしまう。
小さな疼きが何度も何度もはしって、体が震えている。
琥珀さんのいつもの表情。
あの甘えたような、淫らな貌。
目を細め、ただ自分の中に悦楽に浸るような、そんな顔。

「……駄目……駄目……」

琥珀さんは嫌がる。
何が駄目なのかわからない。
でもその言葉の響きで俺の分身はビクンとなる。
高まっているのがわかる。
そしてそれよりも高まっていくのがわかる。
切なそうな情欲の喘ぎが、俺の本能を刺激する。

そしてちらりとこちらを見る。
視線が絡み合う。とたん、琥珀さんの体が一瞬固まり、そしてビクンとする。
感じている。
見られているということに、琥珀さんは感じていた。
そして俺も感じている。琥珀さんに見せているということに。
もっとも隠しておくべきところを互いに見せ合うことで、こんなにも高まっていた。
高まりすぎて、息するのもつらい。
でも辛さがたまらない。
狂おしいほどの衝動が脳髄をかき乱す。
もっと強い刺激を求めて、擦り、いじる。
蕩けるような快感が背筋をざわざわと這い上がってくる。
息ができない。
でもたまらない。
そして琥珀さんの口からもれる声。
抑えきれないオンナの悦びの声。
そして淫水の音。
体を丸め、まるであそこを覆い隠すかのように丸まる。
何かを耐えているような、こらえているような仕草。
その足袋をはいた脚が震え、全身は上気し、とても綺麗だ。
まるで体の中の淫火が燃えさかっているようで。
それが肌から透けて見えているようで
その淫乱な火は俺の中の火もかき立てて。
熱くなっていく。
腰の所がむず痒く、何かがたぎっていて、それに背を押されて、たまらない。

「見てください、志貴さん!」

琥珀さんは叫ぶ。飢えたオンナの淫らな声で。

「見て! 見て! 見て!」

琥珀さんの体が突然のけぞり、弓なりにしなる。

とた俺も達する。腰を少し浮かす。浮かしてしまう。
弓なりになった淫らなオンナへと放出する。
熱い迸りが吐き出させる。
どろりとした青臭い牡の精が飛び散り、
琥珀さんの白い足袋を、
湿った白い肌を、
そして淫らな咲き誇る牡丹を汚す。
出していても、手は止まらない。
そのまま擦り上げる。
どんどん出てくる。
黄色みかかった白い粘液が飛び散っていく。
そこから俺の魂までもが出ていきそうなぐらい。
とろけていく快感。
淫らな悦楽。

部屋には淫らな牝と牡の性臭、汗、そして爛れた淫靡な匂いが充満していた。

出し切った余韻をしばし楽しむ。
肩で荒く息をつく。
ぜーぜーと自分の息が耳障りなほど。
でもそれだけ感じてしまったと言うことで。

琥珀さんも余韻の火照りで肌を赤く染めて、胡乱で淫らな笑みさえ浮かべている。
その顔に、その貌にドキリとする。
縮こまるはずの俺の分身はぴくりと反応する。

現金なものだ、と思いながらもそのまま琥珀さんに近づく。
胡乱な焦点の合っていない瞳のまま、こちらに微笑みかけてくる。
そして口づけ。その可憐な唇にとても軽く。
そして舌を這わせる。
とたん躰がビクンとする。
感じているのか、喘ぎがもれる。
そのまま首筋を舐める。

「……イヤ……イヤです……」

琥珀さんはイヤイヤしながらも、手をまわしてきて、ぎゅっと抱きしめてくる。
達したためか、それとも恥ずかしいためだかわからないが、めじりは赤く、汗
でしっとりとして、色っぽい。

「……どこがイヤなの」

自分でもイジワルだな、と思うけど、こちらの方がソソる。
いつもの琥珀さんに導かれるのではなく、俺が主導権を握る。
琥珀さんに甘えてもらう。
主導権を握った時の琥珀さんと握られたときの琥珀さんはまったくの別人で。
握った淫らなオンナをさらけ出す琥珀さんと、握られた初々しいオンナをさら
け出す琥珀さん。
まるで二人の女性と愛し合っているようで。
それがとてもソソる。

琥珀さんは両手を頬にあてて、いやいやする。まるで童女のよう。
今さっきまでの淫らな雰囲気を漂わせた童女。
その雰囲気に酔っていく。

「ん!」

耳を甘噛みする。
そして湿った舌でなぞる。
琥珀さんが甘く啼くのが嬉しくて。
甘えてくれるのか嬉しくて。
ついつい頑張ってしまう。
そして舌をはわせて、そのまま下へ。
喉元をくすぐり、鎖骨をなめ。
崩れた襟元から除く白い乳房に這わせる。
汗でちょっぴりしょっぱく、それがいい。
琥珀さんの味。
どこを舐めても違う、琥珀さんのオンナの味と臭い。
そしてこんなに感じている琥珀さんが可愛くて、愛おしくて。
琥珀さんの嫌がる声に導かれて、何度もなめ回す。
着物を強引に脱がし――皺になってしまうかな?、なんて思いながら、その乳
房をさらけ出す。
そしてさらけ出した乳首のまわりをなで回す。
ぷっくりしていて赤くしこっている。
そのまわりを撫でる。
はっているのがわかる。
興奮しているのか、躰がわななく。
そしてとがったそれにふれる。
指の平でそっと撫でるだけ。
それだけなのに、琥珀さんは感じて躰をよじっている。

「駄目……です……」

目は潤んでいた。涙となってまなじりからぽろりとこぼれる。
その涙さえも舌で拭う。
しょっぱいような妙な味。
でもそのキラキラと光る跡をたどって、頬を舐めあげていく。

「い……いや……」

よじるけど、逃がさない。
舐め終わると次はもう一方をふたたび舐める。
舐めながら舌をつよく押すと、鼻にかかった声を漏らす。
そして一瞬見つめあった後に、その胸に顔をうずめる。
その白い乳房は俺の頬にぴたりと吸い付いてくる。
しっとりとして、暖かく、まるで母親のよう。
でも、そんな肌に舌を這わせる。
指でそっと尖った先を抓む。
その胸に何度も吸い付き、赤く跡を残す。

「……駄目です……秋葉様に……見られたら……」

息も絶え絶えに抗議するけど、そんなの気にしない。
何度もその赤い跡をつける。
そして先を口に含む。
その固くしこったそれを唇で挟むと、舌で嬲る。
残った方も手でかるくつまみ、一緒にいじる。
甘噛みし、吸い上げる。
さらにぷっくらと尖るそれを今度は歯を当てる。
とたん、俺にも強い刺激が走る。
彼女はさらけ出したままの男根を、擦り上げていた。
白い粘液が少しのこったそれを、そのほっそりとした指がしごくたてる。
裏をなで、そのつるっとした表面の亀頭をなで上げ、淫らに導いていく。
疼きが股間から発生する。
むず痒さがそのまま広がっていく。
 それに耐えるように、乳首を吸い、弄ぶ。
そして陰茎を握られると、突然強くしごかれる。
残った白い牡の精がボタボタと落ちる。
それでも構わずしごき立てられ、痒さが痺れに、痺れは快感に変わっていく。
根本から先までその柔らかく暖かい手のひらでしごかれて、大きくビクンとしなる。
構わず、乳首に歯を立てて、軽く噛む。

琥珀さんから短い悲鳴。
興奮しきったかすんだ声。

そして噛んだ跡を舌でゆっくりとくすぐる。そして吸う。
すでに肌の味がしなくなるぐらい、嬲る。

琥珀さんは残った左手で俺の胸を撫でる。
みみず腫れのひきつった痕を、ふれるかふれないか程度に撫でて、乳首をぐり
ぐりと揉む。
ふと、気づいて、そのとおり 舌で揉む。
すると、指はそっと動いて今度は乳首の回りをさわさわとなで上げる。
それに従って舌と指でさわさわと撫でる。

琥珀さんは息を殺して耐えながらも、自分の感じているところを教えてくれる。
だからそのとおりなぞる。
押し殺した声ではなく、わななくオンナの声が聞きたくて、夢中で責めた。

息の間隔が短くなっていくのがわかる。
俺のをぎゅっと握り、急き立てるかのように擦り上げる。
その強い刺激に腰が痺れていく。ついそれに合わせて腰を動かしてしまう。
貪るように、互いの躰を責めていく。
そのしっとりした柔肌を、
尖った乳首を、
細い鎖骨を、
乱れた着物の影を、
淫らに責め立てていく。
そのまま一緒にどろどろな淫らな水になりたくて。
とろけたくて。
互いの躰を貪欲に貪っていく。

 そしてようやく乳房から離れると、花に近づく。
むわっとむせかえるような臭い。
今さっきまで嗅いでいた臭いを何十倍にもしたかのような、いやらしい臭い。
そこには牡丹の花が咲き乱れ、狂おしいほど。
まるで花束をかかえたかのような、息が詰まるほどの臭い。
そして汗ばんでしっとりとした白い肌の上に咲き乱れる深紅の花は、オンナを
象徴していて。
その薄いかげりの向こうにはひっそりと甘い蜜を湛えた女芯があった。
まわりの大輪の花の隠れてひっそりと咲くコハクという花。
でもそれは濡れて息づいていた。
襞はわななき、濡れぼそっていた。
琥珀さんは涙を流しイヤといっているが、躰は求めてわなないていた。
そしてそっと触れる。
暖かい、というより熱い。
どろどろに煮詰めた蜜の中に指を入れたよう。
襞が絡まり、きゅっきゅっと締め付けてくる。
そのまま飲み込まれそうなほど。
二度三度大きく抜き差しする。
中までしっとりしていて、熱く、くずくずで。
抜こうとすると絡んで離さない。
指がそのまま粘膜にとけていくような感じ。
それに反応して陰茎がビクとする。
それを引き抜くと、蜜がいっしょにこぼれて、滴る。
とろりとこぼれ、さらに臭いが強烈になる。
くらくらするほど。
花蜜を味わうために舌を伸ばす。
まずは入れ墨の牡丹を丹念に丹念に舐める。
甘く噛み、吸い、そして舐める。
ぷにぷにとしているくせに張りのある太股の上で咲く牡丹をくすぐると、琥珀
さんは太股を擦り上げるかのようにして俺をその脚に挟みこむ。
園むっちりとした感触を楽しみながら、牡丹を弄ぶ。
そして今度は下腹部に咲いている牡丹。
玉のような汗がまるで露のよう。
ちろちろと茂みからゆっくりと舐め上げ、腹筋の弾力を楽しむ。
へそのまわりをなめ、そして牡丹の花弁をそっと爪先でなで上げると、躰をよ
じらせてしまう。
短くつまった呼吸音だけが聞こえてくる。
喘ぎさえない。
でもまだ華芯にはふれない。いじらない。
俺の分身はびくんびくんとこれ以上ないほどふくらみ滾っていたけど、その声
を殺した喘ぎがはっきりと俺の耳に聞こえるまでやめる気はなかった。
 そして太股と下腹部に咲き誇る牡丹を責め立てる。
その中央に咲く、真っ赤な淫猥な花はひくつき、蜜をこぼしていた。
陰核はぷっくりとふくれあがり、自ら女陰は淫らにさそっていたが、そのこと
を彼女の言葉で聞きたかった。
そして次は菊座と女の間、蟻の門渡りに口づけする。
とたん、脚が引きつる。
そしてその箇所を舌でぐりぐりと押す。吸いつく。
オンナ以外をすべて味わうごとく、舐め尽くし、蹂躙する。

「志貴……さん……」

か細い声。
見てみると、物欲しそうに潤んで、とろんとした目でこちらを見つめている。
貌には惚けたオンナの貌で。
でも達したくても達せられない飢えたもので。
ゾクゾクとするほど色っぽい。
鼻にかかってかすれた、俺にしか聞くことのない甘えた声で、

「お願い……です……志貴……様、……は、早く……早く……」

そのか細く震えた声に脳髄は麻痺しそうになる。
すぐさま、挿れたくなる。
でも、俺は貌を見据えたまま、門渡りを軽くゆるるかに刺激し続ける。
躰は少し痙攣していて、見ていて辛そうなほど。
すると琥珀さんは貌を背けて、呟くように言った。

「……お願い……です…………お情けを……」

その百戦錬磨の琥珀さんとは思えない仕草に興奮し、すぐにオンナを刺激する。
なめ回す。
今までのとは比べものにならないほど、濃厚な味。濃厚な臭い。
琥珀さんのもの。
琥珀さんそのもの。
だから、口の回りがべちゃべちゃになるのも構わずなめ回す。
狂ったかのように味わい、蹂躙する。
襞の一つ一つを丁寧に、こすり、刺激する。

声を殺していた琥珀さんは甘くわななき、声を上げる。
感極まったオンナの声。
それに導かれて、俺は肉棒を琥珀さんにあてる。
先に感じるぐにゃりとしてあつくととろとろの感触に躰が震えてしまう。
そしてゆっくりと埋没させていく。
ゆっくりと琥珀さんのオンナに押し入っていく。
押し入られた琥珀さんの口から、吐息のようにも聞こえる細い悲鳴。
卑猥な水音が響き、ポタポタと愛液が滴り落ちる。
そしてみっちりと俺のが入りきると、琥珀さんの躰がぶるんと震える。
カンきわまったようないやらしいオンナの臭い。
オンナがオトコをくわえ込み、離さない。
そのままいくらでも中に入っていきそうなほど。
この腰が、体が邪魔で、なければそのままいくらでも入れるのに。
そしてゆっくりと引き抜く。
とろとろのところが、熱く締め上げてくる。
カリ首が、亀頭が、陰茎が、じんわりとしてくる。
その淫猥さが、
琥珀さんの甘いわななき声が、
絡めてくる太股が、
淫らな咲く大輪の牡丹の花が、
漂う爛れた臭いが、
しっとりとした柔肌が、
牡の本能が、
ひくつきからみつく、いやらしいオンナが、
じわりじわりと効く毒のように、俺の神経は快楽に爛れ、犯されていく。
ぐずくずに溶けていきそうでなほど熱い。
脳髄はその熱さに爛れながら溶けていく。とろけていく。
俺の自制心も、感情も、理性も、何もかも熱に犯されていく。
腰からむずむずとした性悦がはいずり回る。
とめられない。
びっしょりと汗でしめった肌を抱きしめながら、琥珀さんに臭いに溺れていく。
その甘酸っぱいような臭いを鼻孔いっぱいに吸い込んで、彼女を貫き続ける。

「ダメ、ダメ、ダメ……志貴さん……ダメ」

目の前のわななく女はいやいやしながらも、俺を締め付けて離さない。
その淫猥さが俺を締め付ける。追い詰める。逃がさない。

「……そ、そんなに激しくされたら……おかし……く……なっちゃ……います……」

紅潮させ、快感に涙さえも浮かべながら、告白する。
オンナの告白。どろりとねっとりとした――なにか。
いっしょにとろけているはずの俺の男根にはたえず甘い電流が流れていて痺れ
させていく。
ぎゅっと抱きしめられる。
上半身はその火照った乳房に押しつけられる。
そのつぶれるような感触。張りがあって、でも柔らかくて、鼓動が感じられて。
耳元には荒い息。俺のもかそれとも彼女のか――。
上半身が押さえつけられていて動きづらいが、腰はどうしてもとまらない。
いや、
その胸の感触が、
乱れた吐息が、
喘ぎが、
締め付ける手の柔らかさが、
むずむずする神経が、
俺を苛む。
彼女はさらにぎゅっと抱きしめる。
優しい力なのに、俺はつぶされそうなほど。
腰奥の熱い迸りが、駆け上ってくる。

「今日は……大丈夫ですよ……」

耳をかじられ、嬲られながら、囁かれる。

「……いっぱい……だして……ください……」

その言葉が本当かどうかわからない。
でもそのオトコをくすぐる甘い囁きは、最後の引き金をひこうとする。
そしてぎゅっとさらに締め上げてくる。
あんなにとろとろで熟していて柔らかいはずなのに。
なぜがそれは熱く締め上げてくる。
そして奥に当たるものを感じる。
それに当たるたびに彼女はこらえきれない牝の愉悦を漏らし、
それが俺の牡を駆り立てる。
擦り上げるたびにぴりぴりと電撃が走る。
悦楽に犯された俺の神経は、俺の心臓を締め付ける。
真っ白になっていく。
頭の中がそれだけになっていく。
真っ白な快感に溺れていく。
そしてひとつになりたいと思う。
男して、牡として、雄として、
今目の前に組み敷き、嬌声をあげ身悶えている、
女に、牝に、雌に、
ひとつになりたいと。
体も心も魂もなにもかもが悦楽の粘液の中で解け合って、生まれる以前の熱い
迸りにになりたいと思う。
そこにあるのはただの愉悦。天国。楽園。生命が生まれる以前。
その焦燥感と征服感と被虐心と加虐心と――そして性悦だけが入り交じった、
どろどろな何か。
狂おしいほどのソレ。
息苦しいほどのソレ。
堪えきれないほどのソレ。
そして、とうとう我慢できなくなり、俺はもっとも奥へ突き入れる。
奥に当たる。亀頭がわななく。飲み込まれていくよう。
とたん、放ってしまう。
今まで我慢してきたソレが躰の奥底から一気に駆け上り、吐き出されていく。
美しい朱色の美肉の中に、あの黄色かがった白くねっとりとした粘液を吐き出
している。
どくり、どくりと。
そのたびに躰に痙攣が走る。
熱い迸りを受けて、あそこはぎゅっとと絞り出すように、ひとつになろうと締
め上げてくる。
彼女は涙をながしながら、かすれた細く長い悲鳴にも似た声を上げる。
躰は何度もヒクつく。



しばらく余韻を楽しんだ後、躰を引き離す。
ほんの一瞬だけども、重なり溶け合って一緒になったのはずなのに、もう別々の体。
でも余韻は淫らに心地よく、何も考えられなかった。
ごろりと横になって仰向けにベットに転がり、深く息をする。
横ではまだ体がヒクつき、とろけたような表情を浮かべた琥珀さんがいた。
その表情にとても満足する。
いつものとは違う女の充実した笑みを浮かべて、そっと胸に頭を乗せてくる。
充実した深い満足感。
柔らかな一時。
代え難い幸福。
すると、彼女はぶるんと震える。
みるとそこには惚けたような、幸せそうな、それでいていやらしい貌があった。

「……志貴さん……」

そういうと、琥珀さんは体を起こして、下半身の咲き乱れ、しっとりと濡れた牡
丹の花の中の女陰を指で開く。
充血して深紅に染まった柔肉。
てららてして、ぬるぬるしている。
そして爛れたような性臭。
頭をくらくらさせる。
――――そして、
指の間から白いのが、とろり、とこぼれていく。
酷くソソる光景。
あの淫肉の割れ目から、俺のがゆっくりとゆっくりとこぼれていく。
また、琥珀さんの体がぶるんと震える。
と、そこから、ごぼり、と泡立ちながら俺のがこぼれてしたたり落ちる。
男と女の臭いが鼻の奥でツンとする。
赤い淫肉から流れ、その赤い牡丹の入れ墨を汚しながら、内股を伝わって落ちていく。
とても淫猥で。
出したばかりのはずなのに、俺のはビクンとする。
現金だな、と思いながらも、じわじわとムズ痒いような、痛いような、痺れの
ような、あの感じが俺の息子に集まってくる。

「……ほら……志貴さん……こんなにいっぱい……」

指でそれをすくう。
そのほそい指が白く汚れる。
ネバついたそれを顔の前にもってくると、ためらいもなく口に入れる。
しゃぶり、愛おしそうに、おいしそうに舐める。

「……志貴さん……」

そこにいるのは淫婦。
男の狂わせる笑みをうかべて、淫らに囁く。

「……今度はわたしの番、ですよ」

その囁きにからみつかれ、動けなくなる。
溺れていく。溺れてしまう。
彼女は俺の上にまたがる。
腰のくびれからその乳房へと続くラインはとてもなやましげで、蠱惑的で。
そして見上げる乳房は圧倒的で、思わず息をのむ。
快感が走る。
彼女の小さく柔らかい手は白濁した液にまみれ汚れた男根を握りしめていた。
数度大きくこする。
残っていた粘液が漏れ、あふれてくる。
ぬちゃぬちゃと濡れた音が響き、男の臭いが漂う。
その綺麗な指が、柔らかな白いてのひらが、どろどろに汚れていく。
見ているだけでも、どんどん固くそそり立っていくというのに、その柔らかい
刺激はオトコを苛む。
俺の腰に女の蜜と俺の液がポタポタと落ちてくる。
オンナとオトコの性臭が混じり合って、酷く心を急き立てる。
そして腰をおろしてくる。
ゆっくりと、ゆっくりと、ゆっくりと。
つい生唾を飲み込んでしまう。
触れるとその熱さに痺れてしまう。
ぬちゃり、と――粘膜どうしが触れ合う淫らな音。
亀頭からうずきが走る。
そしてその入っていく感触に痺れていく。
その甘い痛みのような痒みのような痺れに、思わず腰をつき動かしたくなる。
淫唇をかきわけ入っていくこのいやらしい感触はたまらず、背筋に甘い電撃が
幾度も疾り、脳髄までもが熱くいやらしいとろみにぐずくずにとけていく。
粘膜がぴったりと隙間なく張り付き、暖かい。
今さっき出した俺のがまだ入っているためか、いやにぬるぬるとして、痺れさ
せる。俺のを刺激する。
そしてみっちりと入りきると、琥珀さんは魂さえも出してしまうような熱くねっ
とりとした息を、体を震わせながら吐いた。
 そしてこちらを見て、嗤う。
その嗤う貌に、ゾクゾクする。産毛一本一本がそそり立つ。
そして今度はゆっくりと引き抜く。
絡みつきぴったりと張り付いた粘膜は、俺のをまるでなめ回しているよう。
飲み込まれているのか、吐き出されているのかそれさえもわからなくなる。
彼女に翻弄される。
淫らなその腰使いに、ゆれる乳房に、甘く響く嬌声に、その強い性臭に。
彼女は腰を落としたまま、ぐりぐりと回す。
その陰茎の先にかかる圧力とねっとりとした感触に、思わずうめきを漏らしてしまう。
踊るかのように、大胆に腰を振るい、小刻みに震わせる。
そのたびにむせかえるような女の体臭が漂い、淫水がにちゃにちゃと音を立てる。
頭の中がパチパチとスパークする。
はじける。
じんじんとした熱いとろみが体の奥底からこんこんとわき上がってくる。
悦楽に溺れ、ただそれを貪る。ただそれに浸かりきる。
ゆっくりとゆっくりと高みに登っていく。
じりじりとした焦燥感が神経を灼く。
その切なさに急き立てられて、腰を突き上げてしまう。
とたんに強い快感に為すすべもなく蕩けてしまう。
彼女は左手で俺の陰嚢をやわやわと揉み始めていた。
その強い快感に、とろけていく。
やわわさと、そして弱く、強く、もみ上げる。
ときにはひっぱる。強すぎる刺激。
でもたまらない。気持ちよすぎてどうにかなってしまいそう。

「……駄目だよ、琥珀……さん……」

たまらず悲鳴を上げる。喘ぎも漏らして啼かされるのは、男の俺の方。
でも支配し弄ぶこの無慈悲な女王は、許しを乞う俺を苛む。
深く浅く腰を動かし、そして手で袋を揉まれ、その快感にどうにかなってしま
いそうだった。
ゆっくりとしたうねりがとたんに急ピッチへと代わり、そのリズムに翻弄される。
そして脚を広げされられる。
そうすると腰に力がはいらず、ただ彼女のなすがまま。
彼女の性妓に翻弄されるだけ。
そして玉をもんでいた手はそっと俺の尻まで下がってくる。
ゆっくりとさすりながら、下へと降りていく。
彼女は赤い舌でぺろりと唇を舐め、その琥珀色の瞳は期待で満ちていた。
そして指先は俺の菊座にふれると、そのまわりをゆっくりとゆっくりとなで上げる。
その背徳的な快感に、体をよじって逃げようとする。
見ると俺の腰の上で淫蕩に咲き誇る牡丹の花たち。
その白い肌は悦楽に灼かれ、赤く染まっていた。
なんていやらしい。
それがくねくねと動く。
燃えさかる炎の中で咲き誇る紅の牡丹。
その光景に目も心も奪われてしまう。
そして俺の中に指が入ってくる。
体がわななく。ついイヤイヤしてしまう。
態勢のためか、浅くしか入ってこない。
でもそれだけで充分。
肛門に挿しこまれた指は、出入りを繰り返し、指先を僅かに折り曲げて、刺激
を強くする。

「……ビクン……として……さらに大きく……なって……ますよ……」

そんな俺のを柔肉は包み、しごき、こすりあげ、しぼりとろうとしている。
上でうごめく琥珀さんから汗がきらきらと光って飛び散る。
ねっとりとしたものに鷲掴みにされ、だた悶えるばかり。

「くう……あ……うぅ……」

俺の口からもれるのは意味もなさない言葉ばかり。
感じきって、胡乱で、どろどろで、何も考えられない。
上から聞こえてくるのは淫らな女の声。

「……志貴……さん……どうですか……」

でもそれにさえ答えることはできない。
堪えるのに精一杯で、息も絶え絶えだった。
鼻にかかったかすれた息をあげながら、琥珀さんはなおも俺を責め立てる。
肉は擦り合わせられ、指がいじりまわし、俺は弄ばれる。
琥珀さんの貌はいつしか快楽に歪み、悩ましいほど。
口からももれる歓喜の声と荒々しい息が響き渡る。
ぬちゃぬちゃといやらしい音をたてて、牡丹の花が俺を飲み込んでいく。飲み
干されていく。
そして牡丹はいやらしく歪み、ひねり、咲き乱れ、悦びだけを引き出していく。
その赤い花が頭の中を埋め尽くす。
ただそれだけになる。
赤い花に飲み込まれて、食べられていく――――俺。

「ふふふ……」

そして淫蕩の愉悦のためか、笑う。
その笑みさえもが俺を弄ぶ。

ぐにっ。
指をねじって押しこまれた瞬間。
そこから淫らな電撃が全身を貫き。
こらえきれなかった。
身体の底から吹きあがる精液の上昇を感じ、ペニスの緊張を解放した。
俺は腰をつき上げ、放出する。

ドクっ

たっぷりとだす。
体の中に澱んでいた欲望すべてを吐き出す。
暑苦しく、息苦しいそれを、ありったけ琥珀さんにそそぐ。
自分の中にあるどろどろとしたものを思いっきり注ぎ込む快感に痺れる。
受け止める彼女も背中をのけ反らせて、細く長い嬌声をあげて、震えている。
あそこがぐいぐい締め付け、吐き出したそれを飲み干していく。
濁った汁で満たされ、一杯になっているそこにさらに注ぎ込む。
男だけが得られる愉悦。
俺だけの女という愉悦。
絶頂でもどかしく身悶えたまま、貫かれ、濃い俺の液を注ぎ続けられる。
切ない呻きが、途切れない。
そして琥珀さんの体はわなないたあと、一瞬だけこわばり、そして力が抜けてくにゃくにゃになって俺の胸へと倒れ込んできた。
 胡乱になった俺の目には乱れた牡丹の赤い花だけが写っていた…………。




 あの独特の疲労とまったりとした怠惰の中。
 頭の中は空っぽ。何も考えられない。
 ただ、この愛おしい琥珀さんだけがあった。

「……でも」

つい疑問に思って聞いてしまう。

「何ですか、志貴さん?」
「入れ墨って……」
「あぁ」

にっこりと笑う。満たされた女の貌。陰りなんていっさいみかけられない、すがすがしささえ感じてしまう笑み。

「これ、タトゥーシールですから」
「………………シール?」

自分で驚くぐらい変わった声を出してしまった。

「そうですよ」

あはーと笑う。

「2、3日すれば消えちゃいますよ」

そこでちらりと上目遣いで俺の方を見る。
目尻が余韻で赤く、少し潤んでいて、色っぽい。

「……わたしの勝ちですね」

ドキ

……あ〜あ、せっかく途中まで可愛らしい琥珀さんに甘えて貰っていたのに、最後の最後で逆転負け。っていうが凄すぎます。
 というか、察しが良すぎです、琥珀さん。
 エスパーですか?
 それとも割烹着の悪魔や女郎蜘蛛のあだ名は伊達でないということですか。
 しかし、このイタズラ好きな甘えたような顔と声で充分に満足してしまう。
 …………でも。
 でもいつか、きっと最初から最後まで、甘えてさせてやるゾ、と俺は心で固く誓うのであった。


To be Continued Last Episode:似違.