「っはぁ……。どう、だった、シエル」

 幾分ぎこちない喋り方。
 喉に絡んでいるのだろうかなと思う。

「良かったですよ」
「本当?」

 子供のような開けっぴろげな笑顔に、思わず力強く頷く。

「嘘をついても仕方ないでしょう。呑んでくれたのも嬉しかった……、気がし
ます。
 普段、遠野くんが嬉しがるのがわかりますね」

 わたしの言葉に真祖の姫君が喜色を浮かべ、照れてしまった。
 そして、アルクェイドは再び顔を近づけ、彼女の唾液と精液の跡が濃厚に残
っているペニスに舌を伸ばした。
 どろどろの淫液を、ためらう事無く舌で舐め取り始めた。
 軽く呻き声が洩れた。

「そんな事しなくても」
「え、だって、こうするって教えたのシエルでしょ?」

 でも嫌じゃないんですか、わたしの……。
 そう訊ねる声は何故か口からは出ず、わたしは黙ってアルクェイドの行為を
受け入れた。

 なんとも甘美な感触。
 その舌の感触もさる事ながら、この真祖の姫君が跪いてわたしの股間に顔を
埋めている様に興奮させられる。
 頬を汚すのも厭わず、根元までちろちろと舐め清めるアルクェイドの姿、そ
れは征服欲ではなくて、それよりもアルクェイドに対しての……。
 いや、そんな事は認めたくない。
 絶対に認めたくない。

 ふぅと小さく溜息を洩らして、わたしは表情を改めた。
 平然と。
 今の快美感の跡を消し去って。
 そして、アルクェイドに告げる。
 試験官の無表情さをもって。

「では、次に移りましょうか」
「次って?」
「おや、あなたは遠野くんに抱いて欲しいのではなかったのですか。
 おしゃぶりだけで満足と言うなら、これで終わりで良いですけど……」

 慌ててアルクェイドが首を横に振る。

「わたし、志貴に……、抱いて、欲し…い……」

 語尾が恥ずかしげにかすれている。
 頬に赤みが差し、僅かに上目遣いでわたしを見上げる。
 そんな顔を見ると、思わず頷いてしまいそうになり、あえて事務的に告げた。

「はいはい、では脱いでください」
「う、うん……」

 わたしの目の前でアルクェイドが一枚一枚着ているものを脱ぎ捨てていく。
 そして白い肌が隠すものもなく露わになった。

 本当に何度見ても、綺麗な体。
 溜息が洩れそうな、造形美。

 そして、いつもと違う感情、あるいは衝動が目覚める。
 わたしに常ならぬモノが生えている為の影響だろうか。
 明らかに、男としての欲望をアルクェイドに対して芽生えさせていた。

「シエル……」

 感じ取っただろうか、彼女も。
 さっき以上に、わたしの“男根”が奮い立っているのを。
 跳びつき押し倒しぞんぶんに味わいたいという欲求をあえて押し殺す。

 ゆっくりと仰向けに床に横になった。
 アルクェイドがわたしの顔と、反り返ったペニスを交互に眺めている。

「わたしは何もしませんから。
 前にあなたを揶揄したマグロでいますから、アルクェイド、あなたがわたし
を楽しませて下さい」
「わかったわ」

 うん、と頷くとアルクェイドはまるで戦いに赴くような表情を見せた。
 彼女にとっては、生半可な死闘なんかより緊張を誘うのだろう。

 アルクェイドの体がかぶさる。
 柔らかく滑らかな膨らみ。
 端麗な顔が近づく。
 戸惑う間もなく、唇を奪われた。
 そして舌が潜り込む。

 んん、ちゅぷ、ちぅぅ、……ぴちゃ、ちぃぅぅ、ちゅっ。

 水音が唇に弾け、とろりとした唾液がアルクェイドの舌に絡まりつつ、落ち
てくる。
 清浄な透明な分泌物ではない。
 唾液に白く濁った粘液の残滓が混ざっている。
 わたし自身がアルクェイドの口に放った精液の残滓。
 それはもちろん出所は遠野くんのものだけど、その味覚と嗅覚への刺激は、
僅かな拒否感を伴いつつも、強い興奮を誘った。

 ……ちゅぷっ。

 糸を引きながら、唇が離れた。

「ええと……」

 何か納得のいかない顔をしている。
 ?
 しかし前言通りに待ちの姿勢でいると、アルクェイドは動き始めた。
 濡れた唇が左の胸に近づく。
 ああ、胸の膨らみをどうしたものかと少し戸惑ったのか。
 そう思った時、胸に電気が走った。
 アルクェイドの舌が先端に触れ、そのまま唇が乳首を含んだ。
 軽く啄ばまれ、吸われる感触。

「ふ、ぅああ」

 吐息が洩れる。
 思いもかけなかった刺激だった。
 ちゅっ、ちゅっと断続的に強く吸われるのが、気持ちいい。
 何度かその愛撫を受けると、反応するのがわかった。

 色づいた乳輪ごと啄ばんでいた唇が離れる。
 すっかり硬く前につんと突き出た乳首の先の先だけを軽く噛む。
 そして、かわってアルクェイドの細い指が乳首の根元を摘んだ。
 さっきよりもずっと強い力で摘まれ、潰される。
 一方でちろちろと舌先が敏感な部分を探る。それも触れるか触れないかのも
どかしいほどの微弱さで。

 もともと遠野くんに対して想定された技巧であるからだろう。
 胸全体をは刺激してくれない。
 あくまで乳首とその周辺だけ。
 これが遠野くんだったら、ゆるゆると胸の柔らかさを楽しんで揉んだり、強
く絞るようにしながら、乳首も可愛がってくれる。
 だから、本当にピンポイントな攻めは新鮮だった。

 わたしが小さく喘ぐのを確認すると、アルクェイドは胸から離れ、キスしな
がら下へと進む。
 胸の谷間、お腹、脇腹、おへそ。
 ぬめぬめと舌が這い、唇が強く肌を吸う。
 そして、アルクェイドの胸。

 重ねた体が動く度に、アルクェイドの柔らかく大きな胸が、わたしの体に押
し付けられて潰れ、ずずずと引きずられる。
 そのなんとも甘美な感触。

 そして、その胸は今、太股あたりに触れている。
 反り返ったペニスにアルクェイドは直接は手を出さず、舌先だけを露を滲ま
せた鈴口に触れさせている。

 しばらくそのもどかしくも体を震わせる舌戯が続く。
 もっと強く、と声に出しそうになった頃合に、アルクェイドの手が幹に触れ
た。強く握ってと言葉にせず思うが、それは叶わない。
 指でつぅーっと根元に線を描き、そのまま下へと潜り込む。
 秘裂のぐっしょりと濡れた様に、ちょっと視線を向け、さらにその下へ。

 え、と疑問に思う間もなく、濡れたアルクェイドの指がわたしの肛門を突付
き、浅く抉った。

「なっッッ」

 体が跳ねる。
 構わずアルクェイドはちろちろと舌を震わせ、そして後ろの穴を弄っている。
 人差し指か中指が、第一関節くらいまで穴に潜り、残りの何本かの指が周辺
を探っている。広げられた穴の縁をなぞり、盛り上がった皺を擦る。

「アルクェイド、そんな処……」

 さすがに抵抗しようとするも、下半身は空いた手と上半身とでいつの間にか
押さえ込まれていた。
 アルクェイドは笑みを浮かべて、不浄の場所を楽しげに弄りまわし続けた。
 さらに指が潜る。
 少し硬い節になった辺りが調度穴に入るか入らないかの処に。
 指の先端は曲げられ、動いて内壁を柔らかく掻き毟っている。

 こんな、こんな事まで何処かで学習して来たなんて。
 くぅぅっ、ふわッッ……。
 気持ちいい、痺れる程、気持ち、い、い……。

「ん……、いいかな」

 ぐるりと指が弧を描いて抜け出た。
 じんわりと消えていく快感の名残。

 アルクェイドがもぞもぞと上半身を起こし、膝立ちになった。

 今の刺激で痛いほど反り返っているペニスを根元から起こす。
 
「入れるね、シエル」

 返事はせず、それを見つめた。
 アルクェイドも返事を待つ事無く、動いていた。

「ん、ぅんん……」

 声というよりも吐息。
 アルクェイドはわたしの体を跨ぐようにして、男のモノをその谷間に招き、
そして躊躇なく腰を落とし始めた。
 膨れ上がった先端がアルクェイドに触れる。
 絞られるような感触と共に、ずぽりとくびれまでがアルクェイドに呑み込ま
れる。

 ぬめるような温かさ。
 てらてらとしたわたしのペニスに触れる柔らかい肉の感触。
 摩擦からなる快美感。
 そして、ぎゅっと包み込むその膣の中の言葉にし尽くせない素晴らしさ。

「ごめんね、シエルの大きくて、少し怖くて……」

 アルクェイドの呟きも、意味ある言葉としてすぐには消化しえなかった。
 ああ、途中で止まっているんだとぼんやりとした頭で判断する。
 アルクェイドの体は中途半端な格好で、ふるふると震えていた。

 でも半分の挿入だけで、ただ入れているだけでこれならどうなるんだろう。
 アルクェイドの深奥まで全部入れられたら。
 そして抽送を始められたら。
 期待に、身震いする。

「んんっ、ふぁ……」

                                             〈続く〉