- 真・聖女陵辱 -

                                        来須拓斗


 教会とは、知っての通り「神に祈る場所」、つまり神を崇め、奉る場所である。
 無論それは人々の願いの象徴であり、穢れ無き場所でもある。
 その様はあたかも、透明な純水の様であった。

 だがそれはつまり、一度穢れてしまえば透明には戻らないということでもあり、


――一度穢れたモノは、元の存在には戻れない、というコト――


 主を失った聖堂。
 主を失ったサーヴァント。
 そして、その二つの主となった者が今、
 新しく主を迎えた聖堂の中で、
 新しく主を迎えたサーヴァントを眺めていた。


「――ふっ、ぅ―――ぁぅ………っ―――」


 その声は確かに少女のものであった。


「は、ぁ、あっ―――くっ、う……っ」


 その苦しげであり、しかし確かな艶を含んだ吐息。


「んっ―――! ぁ、はあ、あ、っ………!」


 この苦悶の声を聞く者が抱くのは保護欲なのか、それとも相反する嗜虐心か。
 新たなる主となった者―――キャスターは、その声を実に楽しそうに聞いて
いた。
 定期的に漏れる、囁くような雑音。
 苦しげに漏れる少女の声は、彼女にとって何よりの美酒であり、喜びであり、
そして――彼女の欲望を満たす、一つの要因でもあった。


「―――大したものね、セイバー。令呪の縛りを一晩中拒み続けるなんて」
 彼女は実に愉しそうに語りかける。


――令呪。
 それはサーヴァントに科された3つの絶対命令権。
 言霊として「隷従」の意味合いを含むそれは、普通のサーヴァントには逆ら
えるものではなかった。
 加えて視覚化されるほどの魔術による縛めが、セイバーの全身を苛んでいる。
 内からは令呪、外からは魔術。
 この二つの責め苦は、彼女にとって身体を傷つけられるよりも耐え難い物の
はずであった。
 実際、セイバーの理性はとうに溶かされている。


「っ―――あ、ああ、んっ………!」


 だがそれでも、最後に残った「誇り」――騎士として生まれ、騎士として死
んでいった彼女が持っていたもの――それが、彼女を保たせていた。
 令呪の縛めも、
 キャスターの魔術も、
 その根底だけは奪えない。

――だが故に、その責め苦は永遠に続く。


「あ、ぅ……っ、ぃや、ぁ―――っ…………!」


 必死に踏みとどまろうとする少女。
 それを蹂躙する令呪と魔術。
 相反するその二つのせめぎ合いによる過程を、キャスターは愉しげに眺めて
いた。

 またキャスターの趣向によって、セイバーの姿は大きく変わっていた。
 いつも無骨な鎧によって隠されていた、穢れを知らぬ身体。
 今その身は、清楚な純白のドレスによって着飾られていた。
 ――そう、穢れを知らない処女ならば。
 堕ちる時こそ、純白のドレスで飾るべきだというように。

「……ふふ、健気なこと。
 いくら貴女の意思が拒み続けても、サーヴァントとして作られたその身体は
別よ。
 肉体を構築する基本骨子、それに「隷従」の言霊である令呪が刻まれている
んですもの。
 令呪が少しずつ、侵食しているのが判るでしょう?貴方はあと一日も経たず
に私のモノになる。……どう?もう降参して素直になった方が楽じゃなくて?」


「っ――――く、んっ…………!」


 少女の、苦しげに抗う声。
 理性を溶かされたとはいえ、セイバーはキャスターに屈しなかった。
 キャスターの言う通り、肉体が令呪に支配される最後の時まで、この責め苦
に耐えるだろう。

「強情ね、セイバー。……ええ、けど許してあげる。
 私、貴女みたいな娘は好きよ。金の髪も小さな身体も、少年のような凛々し
さも可愛いわ。それに、裏切るくらいなら死を選ぶ一途さも愛らしい」

 そこで一旦言葉を止めた後、キャスターは実に愉しそうな顔を浮かべて、


「―――本当、踏み潰してあげたいくらい」


 憎しみと愉悦が混じった目で少女を見つめ、言った。

 キャスターがその気になれば、セイバーの陥落など一瞬だ。
 何故なら、セイバーは一つの令呪を抑えるだけで自由を奪われているのだか
ら。
 ならば、続けて二つ目の令呪で追い詰めれば結果は明白だ。
 このような責め苦を負わせるまでもなく、セイバーはキャスターの物になる
だろう。


「くっ……っ、は、ぁ――――!」


 だがそのような無粋な真似はしない。
 愛しい玩具だからこそ、調教には時間をかけるべきだ。
 キャスターにとって、セイバーは容姿も能力も一級品の『道具』である。
 他に類を見ない宝石ならば、丹念に愉しむのは当然だろう。

「……そう、令呪で身体を支配するなんて退屈ですもの。
 彼女には自分から私のサーヴァントになってもらいましょう。……ええ。身
体は壊さずに、心だけを壊してあげる」

 白いドレスに包まれた少女を、キャスターは艶めく視線で睨みつける。
 あの白い肢体を蹂躙し、ただ快楽だけを求める奴隷にする。
 それを思うと、聖杯の事さえ忘れそうになってしまう。

―――あの気高く美しい少女を、卑しい性奴にする。

 もちろんすぐに処女を奪う、などという無粋な真似はしない。
 せっかくの生娘なのだ。
 ならば一生生娘のまま、快楽に溺れる身体にしてやるべきだろう。

―――満たされることのない身体を抱えたまま、誰よりも貪欲に性にすがる少
女の姿。

 それを夢想して、口元を歪める。

「……そうね。何の抵抗も無いのもつまらないし。
まだ残っているつまらない『誇り』というものを、まずは粉々にしてあげなく
てわね」

 そして彼女は聖堂の入口のほうへと手を伸ばし、

「"******(閉鎖、遮断)"」

 神代の魔術を紡いだ。

「これで誰も此処には入ってくることはできない。……ふふ、あの坊やが向か
ってきているようだけれど。もう邪魔されることはないわね」

 あの少年の魔力は微量で、別に気に留めることでもない。
 だが、目の前を飛ぶ虫は鬱陶しいものである。
 それなら叩き潰せばいいのだが、そんな瑣末なことよりも今は少女を相手に
する事が何よりも重要なことであった。

「本当に、……本当に愉しみだわ……」

 キャスターはセイバーに近づきながら、ローブを脱いでいった。



 ローブを脱いだキャスターは、美しい娘であった。
 しなやかな身体と、決して小さくない胸や腰は形もよく、肌は透き通るかの
ようだ。
 ローブを纏わぬその身には、今は下着しかつけていない。
 その下着は、闇で染め抜いたかのような漆黒であった。
 更に、同じ色のガーターストッキングをつけている。

「調教の前に、まずは意識を覚醒させないと。
 令呪の縛りはどうしようもできないけれど、魔術行使を弱めてから意識間へ
の多少の介入をすれば、目を覚ますでしょう」

 そしてまた彼女の魔術行使――神代の言葉を呟く。
 すると彼女の身体にかかっていた重圧が少し緩まり、その後数回、背中が痙
攣した。
 今まで何も写していなかった彼女の瞳に、次第にだが光が戻り始める。


「……は、ぁ…ぅ……ん……。……こ…こ、は……?」


 まだ苦しげな吐息は変わらないものの、少女は確かに目を覚ました。
 だが、令呪の縛りは以前と変わらない。そのために、セイバーは常に気力を
保っていなければならなかった。
 虚ろな意識、虚ろな視界の中で、彼女はキャスターの姿を捉える。

「キャ、キャスター……! 貴女は……一体、なに、を」

 セイバーの意識が戻ったことと、そしてその目に未だ屈せまいとする光が宿
っていることに、キャスターは愉しげな微笑みを浮かべる。

「まだ屈する気は無いようね、セイバー。……ふふ、私、今までのようにじっ
と待つのにも飽きてしまって。だから少し、貴女が素直になるように協力して
あげようと思って」

 そういったキャスターの手には、いつの間にか真珠のアクセサリーがあった。
 真珠自体に、神代の文字と思わしきモノが彫り込んであるその真珠は、小さ
いもの、大きいものが多少の間隔を持って並んでいた。

「これは一種の魔力供給器で、普段は腕に巻きつけて使うのだけれど――場合
によっては、違う事にも使うことができる」

 次第にセイバーに近づいていくキャスター。
 その姿に一種の不安を感じたセイバーは、必死に身体の支配権を奪われまい
としながら、キャスターを見つめる。

「……ま、さか、それ、は…………」

 彼女が王族として暮らしていたその時代にも、それに類似した道具は存在し
た。
 だが、その道具とは。
 『特殊な性癖』を持つ者の補助道具として、使われるものではなかったか。

 自分の行動に対する不安を見抜いたキャスターの顔に、嗜虐的な笑みが広が
っていく。

「……察しがいいのね、セイバー。この魔具は元々、魔女の一人が愛用してい
たものらしいわ。―――処女の持つ無垢な魔力を吸い出す、という目的で、ね」

 人間はその姿を保つための力を持っている。
 それは人間が生まれ持ったときから抱えている力であり、一般人・魔術師と
もに変わりは無い。
 だから、魔力を用いて無理矢理に変質させようとする作業は非常に困難であ
り、高度な技術と膨大な魔力を必要とする。

 だが、人の身体には『魔力の影響を受け入れやすい箇所』が数点、存在する。
 それらは全て『体内の粘膜』の箇所であり――その中には当然、口内や膣内
が含まれる。
 しかし、処女という条件下では膣内という選択肢は除外しなければならない。
 ならば――。


「膣内が使えないのであれば、残る箇所は二つ。……この意味がわかるでしょ
う?」


 キャスターが何をしようとしているのか。
 それを理解したセイバーは、自由にならない身体を必死に動かそうとする。
 だが令呪によって責められ、その上魔術によって縛られているセイバーの身
体は、わずかに震えることしかできなかった。
 その間にセイバーのすぐ近くまで移動したキャスターは、明らかに欲情して
いる声でセイバーに告げた。


「さあ、始めましょうか、セイバー。……貴女の堕ちる瞬間、私に見せて頂戴」


 絶対に逃れられぬ、堕落への宣告を。




 キャスターの指が、露になっているセイバーの背中をなぞる。
 令呪によって縛られた身体は、少しの刺激すら増幅し、大きな波としてセイ
バーを蹂躙する。

「ふぅ………っ! ―――は、っ…………!」

 襲い掛かる波に懸命に耐え、声を押し殺すセイバー。
 その様子を愉しげに眺めつつ、キャスターは動きを緩めない。
 丁寧な仕草で、ゆっくりと背骨のラインを上から下へ、そして下から上へと
なぞる。
 そして、もう片方の手をセイバーの腹部へと移動させる。
 こちらの手も同じように腹部を滑らせ―――少しへこんでいる部分、つまり
へその辺りで動きを止めた。
 刺激が緩み、セイバーが溜めていた息を吐き出したその瞬間、


「――――――ひぅっ!?」


 キャスターは、その指をへその窪みへと突き入れていた。

「くぅっ―――ゃ、やめ、キャス、ター…………!」

 思わずセイバーの口から、静止の懇願が漏れる。
 だがその声をむしろあざ笑うかのように、キャスターの指はその穴を軽く往
復する。

「あっ―――う、っ、はっ、あ、ぁ…………っ!」

 内臓が圧迫される感覚と、肌への刺激によって声が漏れてしまう。
 そしてそのまま、キャスターはセイバーの耳へ囁いた。

「貴女の有する魔力への耐性、三ランクほど落ちているようね。
 つまり今なら、貴女の身体に多少だけど干渉を加えることが出来るわ。
 ……こんな風にね」

 背中とへそにある指が、魔力を帯び始める。
 そしてキャスターが言霊を紡いだ瞬間、


「なっ――――に、を、…………っ!」


 腹部の奥、つまり体内の腸に刺激が走る。
 いや、それはむしろ痛みに近いものであった。
 セイバーが押さえつけようと思っても、決して逆らえないその痛み。
 それに伴って、セイバーの肛門が自立的に収縮する。

「まずは不浄なものを全て出してしまわないと。折角の道具が汚れてしまうわ。
 ……ああ、ドレスも汚れてしまうわね。捲くってあげないと」

 背中を撫でていた右手で、スカートを腰まで捲り上げる。

―――セイバーは、下着を着けさせられていなかった。

 自然、セイバーの秘所が外気に晒される。
 そんな事にも気がつかない様子で、セイバーは必死にその痛みを鎮めようと
する。
 額には脂汗が浮かび、身体も汗にまみれて光っている。
 だが、キャスターの魔力によって活発化した腸のぜん動はとどまる事を知ら
ない。
 それでもなお、強靭な精神力で耐えようとする。

 しかしそれは、あまりにも小さな抵抗でしかなかった。

「本当に健気ね、セイバー。貴女が何処の英雄かは知らないけれど、貴女の英
雄たる本質は其処にあるのかもしれない。
 人は合理的な生き方を好むけれど、時にはそれを無視してしまうわ。良くも
悪くも。英雄とは、その『愚かな行為』を持って人々を救った者がなるモノな
のだから。
 ……だけどセイバー。英雄になったモノは、全て貴女のような者ばかりでは
ない。
 中には、健気で懸命な者を踏み潰すことを喜びとする者も存在するのよ……?」

 キャスターの手が、セイバーの蕾に伸びる。そして――


 一気に、刺し貫いた。


 そして、意識を身体が凌駕する瞬間。


「――――――っ!!、あっ、や、だめ、ぇ…………!」


 セイバーの堤防が、瓦解した。




 十秒ほど続いた排泄は、次第に弱くなっていきやがて終わった。
 残ったのは、汚れた床と放心状態のセイバー、そして恍惚とした表情のキャ
スターだけであった。

「………ふふ、ふふふふふ、あははははははは!
 愉しい、愉しいわセイバー!もっと私を愉しませて頂戴!」

 一旦セイバーから離れたキャスターは、空中に向かって手を向ける。

「"********(空間干渉、生成)"」

 そして言霊を紡いでいく。
 すると何も無かった空間に、どんどんと水が集まってくる。
 恐らく、空気中に存在する水分を集めているのだろう。
 それはみるみるうちに大きくなり、直径一メートルほどの水球となった。
 更に言霊を呟く。
 すると今度はその水球から触手のように水が伸び、そのまま少し開いている
セイバーの肛門へと入っていった。

「ひんっ――――!? つ、めたっ………ひっ!」

 そのショックで目が覚めたように、セイバーは声を上げる。
 水はどんどんと入っていき、数秒後に動きを止めた。
 そして、その動きが終わるのを待っていたように、セイバーの肛門が収縮す
る。

「ふふ、ちゃんと中まで洗浄しておかないといけないものね……!」

 そしてまた、キャスターの指が蕾を貫く。


「――――――――!」


 もう声すら出ない。
 酸素を求める魚のように、空中に向かって口をパクパクさせる。
 だがそれすらも愉しみの一つであるのか、キャスターは更に嗜虐的な笑みを
浮かべて指を前後させる。

「つぁっ―――! っは、は、あ、だ、だめ、ぇ…………!」

 先ほどの排出で敏感になっているのか。
 セイバーは背を弓なりにして反応する。
 その声はもはや懇願の響きを多く含んでいた。

 だが、その声はキャスターの嗜虐心を煽るだけであった。

「ふふ、可愛いわ、セイバー……!
 もう、めちゃくちゃになるまで、壊してあげたいくらい……!」

 キャスターも興奮してきたのか、もう片方の手を自分の秘所へと伸ばす。
 そして更に、差し込んでいる指の先端をくい、と曲げた。
 同時に指の先端から魔力を注入し、強制的に排出を起こさせる。


「はぁ――――――――っ!」


 セイバーが一際大きい声をあげた瞬間、二度目の排泄が始まった。



(To Be Continued....)