[an error occurred while processing this directive]



「つちふで」

 作:しにを





 閉じた部屋。
 窓を閉め、扉を閉ざし。
 ぬるまった空気が行き所無く淀む。

 僅かに部屋の端でかき乱されるだけ。
 時折、押し殺した声が洩れ、荒く息が吐かれるだけ。

 ベッドの上で志貴はだらしなく脚を伸ばしていた。
 背もベッドに倒れんばかりで、両の手を後ろに回して上半身を支えている。
 その腕が、脚が、時折震える。
 ぱたりとベッドに倒れ、沈みそうになる。

「気持ちいいよ、アキラちゃん」

 満足そうな声が洩れる。
 それを耳にして、晶は顔を上げた。

「本当ですか?」
「うん」

 晶の顔が喜色に満ちる。
 志貴はその顔を見つめ、そして視線を下げた。
 晶の体を、あるいは自らの股間を眺めるために。

 志貴の脚の間に、晶は身を置いていた。
 寝そべるような、うずくまるような格好。
 そして、志貴の方を見つめている今も、先程からの行為を続けていた。
 志貴のペニスを握った手はそのまま。
 上下に滑らせるその手の動きもそのまま。 
 晶は、志貴のペニスを両の手で愛撫し続けていた。

 志貴がじっと見つめているのに対し僅かに頬を染め、晶はまた視線を志貴の
モノへと移した。
 そして恥ずかしさを打ち消すように、また行為へと没頭する。

 晶の手によって生み出される直接的な刺激は、素晴らしかった。
 しかし、見下ろす志貴の目に映る光景は、それに負けず劣らずの快感と満足
感を志貴らもたらしていた。
 勃起して鬱血したようなグロテスクな姿となっている己のペニスを、白い小
さな手が包み、休む事無く動いている。
 年下の、同級生の女の子達と比べても幼く見えるであろう少女。
 妹の学校の後輩。
 その少女が、何も知らないようないたいけな少女が、男性器に熱心に奉仕し
ている。
 なんとも目を奪い、楽しませ、そして興奮を誘う淫らな眺めだった。

 ただ、機械的に手が太い幹を上下するだけではない。
 あと少しで痛みを感じるほどの強さでしっかりと握り、幹の皮ごとしごくよ
うに動かす。
 触れるか触れないかという柔らかさで、握るというより包むように手を当て
羽のようなくすぐったい刺激を根元から赤黒い亀頭まで何度も与える。
 両手で握ってぎこちなく動かす。
 右手と左手を交互に幹に走らせ、その微妙な違いを感じさせる。
 片手で幹を擦り上げ、もう一方の手でやわやわと袋を転がすように弄る。
 
 傍で見ていたら信じられないほど、手馴れた晶の動き。
 今も、志貴の亀頭の先から、こぽりとこぼれる腺液を、ためらう事無く指に
塗りたくり、粘っこい摩擦感を伴った刺激で、志貴の腰を引くつかせている。

「本当に、巧くなったね、アキラちゃん」

 しばらく晶の愛撫に身を委ねていた志貴だったが、また声を掛ける。
 両手をべたべたにしながらも志貴のペニスの筋を指先でなぞるのに夢中にな
っていた晶は、「おや?」という怪訝な顔で志貴を見た。

 今の言葉の響きに、先程までとは違うものを感じて。

「こんなに、短期間で巧くなるなんてね。
 この前と比べても、だいぶ違う気がする」
「志貴さん?」

 晶の戸惑う顔に構わず、志貴は続ける。

「もしかして、誰かとしてるの?
 俺だけじゃなくて、他の男とさ」
「そんな……」

 あまりに意外でそして酷く感じられる言葉に、晶は抗議に口を開きかけ、そ
して気づく。
 志貴の口元に浮かんだ笑い。
 それは、晶のよく知っている表情であって、この先の展開に不安と期待を抱
かせた。

「冗談だよ、晶ちゃんがそんな真似をする訳がない」

 言いながら志貴は身を起こし、晶に軽くキスした。
 優しく、甘い、軽いキス。
 だが、意地悪そうな目の色はまだ消えていない。

「そんな事出来る訳がないものね……」

 志貴の足が動く。

「こんなのが……」

 膝が曲げられ、つま先が晶と布団の間に潜る。

「ついているんじゃ、ね?」
「ひゃうッ」

 突然の刺激に晶は悲鳴じみた声を上げた。

「もう、こんなにしちゃって。
 俺のを弄ってて自分も感じちゃってたんだ、アキラちゃん?」

 足の指が無遠慮に、晶の体に触れる。

「見せて、アキラちゃん」

 晶は志貴の言葉に従った。
 志貴の刺激に身悶えしながら。
 うずくまった姿勢が、仰け反るような体勢に変わる。
 揃えていた膝が崩され、太股が開いた。

 志貴に弄られている下半身が露わになった。
 股間に生えた隆起。
 小さく細く、しかし間違いなく勃起してひくついている男の性器。

 P尾晶の股間には志貴と同じ男性器がついていた。

「俺としかこういう事をしていないのだとすると……、どうしてこんなにアキ
ラちゃんは巧くなったのかな?」
「……」
「ペニスの感じる処とか、ピンポイントで理解しててさ。
 力加減も絶妙」
「……」
「何で練習したんだろうね。ねえってば?」
「ひゃん、ダメ、志貴さん…んんんッ」

 器用に志貴の足の親指と人差し指が、晶のペニスのくびれを挟み、ぐりぐり
と左右に動かした。

「自分で、自分でしていました。あああッッ」
「ふうん?」
「あッ……」
「最初は泣きそうな顔で、こんなのが突然生えてきて、他の人にばれたら……
とか言っていたアキラちゃんが、同室に他の女の子がいるのに、こっそりとオ
ナニーして楽しむようになったんだ?」
「そんな、楽しむとか……」
「でも、興味本位で一回二回やっただけだとあんなに巧くならないよね?」
「だって」
「いやらしいなあ、アキラちゃんは。こんなに可愛い顔してエッチなんだね」
「……」
「え、何?」

 いやらしくないですと涙目になる事無く、晶は正面から志貴の顔を見ている。
 ぼそりと小さく口を動かすのに、志貴はちょっと戸惑う。
 訊き返す志貴に、晶はきっぱりと答えた。

「志貴さんです」
「……?」
「わたしをこんなにエッチにしたのは、志貴さんだと言ったんです」
「ええと、あの、アキラちゃん?」
「志貴さんが、わたしを慰めてくれて、そしてどうすれば気持ち良くなるか教
えてくれたんです。
 大きくなってむずむずした時に鎮める方法は、志貴さんに教わったんです。
 だから、わたしが部屋で志貴さんの事を想って一人でおちんちんを擦ってし
まうのは、全部志貴さんの責任です」

 ねちねちと苛めようかなと思っていたのだろう、予想に反しての晶の言葉に
圧倒されたような顔になる志貴。
 そして「責任」の一語が出た時、奇妙な、言った晶にも怪訝な顔をさせるよ
うな奇妙な表情を浮かべた。
 晶の顔が、不安を浮かべそうになるまで沈黙が続いた。

「そうだね、うん、そうだ。
 そんな反論が来るとは思わなかった」

 そう言った時の志貴は、普段の笑みを浮かべた志貴だった。

「そうだね、責任取らないと。
 じゃあ、とりあえずはお返しをしようかな。
 今度は俺がアキラちゃんに気持ち良くしてあげる番だね。
 おいで……」
「はい……」
 
 体の向きを変え、攻守が入れ替わった。

 僅かな時間で、ねっとりとした甘い空気が室内に満ちる。
 志貴が晶の奉仕を受けていたのとは、明らかに違う空気。
 
 晶の甘い息、上気した体からこぼれる汗の匂い、興奮した雌の匂い。

 晶は愉悦の表情と、苦痛に耐えるかの如き表情を交互に浮かべていた。
 同じ行為をされているのに。
 同じ刺激を受けているのに。
 まるで正反対な表情。

 ベッドの上、晶は、柔らかい布団の上に腰を下ろしていた。
 ほとんど全裸に近い姿。
 下着は取り外され、僅かにブラウスの袖が片手首に引っ掛かり、足に紺色の
ソックスが残っているだけ。
 見方によっては一糸纏わぬ姿よりも、淫猥なる姿。

 のけぞった時の白い喉から首の線も、ほっそりとした腕も剥き出し。
 未成熟ながらも柔らかく曲線を描く胸の膨らみ、その先の薄紅色をした蕾も
全て見て取れる。
 既に、色づき僅かに尖ってきている変化もまた、隠すことは出来ない状態。

 すべすべの肌の腹部、そしてその下。
 そこに、晶のものではない手が無遠慮に伸ばされていく。
 ほとんど生えているとは言えぬ薄い恥毛に触れ、さらにその下へと。

「志貴さん……」

 熱い息と共に、晶はその名を呼ぶ。
 志貴の手に早くも喘ぐように声が洩れる。
 晶の熱っぽい声に、志貴はさらに手の動きを強める。

「ああッ」

 果たして、晶は嫌々をするように首を振り、しかしまた喘いで声を洩らす。
 志貴はその姿に満足げに笑みを一瞬浮かべた。
 しかしそのまま走らずに、晶の様子に少しだけ手の動きを弱める。

 晶のペニスをぎゅっと握っていた手が緩み、上下への小刻みな動きもまた、
ゆるゆるとしたものに変わる。
 握ったままと言うより、表層の皮を時に擦るような動き。
 根元から、膨れた亀頭の先まで手が動く。
 にちゃりと糸を引くような先走りの汁が志貴の手に触れ、晶のペニスの幹に
塗り延ばされていく。

 強い締め付けとは違う弱い感触にもまた、晶は甘く悲鳴を上げる。
 決して止めようとはしないが、そのもどかしいほどの動きに敏感に反応する。

「どうかな、アキラちゃん?」

 握った手が、幹を滑る。
 人差し指だけが伸ばされ、亀頭の裏筋を軽く撫でまわす。

「気持ちいい、志貴さん、気持ちいいです」

 素直に答える晶。
 その短い言葉の中でも、志貴の指の強弱でぶれが起こる。

「自分でするのとどっちがいい?」
「志貴さんの方……」
「本当?」
「志貴さんに握られていると思うだけで、わたし、感じておかしくなりそう」

 熱っぽい顔で志貴の顔を見つめる晶。
 誘い込まれるように志貴は唇を奪った。
 喘ぎ声と熱い息を存分に吸い込む。

 動かす手を止め、志貴は先端の鈴口のみを指の先でくりくりと弄ってみた。
 絡ませた晶の舌が、びくびくと波打つ。

「そろそろ限界?」

 唇を離し、志貴は優しく問う。

「はい、おちんちんがびくびくして……。
 いつもなら、もう我慢でき無くて、白いのを……」
「今はどうして耐えられるの?」
「自分でする時は、最後を、射精を目指して手でするけど、志貴さんにはずっ
とこうしていて貰いたくて、終わっちゃうのがもったいなくて……」
「可愛い事言ってくれるなあ。
 いいよ、何度でもしてあげるから。
 我慢しないで、晶ちゃんがいちばん気持ち良くなる処を、俺に見せてよ」
「……はい」

 ちょっとだけ晶の体を引っ張り、志貴は向きを変えさせた。
 ベッドの外へと向いていた角度が、中へと修正される。
 そして準備良しと判断し、志貴は止めていた手を動かした。
 今しがたより強く握り、幹に沿っての上下運動を繰り返す。

「ああ、志貴さん」
「アキラちゃんがびくびく言ってるのがわかるよ」
「もう、もうダメ」
「イッていいよ、アキラちゃん」

 最後の数回を、尿道が圧迫されるほど強くしごく。
 しかし、細まった通り道を押し広げるような勢いで、晶の体内から迸りが外
めがけて走った。

 亀頭が膨らみ、鈴口が広がる瞬間を志貴は逃さず見届けた。
 晶の精液の放出。

 シーツに飛び散る白濁液。

 勢い良く飛散した後に、残滓がさらに放出される。
 射精の後もゆるゆると幹をさすっていた志貴の手が、跳ねこぼれた粘液に濡
れたが、志貴は気にせず晶の快感を引き伸ばす。

 まだ芯があるように屹立した晶のものから、志貴は晶の顔に視線を移した。
 瞼が僅かに落ちている。
 薄目を開けたような瞳。
 わずかに開いたままの口。
 頬は熱を帯びている。
 弛緩を感じさせる顔。
 しかしそれは、今しがたの快楽の極みの名残にうっとりとしているのだと見
る者に感じさせる、そんな淫靡さを濃厚に漂わせていた。
 
「志貴さん……」
「よかった?」
「はい……」

 溜息混じりの声。
 志貴の視線を認め、目を開いているが、それは潤んで夢見ているようだった。

「アキラちゃんがイクの見てたら、堪らなくなっちゃった」
「……?」

 志貴の言葉に、アキラは物憂げに視線を落とす。
 さっき自分の手が奉仕していた時以上に、高ぶりひくひくとしているような
志貴の逸物が目に映る。

「今度は俺を満足させて欲しいな、アキラちゃんをイカせたご褒美にさ」
「はい……、どうします?」
「口でも、さっきみたいな手でも。
 そうだ、アキラちゃんが決めてくれるかい?」

 期待するような志貴の目に、晶は頷いた。
 力がうまく入らない様子でのろのろと身を動かす。
 志貴に背を向けるようにして、自分がまき散らした精液の中で四つん這いに
なった。
 
 志貴の視線を感じつつ、晶は腰を高く上げ、同時に頭を下げた。
 志貴の前に、小さく丸みを帯びたお尻が突き出される形になる。
 秘裂は濡れて露を滲ませ、まだ硬いペニスがだらりと天地を逆さにしている。
 その淫猥さに志貴は唾を飲んだが、まだそれで終わりではなかった。

 晶の両の手が太股を遡って臀部に伸びる。
 両手を空けたために、上半身の支えは横を向いた顔と肩とに預けられていた。
 シーツにまだ染み込んでいない精液が晶の頬を濡らす。

 何をするのだろうと、ただ見つめる志貴の前で晶の両手が動いていた。
 手が己の丸い肉を這う。
 指が二つの半球で作られた谷間に潜る。
 そして、晶はよりお尻を突き出し、尻たぶを左右に大きく広げた。
 細い皺の寄った後ろの窄まりが周りの肉に引かれ開いた。
 少しくすんだ色の表皮の奥が覗く。

 知らず、志貴の目はそこに張り付く。
 身を乗り出して、息をするのも忘れたような表情。
 それを意識しているのかいないのか、晶の指がさらに動く。
 他の指で広げた状態を保ったまま、左右の中指を窄まりに伸ばした。
 ためらいなく、肛門に指をかけて、力を入れる。
 完全に穴が開き、その直腸内のてろりと光る粘膜までが、隠される事無く志
貴の目に晒された。

「ここに、志貴さんのを……、入れてください」

 期待に満ちた声。
 そしてその声に誘われるというより、操られるように志貴は膝立ちで近づい
ていった。
 異常なほど硬くなったペニスの先を、晶のそこにあてがい、そして――――







 そこ迄読んで顔を上げた。

「どうですか、月姫先輩?」

 今、この部屋にいるのは、部屋の主とあたしの二人だけ。
 で、部屋の主たるアキラは不安そうな顔でこちらを見ている。
 あたしの言葉を待っている。
 しかし、いきなりこんなの読まされても、すぐに言葉が出ない。

「男性向けの作品を依頼されたんですけど、わたし書いた事ないから、どうも
勝手がわからなくて……」

 あたしの無反応に慌てたように、アキラは弁解じみた声を洩らす。
 いや、言いたい事はあるんだが……。
 とりあえずあたしは口を開いた。

「いやまあ、それなりに良いないんじゃないか、よくはわからないけど。
 それより一つ教えてくれ。なんで、登場人物がアキラと遠野の兄貴なんだ?」

 他にも突っ込み処満載なんだが。
 男性向けで書いているのに、なんで女の子に男性器が生えていて、それを弄
っているシーンばかりなのだろうか、とか。……そういうのって今、流行り?
 おまけにその後は肛交なのは何故……、うう、肛交なんて言葉、普通の女の
子は一生涯使わないぞ……、とか。
 それにそもそもなんで未成年のアキラが、成年向けエロなど書かねばならな
いのだろうか、とか。
 でも一番の疑問はやはり、なんでよりによって自分を作中に、それも生えち
ゃっている姿で……、という事。
 よもやとちらりとアキラの股間に目を走らせる。

「え、あ、それは仮名なんです。
 書いてて恥かしいから、とりあえずあたしと志貴さんの名前を使って、後で
変えようと思っているんです。こっちの方が書いてて感情移入出来るし……」

 そういうものなのか?

「そうか。また生き別れの兄弟が知らずに惹かれあって……とかだと思ってい
たから、さすがに驚いたよ」
「まだまだ未熟なんでいろいろ書いてみようと思って、お誘い受けてチャレン
ジしてみたんです。
 これまでも月姫先輩にはわたしの書いたの読んで頂いていたので、恥かしい
けどお見せしようと思って……」
「そうだな、あたしだけでなくて他にもアキラが持ってくる本は好評だから。
 で、これさ、もしかして羽居にも見せたか?」
「え? はい。これが第二稿で、最初のはたまたま三澤先輩に会って取られち
ゃったというか、お渡ししたというか……」

 ――あ、アキラちゃん、それ新作? 見せて、見せてーー。

 そんな声が頭に浮かぶ。
 なるほど、それでか。
 それが何か、と言いたげな羽居に、あたしは背後に置いていた白い封筒を手
渡す。ここまで来た本来の目的。

「アキラに預かり物だ」
「わたしに?」
「ああ、字見てわかるだろうけど、遠野から」
「……遠野先輩?」
「おまえさんに招待状だってさ」
「……招待状?」
「明日、授業が終わったら一緒に帰ろうって……、中身読めよ」
「あ、すみません。でも、なんで……」

 あ、怯えている。
 まあ、わざわざ御大層な封書で招待状だものな、無理も無い。

「さっきも言ったけど、アキラの書いているものさ、ギャグ物もボーイズ
ラブもけっこう皆で楽しませて貰っているんだ。
 あまり外に出せないから、部屋の中でだけ回し読みしてさ」
「はあ」
「遠野もアキラには知らんぷりしてたみたいだけど、ちゃんと読んでいた。
 けっこう熱心にな。」
「えっ?」
「たまたま懐かしの部屋に来ていて、まだ本にもなっていない新作を見つけた
らしいんだ。で、当然手に取ってみるよな?」
「あの、それって……、まさか……」
「羽居が借りていったと聴いて納得したよ、うん。
 それなら、あたしも知らなかったのを遠野が読んでても不思議じゃないな。
 さてと、用も済んだし……、そういう事で失礼する。
 まだ読みかけだから、これ借りていくな。
 …………生きて戻れよ」

 固まったままのアキラを残して、あたしはさっさと部屋を出た。

 いや、怒ってなかったぞ、遠野は。
 むしろ、見たこと無い様な心からの笑みを浮かべていたよ。
 うん、あの顔は背筋が凍った気がした。
 怖かった。
 怖かったとも。
 こんなパシリじみた真似を喜んでやる程に。

 ……。
 本当に、無事生還しろよ。
 
 ええと……。
 南無阿弥陀仏。

  了







―――あとがき

 書くつもりは無かったのですが、何だか急に晶ちゃんに生やしたくなったの
で書きました(笑
 これで浅上の四人完全制覇(うわぁ
 もう、「かんのんさま」を見た後では何でも書けますね。
 何かいてもOKというか、うんうん生っちょろいお話だなと思えます。

 タイトルはちょっと思いつかなかったので、適当に。
 晶ちゃんのなら、こんな感じかなと思って。
 土筆。
 うわ、最低。

 お読みいただきありがとうございます。

   by しにを(2002/12/25)