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「がーでぃあん?」



 ≪ ガーディアン システム
   要は強力な守護霊を付け、その力でパワーアップを図るシステム。
   パラメータ、エクストラ攻撃、覚える魔術は各々の特性による。
   類例:ペルソナ
   三途の川までこないと付け変えできない、
   及び付ける霊が選択できない点でペルソナ システムより不便 ≫



「ちょっと異端な方法でやりますから、精神を強く持たないと乗っ取られます
が…」
「はあ…」

 実は良く分からない。
 餡婆さん何やら本を開いて、

「本来なら一般人がアレに打ち勝つにはマサカド公でも降ろしたい所ですが、
レベルもガーディアンポイントも足りませんし……なにより相性悪そうですし
ねえ…」

 一人ブツブツと呟いている。ぺらぺらとリストをめくって…

「…おお、あなた専用ガーディアンが有るじゃないですか!レベルもポイント
も手ごろだし、怨念と呪いの力は保障できます。三種の神器を持っていればア
レにだって勝てる…かもしれません」

 良く分からないのだが。
 ……なんかまた、猛烈に嫌な予感がしてきた。
 実はこの予感、百発百中である。

「あ、あの、私やっぱりやめ…」
「ふっふっふ、さあ行きますよー」

 キュピーンと餡婆さんの目が光った。
 ひぃっ、恐い!恐いよこの人!
 そして、予感で危機を避けられた例も無かったのである。
 ……だから百発百中。


『祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響き有り』


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ

 餡婆さんはブツブツと呟いているだけである。
 だが、その場の雰囲気は正にゴゴゴゴッと表現するに相応しかった。

「あわ、あわわっ」

 今度ばかりは無闇に逃げると川を渡ってしまう。
 とりあえず、川と逆の方向へと一目散に駆け出した。


『沙羅双樹の花の色 盛者必衰の理を表す…』


「何で耳元で聞こえるのぉぉっ!」

 走っても走っても耳元で平家物語がっ。
 恐い、恐すぎるようっ!

 走り続ける間にも刻々と話は進み…
 そして無常にも宣告は下された。





『滅びし平家の恨み、忘れた訳ではあるまいな?
 行け!そして頼朝、もとい秋葉を討て!』





 ズンと誰かが背中に圧し掛かる。
 …この人は…
 急速に薄れていく意識の中、思った。
 …確かに怨念の塊だけど!だけどぉ!
 ブラックアウトする視界の彼方で餡婆さんが手を振っていた。

「頑張ってくださいねー」
「…呪ってやるぅぅ…」





「………あっ」

『あっ』てなにー!?










「…ら、ねえ。四条さん、お願いだから目を開けてっ」

 何か、必死に呼びかける声が聞こえる。
 目を開けると、環が目の前にいた。

「気が付いたの!? …良かった。本当に死んだのかと思ったでしょうが」

 死んだ。
 そう、死んでいた。
 そう、そうだ。
 そうだった。
 がばっと起き上がって、高らかに叫ぶ。

「私は、否、拙者は死して地獄より甦ったぁぁぁっ」
「な、なに?」

「この『平 景清』甦りせば、必ずや秋葉の首討ち取ってくりょうぞぉ!」
「……どうしよう、打ち所が悪かったみたい……」

 見当はずれな感想は捨て置き、自らの手に握られた物を眺める。
 藁人形…ぬるい、ぬる過ぎる!
 このような物で呪詛が成立するかあっ!
 血が、贄が足りん!
 …ふむ…
 目の前の少女に目をやった。

「おい、娘!」
「へ?わたし?」
「拙者は遠野秋葉を捜している」

 環はヤレヤレと言いたげに肩をすくめた。

「知らないわ。それよりそのワラ人形捨てなさい」

 手に持った藁人形に目をやる。

「意味ないでしょ。ますます相手にされないわよ」
「確かに無意味だ。こんなモノは捨ててもいい」

 躊躇なく藁人形,金槌を投げ捨てる。

「その代わり…」
「その代わり?」

 いぶかしげに問い返す環。
 答えるそれがし。


「おまえだぁっ、おまえが欲しいぃぃぃっ!環ぃぃぃっ!」
「ええっ?そ、それってどういう…」


 レ、環は何を考えたのか頬を染めていたり。

「こういう意味だっ。とうっ!」
「あいたっ」

 ビシッと環の額にブツを貼り付けた。
 ブツ、つまり遠野秋葉の髪の毛。

「ふはははっ、これでおまえは秋葉の身代わりだ!」
「…身代わり?遠野さんの?」

 何やら表情が引き攣っている。
 だが、驚くのはまだ早い! 


「人形を使うなどまだぬるい!
貴様を依り代にして、更なる呪詛を行ってやるわぁっ!」
「あほかぁっ!寝言いうなっ、釘なんぞ打たれてたまるかっ!」


 靴が飛んでくるのを余裕で避ける。
 …釘?釘か!

「くっくっく。安心しろ、生きたまま釘をぶち込むような猟奇なマネはせんで
おいてやる。その代わり…」

 手を襦袢の両裾にかけ、そして、


「これが釘の『代わり』だぁぁぁぁっ!!」


 一気に全開。
 そして環の眼前に押し付けられた物。





 まごうことなき立派な、のさばるイチモツである。





「な、何よそれぇぇっ!」

 上がる悲鳴。
 しかしまだよ、まだまだまだぁっ!
 気合充填 百弐拾%!



「はあああああっ!」


「おうりゃああああっ!!」


「せいやあああああああああああっ!!!」



 気合を込めてイチモツをしごく。
 みるみる雄雄しくそそり立ち、天を突く肉塊。
 うむっ凛々しいぞっ、息子よっ!

「なに、なによソレ…」

 その雄雄しさに気圧されたか、驚愕の声にも力が無い環。
 そして誇らしく答えるそれがし。


「この拙者のたくましい肉槍でっ!否っ!三種の神器『草薙の剣』で貴様を刺
し貫いてくれるわあぁぁぁっ!!」
「ひ、ひぃぃぃぃぃっ!?」


 叫びつつ、腰を前後左右に8の字を描くが如くにグラインド、グラインド、
グラインドォッ!

「フオオオオオオオッ!」

 黒光りする巨大な魁偉を誇る『草薙の剣』が動きにつれてブンブンと風切り
音を発して威圧する。
 くっくっく、その恐怖の表情、腰がたぎるぜぇぇっ!

 藁人形に釘を打つが如くに繰り返し繰り返し『剣』を刺して、抜いて、刺し
て、抜いて、刺して、抜いて、刺して、抜いて、刺して、抜いて、刺して、抜
いて、刺して抜いて刺して抜いて刺して抜いて刺して抜いて刺して抜いて刺し
て抜いてぇぇっ…



「うおおおおおおっ、もう辛抱たまらああああんっ!!!」
「きゃあああああっ!?」


 ルパァァン ダァァァァイブッ!!











「そりゃそりゃそりゃそりゃそりゃそりゃそりゃそりゃ!」
「あうあうあうあう…」


「そいやああっ!!」
「……あぐぅ」


「ふぅ…………」
「……ううう…」


「……えーと……」
「ぐすっ…ふえええっ」


「…フッ、さすがは我が『草薙の剣』。恐るべき威力よ……」
「ううっ……ぐすっ」


「だがまだ!まだまだまだぁぁっ!!拙者の呪いは終わらねぇぇっ!!」
「い、いやあっ!………あ、あの、そこ、お尻…」


「くくく。よく言うだろうが…」
「な、なにを…」






























「『人を呪わば穴二つ』とぉぉぉぉっ!!」

「そんな用法あってたまるかぁぁぁっ!!」














「痛! イタタッ! 無理! 絶対無理だからぁーっ!!」






















 メリッ

「はぐぅっ!?」

「見ろ、げははははははははははははははっ!」





























「うむっ、第一の呪詛終了!」
「………………」

 尻を押さえて地面に突っ伏す環を他所にそれがしすっきりとさわやかな気分
で呟いた。
 それがし、本来さわやか系の好青年だぞ?…今は好怨霊か。

「……痔になったらどうする気よ…」
「んー?聞こえんなあ」

 さて、それがし呪うだけでなく遠野秋葉を討たねばならないのだが、どうし
て捜したものか。頼朝ならば鎌倉と相場は決まっておるのだが。
 とりあえず手持ちの品を確認する。
 釘、蝋燭、鉢巻…

「これは」

 手鏡を発見した。別のを捜すのが面倒だったので、コレを三種の神器の一つ
『ヤタの鏡』と命名しておこう。
 ……なんかの役に立つとは思えんが。

 「それにしても」

 突っ伏す環に視線を移す。そしてちょっと位置を変えてみる。

 「むう、これは…」

 その位置からはソコが良く見えた。
 わずかに開かれた足の間からつい先ほどまでは誰の侵入も許してはいなかっ
た秘裂が、今は男の白濁を垂れ流している。その白い物に混ざる赤い物は環の
純潔の証であった物だ。
 そしてその上方には同じような感じでもう一つのすぼまりが…
 なかなかに生唾ものの光景である。

 もう一度やっちゃおっかな…

 そのとき


 ガサッ


 聞こえた物音に振り返ると、近くの茂みから覗く視線とバッチリ目が合った。
 ふっふ、立ち位置を変えたのはコレに気づいていたからよ!
 ……すまん、嘘だ。

「あ、あ、あの、違うんです!お二人の邪魔をするつもりじゃ!ただちょっと
だけ見学させてもらおうかなーっと!…失礼しましたぁ!」

 そのどこか怨敵の片割れ、義経を思わせる小柄な少女 ― 晶といったかな 
― は言い訳するように叫んで身を翻した。
 つかさの記憶でも怨敵の片割れのようだし。
 ……うむっ、第二の呪詛のより代はあの娘に決定!
 身の軽い少女を追ってそれがしも走り出す。

「ま、待ちなさ…イタタ…」

 後ろから聞こえた声は捨て置き少女を追った。





                                      《つづく》