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『その中身』

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志貴が秋葉に命を返したあと。
秋葉は兄の消えた屋敷に居辛くなり、浅上の寮へと戻ってきていた。

戻ってきてから全く覇気の無かった秋葉だったが、三ヶ月も過ぎた頃には少な
くとも表面上は元気を取り戻していた。


その日も、あわただしく生徒会の仕事に追われていた。
あまりの仕事量の多さに寮の自室に仕事を持ち帰った程だ。

「ふぅ」
仕事が一区切りして息をつく。
時計を見ると夜中の二時をまわっている。
同室の蒼香や羽居はとっくに夢の中だ。

「そろそろ寝ないと明日にひびくわね」

パジャマに着替えてベッドにもぐりこむ。

眠ろうと目を閉じて、自分の頬を流れる物に気付く。
「私、また泣いてる」
気を抜くと無意識のうちに思い出し、涙がこぼれる。
「兄さん…」
彼の人を呼びながら、涙が溢れるのも構わず再度目を閉じ、眠る―――。


     §          §


「蒼香ちゃん、蒼香ちゃん」
朝、めずらしくまだ寝ている秋葉のベットの横で羽居が蒼香を呼ぶ。
「どうした、羽居」
「すごいの♪」
何がすごいのかと、まだ寝ている意地っ張り姫のベッドに近付く。
「へぇ〜」
蒼香は声をあげた。
安らかな寝息を立てている秋葉は、同姓の蒼香から見てもうっとりする程、美
しかった。
まるで眠れる森の美女か、白雪姫のようだ。
「確かにすごい可愛いな、いつものキツイ遠野からは想像も出来ない」
「ちがうの、ちがうの」
同意した蒼香に首を振って否定する羽居。
「確かに秋葉ちゃんが可愛いのはすごいけど、そうじゃないの」
そう言われてもう一度秋葉を見なおす蒼香だが、まだ何がすごいのかわからな
い。
「べつに、すごい所なんて無いと思うが―――」
そう言ってもう一度、じっくり見た蒼香は違和感を感じる。
あれ?
いぶかしげな表情をした蒼香に得意顔になって胸を張る羽居。
「ね、すごいでしょ?」
羽居の言葉で、やっと飲み込めた。
「ああ、これは確かにすごいわ。女でも朝立ちってあるんだな」
蒼香の言葉通り、ベッドに横になっている秋葉のパジャマ、その股間がテント
を張っている。

「でしょー。結構大きいよ。秋葉ちゃんの♪」
「なに喜んでるんだ。しかし、なんだってそんな物がついてるんだ?」
「わかんなーい」

「前から胸は無いとは思っていたが。まさか、男だったとか」
「それはないよ。だってプールの授業受けてたし。
 それだったら、『お屋敷に帰っている間に手術した』の方が面白いよ」
「面白さで決めてどうするんだ」
「じゃあ、出し入れが自由なのが付いてるとか」
「それこそ無いだろう」

こうして話している間にも、羽居の目がきらきらと輝いてゆく。
ウズウズしているのが傍目にもわかる。
「おい、羽居。よからぬ事を考えてるんじゃないだろうな」
「蒼香ちゃん。直に見てみたくない?」
うっ
見てみたくないといえば嘘になる。
でも、それはあまりにも―――
「ってなに脱がそうとしてるんだよ」
すでに羽居はパジャマに手をかけていた。
「だって私、見たいもん」
なんて自分に正直なんだ。
この性格が時々羨ましくなる。

「遠野が起きたら怒られるぞ。
 だから、気付かれない様にそっとやれよ」

たまには羽居の様に正直にやってみよう。
そう思った蒼香は止めなかった。

秋葉を起こさないように、自然と声が小さくなる。
「どんなだとおもう?」
「なにが?」
「秋葉ちゃんのだよ」
「どんなって…」
「色とか、形とか」
「うーん」と少し考えて、
「ピンク色で剥けてないんじゃないのか?」
と答える。
「でもこれ、もっこり具合から見て、二十センチ位はあるよ」
「たしかに、この大きさからして剥けてないって事は無いか」
「私は黒光りくんだと思うなー。だってほら、反りがあんまりないし」

議論してても始まらない。
現物のチェックだ。

羽居の手が起こさないようにそっとのびる。
パジャマのズボンに指をかけ、ゆっくりと下ろしてゆく。
途中、棒が引っかかって抵抗をする。
あと、もう少し。
「羽居、何してるの?」
「何って見ての通りだよ。ズボンを―――
 って、秋葉ちゃん起きたの!?」
しっかりと目を覚まし、ものすごい形相で睨んでる。
「ズボンを下ろされれば誰でも目が醒めます」
「まだ下ろしてないよ?」
「とにかく、何で人の服を剥ごうとしてたの!」
声に怒気が含まれてる。
「秋葉ちゃんがあんまり立派だったから、つい」
「立派って、何―――」
そこまで言って、はたと自分の股間のテントに気付く。
「ああ!?」
固まってしまう秋葉。
しかし、数秒後に頷く様に納得する。
「あーはいはい。なるほど。二人してこれが気になっていたのね。それで羽居
は私の服を脱がそうとまでしていたと」
「まあ、そうだ」
「で、秋葉ちゃん剥けてるの?」
羽居の言葉に秋葉はあきれた顔でパジャマのズボンに手を入れる。
そして、中の棒をつかむと―――、
取り出す。

「秋葉ちゃんそれ―――」
「ナイフ、か?」
秋葉が取り出したのは、七夜の短刀だった。
「ええ、兄さんの持っていた物です。
 持って寝ていたらパジャマの中に移動していたみたいね」
「なんだ、生えたんじゃないのかー」
残念そうな羽居の言葉に、何を言い出すのかと嘆息を漏らす。
「そんな訳ないでしょう」

「しかし、刃物なんか抱いて寝てたのか。危ない奴だな」
「でも、秋葉ちゃんらしいよ」
今まであきれていた秋葉の顔に、別の感情が表れる。
「ちょっと羽居、刃物が『私らしい』って、それはどういうことかしら?」

「えー。私そんな事言ったかなー」
「とぼけるんじゃありません!」
「わー。秋葉ちゃんが怒ったー」
「遠野、そのナイフを使うのはやめておけよ」

今日も、浅上女子寮の他愛もない一日が始まる。

―――了―――

ごめんなさい!
生えてません。
レギュレーション違反です。
「エキジビション」か「他の正式大会参加作品のおまけ」くらいに見て頂ける
と嬉しいです。

2002/12/28 you