[an error occurred while processing this directive]

「……て……やめ、て……瀬尾」
「え……?」


 拒絶。
 しかもそれは、快感に震えた意味のないそれではなくて、あまりにも細い涙
声。

 わたしはハッとなって顔を上げると、そこには今まで見た事のない様な悲し
い顔で先輩が泣いていた。
「やめて……」
 瞳からはぽろぽろと涙を零し、先輩が泣いている。わたしは混乱したように
止まり、その意味がわからなかった。
 しかし……

「初めては……初めては兄さんにあげたいのに……や……」

 先輩の悲痛とも思える言葉に、わたしは頭を叩かれるような衝撃を受けた。
 そんな……先輩……初めて……?
 わたしは瞬間、体の熱が急激に引いていくのが分かった。

 そん、な……わたし……?
 先輩の、初めてを……?

 ショックだった。
 あまりのショックに声が出なかった。
 わたしはもう少しで、先輩の大事な初めてを奪ってしまうところだったなん
て。

「だから……やめて、瀬尾……」

 先輩の涙を見て、あまりにひどい罪悪感がわたしを激しく襲う。
 初めては一番好きな人に捧げたい、それは女の子として叶えたい夢だと分か
っていた。
 それなのに、わたしは……わたしは……最低だった。わたしは先輩はきっと
もう志貴さんに抱かれているだなんて勝手に思いこみ、そして自分の欲望の充
足の為だけに先輩を犯そうとしていただなんて……
 今になって自分の行いの罪深さを知らされた格好となり、そこからくる悪寒
に震えが止まらなかった。
「ごめんなさい、ゴメンナサイ先輩……」
 ようやく、涙がわたしからも流れ出した。反省などという軽い言葉では表せ
ない罪悪にまみれた涙。心臓を握りつぶされてもいいくらい、わたしは消え去
りたい気持ちだった。ぐずるように手を当て、次から次へ零れる涙は止まらな
かった。

「……」
 と、先輩はその涙をどう思ったのか、ふっと体の力が緩まった。
「せ……んぱい?」
 わたしがそれに気付いて先輩を見ると、少し悲しそうだけどいつもの優しい
先輩の顔がそこにあった。
「……」
 先輩は何も言わない。
 けれど、わたしは何となく分かってしまっていた。
 先輩は許してしまっている。
 志貴さんじゃなくて、今苦しんでいるわたしの為に、初めてを捧げてもいい
と思ってしまっている。
 穏やかな先輩の表情は、わたしを慈しんでくれている。なのに、それがなに
よりもわたしを責めるものとなっていた。
 耐えられない……そんな先輩の気持ちに、わたしの中で全てが崩れ去った。

「だめ、です……」
 わたしは首を振った。
「そんなの、悲しすぎます……先輩の初めては、わたしなんかが奪っちゃだめ
なんです……」
 先輩の気持ちに、また涙が溢れてしまっていた。
 わたしなんかの為に、そこまでしないでください……
 先輩……どうして、どこまでも優しいんですか……

 先程までの達成したいという思いはとっくに霧散し、あるのはただ罪悪感と
自責の念だけ。今先輩の許すままに突き入れたりしたら、わたしは死ぬまで後

悔してしまうとはっきりと分かっていた。
 だというのに、先輩はその優しそうな顔を崩してくれない。そればかりか、
まだ上手く動かない体を精一杯動かして、下半身に……そして
「じゃぁ……こっちならいいわよ」
 と、先輩はまだ誰も触れた事の無いであろうそこを示した。
「あっ……」
 そこは確かにわたしを満たしてくれて、気持ちよくて、先輩の初めては奪わ
ないけど……
「ね、こっちなら大丈夫だから」
 先輩は花弁の更に下、小さくすぼまったそこを広げてみせてくれた。少し無
理をしているように恥ずかしくヒクついているが、クスリの所為か思ったより
柔らかなそれがわたしの前に露わになる。

「こっちも兄さんにあげたかったけど、瀬尾にあげる……兄さんなら、かわい
い後輩の為だって言えば許してくれるはずだから……」
 そう言って、先輩はわたしのおちんちんを優しく掴み、導いた。
 ぐっ、と先端が触れるだけで
「んっ……」
 先輩が未知の感覚に少しだけ怖がった様子を見せる。わたしはそんな先輩に
どうしたらいいのか分からず、呆然としていた。
「あ、あ……」
「ほら……最初は痛いと思うから、ゆっくりお願い」
 と、自分の愛液を擦りつけ、入り口を開くようにして促した。

 涙が流れた。
 わたしの為に……許してくれるなんて。わたしは、わたしは……凄く幸せで、
先輩を心から尊敬し、愛しく思いました。
 きっと、先輩はここでやめたら許してくれないと思う。わたしを満足させる
為には身を制してでも受け入れてくれるに違いなかった。
 だから、だから……

「ん……あ、あああ……」
 ずっ、と、先端が先輩のお尻に入っていく。とってもきつくて、それでいて
物凄く熱かった。
「ん、そうよ瀬尾、そのまま……」
 少しだけ辛そうにしながら、それでも先輩は笑顔でわたしに語りかけてくれ
る。そんな先輩を早く楽にしてあげたくて、でも気をつけながらわたしは奥に
進んだ。
 どこまでも続くような途。まるでわたしの全てを受け入れてくれるような先
輩の中にわたしはゆっくりと突き入れる。そうして、もう入らないというとこ
ろまで来ると、先輩はゆっくりと息を吐いた。
「どう、瀬尾。きもちいいかしら?」
 恐らく信じられないような異物の挿入に正気もままならないはずなのに、先
輩の気丈な振る舞いはわたしの胸を締め付けた。
「はい……先輩の中、いっぱいで気持ちがいいです……」
 わたしはぽろぽろと泣きながら答えた。
「もうっ……気持ちいいなら泣かないの、折角繋がったんだから」
 と、優しく先輩がわたしを怒ってくれる。
「はい……」
 無理にでも笑うと、先輩は優しく微笑んで
「動きなさい、そうしないと気持ちよくないでしょう? 私は大丈夫だから…
…」
 そう言って、自らぎこちなく腰を動かし始めた。
「……はい」
 それにあわせて、わたしはゆっくりと抜き差しを開始する。

「んっ……」
 ぎゅうっと搾り取られるかのように、先輩の中でおちんちんが擦れた。
 先輩の、熱い……
 体温よりももっと高いその中に突き入れるたび、私の腰のむずがゆさは増し、
そしてそれがえもいわれぬ快感に変わっていく。
 先輩のお尻を犯しながら……わたしは、涙を流しながら突き続けた。嬉しさ
と悲しさとがごっちゃになって狂ったようにわたしを襲うと、先輩は嬉しそう
に微笑んだ。
「んっ……あっ?……変、になりそう……」
 と、先輩は痛みを堪えるようにしながら、自らのクリトリスを弄り始めた。
「あっ……瀬尾だけ気持ちいいのはずるいから、私も……」
 そう言って、先輩の自慰を見せられながらわたしは突く。
 お尻から離れた先輩の手は、自らの花芯を優しくこねながら淫靡に動いて…
…美しかった。
「んっ……瀬尾、いいわよ」
 先輩が異物感に慣れたのか、心持ち中に余裕を感じるようになった。わたし
は黙って頷くと、一番奥に突き入れるように腰を進めた。
「んあっ……! 瀬尾のおちんちんがぐりぐりっていって……」
 髪を乱しながら、力が入らないように淫らに口を半開きにしている先輩を見
て、わたしのココロはまた熱くなってくる。
 可愛くていやらしくて綺麗で、わたしの大好きな先輩の貌が一層艶やかに見
えて……わたしは夢中になった。先輩の中をいっぱいに満たしながら、わたし
は折り重なる。
「んっ、先輩……気持ちいいです……」
 吐息のかかる距離に先輩を見つけると、わたしは笑った。その瞳から零れる
涙を、先輩が顔を上げて舐めてくれた。
「いいわよ、その顔。兄さんにも見せてあげたい……あっ」
 きゅうっと、先輩の収縮がわたしを襲い、それに反応してわたしがびくんと
跳ね上がった。

「あっ……先輩、もうっ……」
 腰の奥から何かが迫り上がってくるような感覚。融けそうな予感がわたしを
高みへと呼んでいた。
「んっ……いいわよ、好きなところに出しなさい……あっ……」
 先輩はわたしをぎゅっと抱き締めてくれると、脚を絡めてきた。
「はあっ……先輩。中に、中に……」
 わたしはその言葉を信じ、うなされたように呟く。そうして先輩のより奥深
くを犯すように突き上げると、その先端から熱い液体を迸らせた。
「あ、あ、あ……」
 絞り出されるようにどくり、どくりと脈打ち、わたしは思いの丈を注ぎ込む。
「うんっ、あ、熱い……」
 お尻に精液を流し込まれ、先輩が小さく呻いた。しかしわたしを強く抱いて
くれたまま、その放出を全て中で受け止めてくれている。
 嬉しくて嬉しくて、わたしは先輩に口づけながら全部を吐き出した。最後の
ひと噴きまで先輩の奥に送り込んでから、それはようやく収まった。

「はあっ、はあっ……」
 先輩とわたしの呼吸が小さく繰り返される。先輩は満足そうにわたしを見る

「よかったわね、瀬尾……」
 何よりもまずわたしを気遣った言葉。わたしはこころの奥がじんとしながら
「はい……ごめんなさい……ありがとうございます」
 ぐしゃぐしゃの顔のまま笑い泣きをしていると
「ほら、可愛い顔が台無しよ……」
 先輩がぺろぺろと舌でわたしの頬を流れる汗と涙を拭ってくれた。
 そうして先輩の中から抜き取ると、一瞬口の開いたようなそこから精液が流
れ出し、シーツを濡らした。
「んっ……あ……」
 抜け落ちた感覚に一瞬声を詰まらせると、先輩は気丈に微笑んで
「もう、出し過ぎよ……」
 そう言って、下着の位置を整えると少し辛そうにして立ち上がり、部屋を出
ていった。
「あ……」
 そうか、お尻の中に出しちゃったから……
 許してくれたとはいえ、そうしてしまった事に改めて罪悪感を感じながら、
わたしは何も言わずに受け入れてくれた先輩に心から感謝していた。
「はぁ……ん」
 改めて気付けば、ここは先輩の布団の上。わたしは先輩の香りがいっぱい染
みついたシーツに顔を埋めると、肺いっぱいにうれしい香りを吸い込んだ。凄
く安心できて、心地よいその香りがわたしを優しく包み込む。
「ありがとうございます、先輩……」
 枕をぎゅっと抱き、そこに一滴の涙を吸い込ませると、そのまま香りに包ま
れるように眠りにつきたいと思った。
 そうして、いつの間にかわたしは夢の中へ……目覚めた時には先輩が横にい
てくれて、優しく頭を撫でてくれていた。

「瀬尾。誰にも言っちゃだめよ?」
「はい」
 そうして、朝まで先輩と一緒にいた。わたしが寝てる間に帰ってきていた蒼
香先輩と三澤先輩は何も言わなかったけど、きっと大丈夫だと思った。


 


                                      《つづく》