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たまにはこんなおひめさま
                           風原 誠

ざあざあ
ざあざあ

外では雨が降っている
カーテンの向こうで輝る雷が、
真っ暗な部屋を一瞬だけ照らし出す

ベッドの上でシーツを頭から被って震えているのは
金色の髪のおひめさま

抱えた電話を鳴らしても
受話器を取るのはお屋敷の無口なメイドさん

「お帰りになられておりません」

冷たい言葉だけがハートにちくちく突き刺さる
ベッドの上ですんすんと鼻を鳴らすおひめさま


ざあざあ
ざあざあ

雨はずっと降り続いている
真っ暗な部屋の中で一人シーツに包まったおひめさま
部屋の中に響くのは時計の針が進む音
ぴんぽーん


突然響く玄関のチャイムに、ぱっと顔を輝かせて跳ね起きるおひめさま
抱えた電話を放り出し、ベッドから飛び降りて駆けていく

勢い良く扉を開けたそこには
折れ曲がった傘を手にした
ずぶ濡れになったおうじさま

「何度も電話くれたんだって?」
 
そう言っていつもの笑顔で笑いかける
おひめさまだけのおうじさま



もわもわと立ち込める
湯気いっぱいのお風呂場で、
湯船に浸かったおうじさまとおひめさま

寂しい想いをした分だけ
会いに来てくれて嬉しかった分だけ


おうじさまに甘えられて
幸せいっぱいの
金色の髪のおひめさま