[an error occurred while processing this directive]

目覚めるまで

作:瑞香


 ――ここはどこであろうか……。

 妾は胡乱な頭で、周囲を見回す。
見たことのない、しかし見たことのある場所であった。
狭く、何もない部屋。
あるものといえば机と暖炉、そしてベットと必要最低限のものばかり。
質素というか簡素というか、ともかくそのような部屋。

 そんな部屋は妾には見覚えはない。
 見覚えのないはず。
 しかし、なぜか見覚えがあった。

そして安堵感がある。

 なぜ?

疑問が浮かぶが仕方がない――たぶんこれは。
そうして妾はベッドを見る。
そこには、まぐわっている姿があった。

 たぶん、これは――あれの記憶だからであろう。
 そこにはもう一人の、髪の短い妾が人間の男に組み伏せられ、啼いていた。
 いや――違う。

妾はその痴態を見る。いや違う。これを見せつけられているといった方が正しいであろう。

 はぁはぁはぁ。

男は、かわいい顔をしながらも、妾の陰に陽物を突き立てていた。

「あぁ……志貴」

妾が甘い声をあげる。

「アルクェイド」

男も、もう一人の妾に答える。

 ギシギシギシとベットが軋む。

 ――たった一度の経験だというのに。

妾は苦笑した。

 ――それだけで虜になったのか、もう一人の妾は。

「あぁ」

もう一人の妾は顔を赤らめ息を荒げている。

 ふたりは接吻をする。舌をからめ、ねぶり、お互いの唾液をすすり、貪っていた。
 男は接吻しながらも、腰の動きはやめない。ぐちゅぐちゅと音を立てて、男
は妾の女陰に打ち込む。妾のそこは男のそれを受け入れてめくれあがり、そし
て濡れぼそっていた。

 ――あぁ、たしかに

 妾にも覚えがある。
 あの感触を。
 たしか、悦楽、といった。
 躰が震え、頭が真っ白になるような、あの波。何度も何度も小刻みにおとずれ、妾の神経を灼く、あの甘く淫靡な焔。

 ――いや違う。

妾は否定する。

 それはあれの記憶だ。妾のものではない。
あれと妾はつながっている故――まるで自分のものであるかのような錯覚をお
こしているだけだ。

 そうだ、そうに決まっておる。
 妾の息が荒いのも、妾の頬が上気しているのも――すべては夢、幻にそう違いあるまい。
 男の荒い息、厚い胸板、そしてそこにある赤くひきつれた傷痕。低いつぶやき。妾ではなく、
アルクェイドと呼ぶその声は心地よく甘く脊髄に響く。

 男は体位をかえる。

妾の喉が、いやに大きく鳴る。

 男はそのまま犬のような姿を妾にとるようにいう。

いや妾ではない。あれにだ。

 妾はゆっくりと四つん這いになる。

なんと浅ましい。

 あれが妾のとる姿であろうか。

秘所どころか菊門までも人間の男風情にみせるとは!
しかしもう一人の妾は、腰を振り、浅ましく、貫かれるのを甘い声でせがむ。
その顔つきは淫蕩でゆるみ、まるでさかりのついた牝犬のようであった。

 それが妾と同じ顔をしているとは!

 ――妾もあのような顔をすることがあるのか

 男はいきり立ったそれをすぐに挿入するかと思ったら、そのまま秘所に口づける。
 びくりと、それの体は動き、
 びくりと、妾の体も動いた。
男は、妾のあそこを指で広げ、舐めている。それに応じるかのように、妾のア
ソコからとろとろと愛液がこぼれる。それを音を立ててすする。

 違う、あれは妾ではない……。

舌であそこをほじり、指を入れる。

 あれは甘くなき、男を求めて腰をよじる。せがむ。

しかし男は赦さない。執拗になめ、指をいれ、かき混ぜる。
甘い疼きが体を包むが、それでは真っ白になれない。
ずっと疼いているだけである。慰めにもならない。それでは足りないのだ。妾
の体が欲してるのはそのようなものではない。もっといっぱいとなり、妾の体
を埋め尽くすような、熱い――。

 そして男はなにを思ったのか、菊門に口づけする。
 あれは顔を上げて、男を見る。
 妾も、見る。

男はなにか一言二言言うのだが、聞き取れない。

 そして再び菊門に口づける。
 おぞましい感触が妾によぎる。
 しかし指は妾を責めることやめない。
 腰が動いてしまう。
 違う、あれは妾でない。
 太股が小擦れあおうとしている。
 ちがう、そんなことは、妾はしない。

  はぁはぁはぁ。

 この荒い息はあれのものである。けっして妾ではない。

乳首がドレスにこすれて、痛い。
違う、妾ではない。
妾の乳首など勃っていない。

 しかし異物感は妾の腰にあった。

ぬりゅりとした舌が妾の股間を、女陰を、そして菊門をなめている。
白い光が頭にはじける。

 ――もっと。

あれはまるで獣のようにねだる。

 あぁそんなに気持ちよいのか。
 人間風情に、
 いじられて、
 弄ばれて、
 真祖の姫君と称される妾が、

ただ、快楽を求めて、疼きに屈服し、
目の前の男に媚びをうるというのか。

 それどころか、あれは男の陽物に手を伸ばすと、愛撫し始める。
 後ろからのばすから、手は届かず、かすかに触れる程度。

しかし、指先は、先の割れ目をこすり、えらばったところをなで上げる。
つるつるとした感触が心地よい。
それがてらてらとした液がまじってきゅっと音がしそうである。

 それが熱く、脈を打つ。
 ――なんて熱くて、立派な――
 男は気持ちよさそうにしている。
 この男がもっと妾の手で身もだえるところが見たい。

そう思うと、指をVの時にして、えらばったところにひっかけ、そしてその指
の間でしごく。

 あぁ――なんていやらしい。
 口を開け、目をとろんとさせ、喘ぎ、そして求めている。
 先から出るとろとろとした液をのばし、まぜ、一物に塗りたくる。
 あぁ――なんて淫らな。
 できれば口いっはいにほおばり、しゃぶり、舐め、舌をからめ、液を涎とと
もにすすりあげたい。
 あの匂い、味を味わいながら、竿に舌を絡め、カリに歯をたて、そして陰嚢
に口づけし、しごきあげたい。
 トロっとした汁が、唾液と混ざってにゅるにゅるの液体になっていくのを味
わいたい。
 否。
 なんといやらしいことを考えているのだ。これは妾とは違うのだ。そうだ違
う……のだ。

 あんなところを嬲られ感じるなど……。

気がつくと妾は自分の秘所に手を伸ばしていた。
いけないと思いつつ、下着の上から触る。

 くちゅ

湿った音がした。
火照っていた。

 ――あぁ、濡れている。

妾の指先はそっと自分の秘所を慰める。

 ――妾はなにをしておるのだ。

しかし動き出した指先は止まらない。
下着の上からもどかしく、こすり、広げ、荒々しく慰めていた。

 我慢できず、下着の中に手を入れる。
 ぐちゅぐちゅといやらしい音を立てる。
 淫水が指を濡らす。
 そっと皮の上から豆をこする。
 気持ちよい。

もっと悦楽を求め、指は秘所の奥へとのびる。
膣にいれ、かき乱す。より感じるところをもとめて、指は一本、二本と増えて
いく。

 もう一方の手は、ドレスの上から乳房をもんでいた。
 熱くとがった乳首をつまむ。乳房全体をまわすようにもむ。なでる。
 肌が敏感になって、指が触れるだけで、心地よい痺れが脊髄を流れる。
 白い快感が妾を貶める。
 ――妾は……はぁ……感じてなぞ……。
 荒く熱い吐息を吐く。手は止まらない。

足腰に力が入らず、床にしゃがみ込む。

 妾の指などではない。
 そぅ……はぁはぁ……これは指は……
 秘所をいじっていた指をそっと下の方へずらす。

男がなぶっている菊門のあたりにふれる。

 ……そぅ……はぁはぁ……これはあの男の……

そっと指先を挿れてみる。

 はぁぁ

大きく息を吐く。

 ……これは、あの男のもの……けっして……
 躰が震える。
 息を求め口が大きく開く。涎がもれる。
 頭は胡乱で、真っ白でも何も考えられない。
 ……けっして……はぁはぁ……妾のものなどでは……ない……
 嬲っていた男は菊門に口を付けると、舌を入れてくる。
 あんなふうにいじって、なんといやらしい……。
 指は速度を増す。止まらない。
 それだけでも我慢できないのに、男はすすったのだ。
 その吸い出させれる感触に妾の頭は真っ白になる。
 愛液が太股までぬらすのがわかる。
 身悶え、疼くのがわかる。
 全身が突っ張っり、びくんと大きく痙攣する。
 そして力が抜けて、妾はベッドに横たわる。

しかし男は手を休めない。

 妾の赤く充血しきった女陰――あぁ、だからあそこを花というのか――に突
き立てる。
 びくん、と体が再び痙攣する。

痛いぐらいの快感が背骨から脳へと突き上げる。
イったばかりで敏感な躰に、男は注入を開始する。

 にちゅにちゅと淫らな音がする。
 妾のアソコはめくり上がり、じゅぶじゅぶと音を立てる。
 妾の躰は力なく横たわり、男のそれは尻の間から妾を攻め立てている。
 いつもとは違う場所がこすられ、えぐり、突かれて、何度も真っ白になる。
 ――あれは。
 ――妾は。

嬌声をあげる。
悦楽を貪欲に求めて、もっともっとと声をあげる。

 ただただ「志貴、志貴」と名を呼ぶばかり。

膝立ちになり、受け入れようとするが、足腰に力が入らない。

 熱いそれが妾のあそこをかき回しているのだ。
 入るたびに、抜かれるたびに、頭が白くなる。
 志貴の挿入の速度はゆるむことなく、さらに増している。
 ――ああ。

志貴が何をしようとしているのかわかると、膣は妾の指をぎゅっと締め付ける。

 ――あぁ
 妾のあそこは湿っていた。濡れていた。びちょびちょだった。
 それを求めていた。
 妾は嘆息した。
 射精しようとしているのだ。出そうとしているのだ。あれの中で、妾の中で。
 妾の女陰に、子宮に、あの男の精が注がれるのだ。

あふれかえるぐらいいっぱいに、あの白濁したものが注がれるのだ。

 考えるだけで、頭が痺れる。
 身悶える。
 早く、早く、妾に精液をかけて欲しい。
 あの瞬間、妾のあそこはきゅっとしまって、一滴残さず吸い尽くすのだ。
 両手の指が妾のあそこをいじる。
 妾の秘所のひだというひだが男根にからみつき、締め付け、絞り出す――そ
のとき快感といったら!
 そして志貴は動かなくなる。
 腰を妾の秘所に突き立てて、震えている。

二度、三度、静かに動き、より深く、中へと押し入ってくる。
より中へと注ごうとしている。

 ――あぁ出している。
 ばしゃぁと妾の子宮にかけておるのだ。
 かけられているのだ。
 あれは妾の中でびくんびくんと動き、少しおおきくなったかと思うと、精液
を吐き出しているのだ。
 それがあふれるぐらいかけられている。
 指を深く膣の中にいれる。
 その瞬間、妾の頭は真っ白になる。
 躰がびくんと動く。
 もう、それしか考えられない。
 気持ちよくて涙がこぼれる。
 はぁと深く息をつく。
 痴態をさらしているあれの顔は痴呆のようで、志貴に抱かれ、とても幸せそうであった。
 ――あぁそうか。

妾は、狂おしい痴態の中、得心した。

 すべては――夢。

あれが志貴と別れて千年城に戻り、眠りにつく。
そのときに見る、甘い夢。

 別れた良人との、初恋の者の、たわいもなく、何の意味もない、ただただ甘
い一時――ひとかたの夢。

 ただ狩人として存在するはずのあれは、狩り以外のものを知ってしまった。
 これはあれが見ている夢か――。
 それとも妾が見ている夢か――。
 妾はあと何度このような夢を見せられるのであろうか?
 あれが妾として、朱い月として目覚める時か、それとも死徒狩りに赴く時までか――。
 妾にとって甘い拷問のような時が続く――――目覚めるまで。

 


はじめまして、瑞香といいます。
どこかでみかけましたらよろしく。
これは、瑞香がはじめて書いた――小説は何度かありますが――SSです。しかも18禁。18禁も初めてです。
 月姫にはまって、ネットサーフィン(死語)をしていたら、moongazerさんにたどり着き、応募していたので、ドキドキしながら応募しました。
 一応、月姫なのでアルクェイド、トゥルーエンドの「月姫」の後です。
 千年城に戻って自分を鎖に縛り付けたアルクェイドが見た夢は、志貴との甘い一時。しかしそれを朱い月が見ている、という構図です。
 本当はレンがからんでいるから淫夢なんですが――「月姫エンド」だとレンはまだ仮の主であるアルクェイドに付き従っているわけですからね――あえて、レンは出せませんでした。朱い月のモノノーグとかぶりそうなので。
 アルクェイド&朱い月様(だれか書くのかなぁ:笑)という阿羅本さんのコメントがなければ、きっとわたしは初SSが18禁にならなかったでしょう(苦笑)

 一応、実用にも耐えられる(?)ものになっていれば、幸いです。