《この作品はTYPE-MOON 第一回Fate人気投票応援に投稿されましたが、
リンクの関係上こちらに再度掲載させて頂いております。予めご了承ください》


どろり、と。

                          阿羅本 景


「あは、先輩……こんなにどろどろにしてるんですね、先輩ったら……いつも
は先輩はあんななに凛々しくて逞しいのに、私の前ではこんなにねっとりとし
めってどろどろしてるだなんて、軽蔑しちゃうかもしれないくらいに……ぬる
っとしてますよ、先輩、こんなに白くどろどろに濁らせて待ってるんですね、
先輩……素敵」

 桜の低い、まるで呪つ事のような言葉が響く。
 それは大地の底の禍事のようであり、海の彼方の誘いのようでもある。耳に
する者はその声の源を知ることが出来ず、故にその言葉から耳を塞ぐことは出
来ない。

 桜の唇が、濡れて戦慄く。
 はぁ、と甘い吐息が吐かれる。それは春の風より温く、夏の風より湿り、秋
の風より渇き、そして冬の空気よりも寒気を呼び起こす。流れる息が漂い、毒
のように広がる。言葉と息がこの空間を桜のモノにする。

 あはぁ――――と響く、桜の随喜の息。

 間桐桜が笑う。
 彼女の手が持ち上げられ、それが覆る。
 どぽりと白く粘った液体が、糸を引いてそれから流れ落ちる――こんな量が、
粘りがあるのが不思議な程に。それは貯まった液体に注がれる。白い、それは
仄かに黄色を含んだ生温かい白。

 その液体を見る者は、思わずその手を擦りたくなるに違いない。その液体が
身体のどこかに飛散したのではないのか、その汚れが己の身に染みこむのでは
ないのか、それは不安を呼び起こさずに居られない。

 最後の一滴が注がれると、粘液の高いその液体の池はぷくりぷくりと小さな
気泡を浮かべながら波打つ。まるで忌まわしい命の生まれる不浄の泉のような
 たゆたゆと、ぷくぷくと。

「濁ってます、先輩のが――こんなにどろどろに濁っているんです、それにこ
んなにたくさん……嬉しいです、先輩がこんなに用意してくれただなんて――
考えるだけで美味しそうで、ぞくぞくしちゃいます、はぁ……」

 桜はふるふるっと背筋を振るわせた。
 指が唇に触れ、その液体の雫と唇に乗せる。紅い唇がその白い液体を舐め取
った、ちゅるぽ、と唾液の音を立てるように――陶然とした瞳と、動く喉。

 ほぅ、とその味わいを喉に収めた桜が目を閉じ、唇に言葉を乗せる。

「ちょっと変な味ですね、先輩のは――でもこれから美味しくなるってことは
わかります。だって先輩のなんですから……ねぇ、きっと姉さんもセイバーも
喜んでくれるに違いありません。ほら、先輩のお肉がこんなにちいさくなって、
この中にまみれていて――どうして欲しいんですか、先輩、言ってくれなきゃ
分かりません……でも」

 桜がふふ、と笑う。
 それは虚ろで、何かを理解して何かを無視する、そんな強く恐ろしい笑いで
あった。
 朱いリボンが震えるのは、まだ見ぬ美味の快感を予期してか、あるいは――

「ふふふ、先輩ったらいまは手一杯ですものね。だから桜が先輩にしてあげま
す……ほら、先輩ったらこんなに白くて濁ったものをたくさん貯め込んで、こ
んなにいろんなモノを混じり合わせて、先輩の肉までこの中にあって――わか
ってます、先輩は硬くなりたいんですね、カチカチに硬くなって、ぱりぱりに
乾いて、それなのに中はじっとりと湿って熱くなりたいんですね。わかります、
だから先輩にきちんとしてあげます、先輩――ふ、あ、あは……ほら、先輩を
この鉄板の上で焼き上げてちゃうんです。あら先輩、怖がることはないんです。
私がちゃんと、先輩に教えて貰ったとおりにしてあげますから、楽にしてくだ
さい――先輩をぐちゃぐちゃにしたりはしません、ちゃんと先輩をひっくり返
してあげますから。そうしたら先輩もああ、桜よくやったねって気持ちよさそ
うな声で私をほめてくれるんですね、そうなったら私、うれしくって何でも先
輩にしてあげられちゃうんです、は、あ、あは………行きますよ、先輩……は
ぁ――――――」



「……どうでも良いけど、お好み焼き作るときに何呟いてるのよ?桜」



 眉根に深い皺を寄せた遠坂凛が、そうぼそりと呟く。
 目の前にあるのはホットプレート、そしてステンレスのボールにレードルを
持った桜がエプロン姿で、今まさにお好み焼きのペーストを注ごうとしていた。

 ぽたりん、とレードルの底から糸を引く。

 豚肉とキャベツと天かすと鰹節と小麦粉と水と少々のとろろを溶かし込んで、
白く濁って粘ったお好み焼きのペーストがぽってんぽってん、と鉄板の上に落
ちる。ぼてっと小麦粉の粘りを含むそれはテフロン加工のプレートの上に円を
描いて広がっていく。

 遠坂凛の視線は、今までなんとも黒い笑いを浮かべていた桜の顔に注がれて
いた。
 それはジト目というか、目の前の桜が信じられないというか、自分の聞いた
言葉がウソであって欲しいと暗に祈るような視線であった。だが――

「何ですか、遠坂先輩?」

 そんな笑いが嘘のように、にっこりと純真無垢の微笑みを浮かべる桜。
 変わり身の速い桜の様子に、凛はステンレスのフライ返しの隅を噛んで苦っ
ていた。いや、舌に触るステンレスの味が苦いのではなく、目の前のしれっと
した態度の桜がどうにも苦い、と。

 卓袱台に片肘を突いた格好の凛は決して行儀良くはなかったが、彼女の苦渋
をその態度が良く表していた。それに、眉間に刻まれた皺。そんなに刻むと後
に残っちゃいますよ、と桜に思わせるほどに。

「いや、だから桜。あなたさっきからお好み焼きをかき混ぜながら何か言って
たでしょう、先輩のお肉とか、白く濁った液体とか、う、ううう……」

 凛は脳裏から桜の発言内容を呼び起こし、その言葉の持つ淫靡な薫りに口ご
もる。桜の唇から吐かれた言葉は、同性の凛が聞いても何とも言えないほどに
湿って、肉の悦びに満ち、そして背筋を振るわせるように淫らに聞こえた。

 それは、性に大して潔癖ですらある凛の神経を蹂躙していた。
 さらにそれが、同じ根に発するこの間桐桜に依って成されたと言うことがよ
り一層凛の動揺を増幅して……

「……硬くしたいとか、教えて貰ったとおりにしてあげるうとか!もうあなた
一体何を考えて何をエロ声で囁いてるのよ!食卓で差し向かいでそんなエロ声
朗読を聞かされる身にもなってみなさいよあなたはぁぁぁ!」

 どどどーん、と効果音がしそうな程に叫ぶ凛。
 くわっとフライ返しを握りしめて叫ぶ様は、アゾット剣を握り敵に立ち向か
うかのような迫力を放っていた。目の前に居るのが衛宮士郎であればその剣幕
に恐れをなしたことであろう。

 しかし、その顔が恥ずかしさのあまりに真っ赤になっているので相手が士郎
であっても反撃は容易そうだった。
 さらに凛にとって運が悪いのは、目の前にいるのは桜であること。
 桜は笑いを絶やさず、レードルの背でお好み焼きをくるくると整えながら答
える。

「ですから、私はお好み焼きを作るだけじゃないですね、遠坂先輩」
「うそおっしゃ――………」

 ずびし!とフライ返しを突きつけ断言する――筈だった凛の顔色が悪くなる。
 桜がほとんど妄想エロ語りのように囁いていた言葉を、凛は耳に収めていた。
そのなんとも艶な声色からどう考えても桜が士郎を襲って手込めにする要旨だ
と理解された。

 だが、しかし。
 その語句を一個一個照らし合わせると、お好み焼きを先輩と言っているがお
好み焼きを作るという要旨とその発言は適合し、逸脱していない。いや、逸脱
していそうだけど辛うじて隠喩表現の範囲内、というべきで。

 ひくひくひく、と凛の引きつった口の端が震える。

「衛宮先輩の分のお好み焼きをつくってあげるのに、先輩への思いを込めてた
んです。美味しい料理の秘訣はやっぱり愛情ですよね?」
「……………」
「それに私、衛宮先輩からお好み焼きの作り方を教えて貰ったんです。こうい
う豪放なお料理ってなかなか教わる機会がないんですけど、アルバイトで覚え
たと言ってて要は焼き目と綺麗にひっくり返せるか、味はソース次第だって先
輩が……どうしました?」

 優しくも涼しげに説明する桜を前に、凛はフライ返しを額に当てて唸ってい
た。
 それもフライ返しの刃の角が額に当たってざっくりと切れそうだったが、凛
はそれに気が付いては居ない。それよりも、この目の前にいるマイペースの鉄
壁に苦慮していた。

 妖しい笑みでエロの問わず語りをし、問いつめるとそこをさらっと言い訳す
る。
 いや、いちいちその発言スタイルや発言内容を問いつめていけば凛の鋭い舌
鋒ならば必ずや追い詰めることは出来る。だが、そこに至るまでの道は、この
桜の一種余裕の態度を目にすると、予想される長さにくじけそうになる。

 不落ではないが、著しく難攻。桜の世界がどうも凛が想像できないほどにぬ
っぽりと粘って完成しているのだから手に負えない――

 ふふふ、と桜は笑うと、レードルでお好み焼きをぽんぽんとつつきながら

「あは……先輩、熱いんですか?苦しんですか?でも私が側にいますからね―
―その熱さもきっと快感になるんです。私が昔にそうだったみたいに先輩もき
っと熱く焼き上がってかちかちに固まらせて私のお口の中に先輩の……」
「だーかーらぁぁぁ!その誤解を招くエロトークは止めなさい!桜!士郎が耳
にしたら辛抱堪らなくなって襲われるわよ!」

 凛が膝立ちになり、ふがー!と怒りを爆発させる。
 黒笑いを浮かべてお好み焼きを見つめていた桜が、顔を上げるとなんですか?
と小首を傾げて罪なく目を細めて笑っている。なんどこれを繰り返せばいいの
か、凛の額に冷や汗が浮かんだ。
 どうすれば、桜に勝てるのか。この身に陵辱がないから桜に勝てないのか―


「いや、さっきから遠坂、エロトークとかエロ声とかエロ朗読会とか大声で叫
んでるけど、桜に話す内容としてはそれはちょっとどうかと思うぞ。それに俺
の辛抱がどうこうしたって言うのはなんだ、それ。」

 凛の声を聞きつけたのか、お盆を抱えた士郎がキッチンから現れる。
 トレーナーにエプロンがこの上もなく似合う士郎の姿。お盆を持って洗われ
る様も随分堂に入っている。だがそれは料亭の板前の余裕ではなく、どちらか
といえば主夫といったほうがしっくり来る。

 士郎はむ、と自分に抗議の瞳を注ぐ凛を見つめ返す。とりあえず俺は悪いこ
とはやってないんだ、今はまだ、と言いたそうに口を結ぶ。そして定位置に座
ると話辛そうに切り出す。

「……女の子同士のちょっとドキドキしちゃうかもしれない恥ずかしい会話に
介入するのはマナー違反だと思っていたけども、俺が辛抱堪らなくなって桜を
襲うとかそんなことを思われるのは、まぁその心外で」
「そんなこと無いですよ、衛宮先輩に限って。あ、先に焼き始めてますね」

 桜はにこにこと相好を崩して、現れた士郎を迎える。ただ何となく、凛はこ
の食卓の中で孤立しているような気配を察していた――生憎、味方をしてくれ
そうなセイバーはまだ現れていない。藤ねぇは不在、桜相手に戦うには兵力は
互角かあるいは――

 口を結んでキリキリを奥歯を噛みしめる凛を脇目に、なんか変なこと思い詰
めてるな、程度にあしらう気の士郎がお盆からとん、と黒く濁った小鉢のカッ
プを下ろす。それには刷毛の柄が突き刺さっていた。

 それを卓上に置くと、やおら嬉しそうに士郎は説明し始める。
 楽しそうにその説明を聞く桜と、疑いの姿勢で構える凛の姿は一対で。

「まぁ桜も言ってたけどお好み焼きの肝要はソースでもあるわけだ。オタフク
のお好み焼きソースは確かに美味しいけど、あれは棗椰子の甘い粘りに依ると
ころが大きいからな。敢えてオタフクを避けて中濃トンカツソースとウースター
とトマトケチャップを適度に混合することで、オリジナルブレンドの衛宮流の
お好み焼きソースになるわけだ。で、青のり。芥子マヨネーズも好き好きで…
…藤ねえはこれ無いと怒るんだな」

 とんとん、と瓶を並べていく士郎。そして――

「じゃぁ桜、ご飯とお味噌汁回して……」
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ士郎!それはいったい何のつもり!?」

 何事もなく、まるでいつもの食卓のようにお盆の大半を占めていたご飯とみ
そ汁を渡そうとすると、俄に色めき立った凛から抗議の一声が上がる。
 へ?と意外さを顔に見せる士郎。膝立ちになり、今まさに桜から回ってきた
ご飯茶碗をあたかも恐ろしい魔術の産物のように仰け反り避けようとする。

「なんでさ?ご飯とお味噌汁だ、ちょっと七分搗きを混ぜてみたり、煮干し赤
味噌に木綿豆腐にしてみたりはしたけども、こういうのは気に入らないか」
「そうですよ、遠坂先輩。先輩のお味噌汁は私も折り紙付けちゃいますから。
はい、どうぞ」

 目の前にご飯が置かれ、次にお椀に注がれたみそ汁が凛に差し出される。
 凛はかっと目を見開き、それを見ていた。桜を、桜の手にあるみそ汁を。そ
してすでに自分の前に置かれたご飯と、鉄板の上で湯気を立てるまだ半焼けの
お好み焼きを。


 ――それを全て演算した結果、過ちであると遠坂凛の理性と知識が否定する
――


「だから、ご飯とお味噌汁の出来には文句ないわよ。問題はそれとの組み合わ
せよ」

 凛が指さすのは、鉄板の上の大きなお好み焼きだった。 
 うん、お好み焼きだな、はい、お好み焼きですね……と長閑に頷きあう士郎
と凛。そして二人の瞳がそれがいったい何の問題なのか、と共に質問してくる。
 それに、むわぁぁぁ!と沸き上がるような理不尽な怒りを込めて凛が叫ぶ

「だから、お好み焼きにご飯とお味噌汁はないでしょう、士郎も桜も!」
「いや、これは主菜だ、遠坂。流石にヒロシマ風だと麺が入るから考えるけど
も」

 一体何を主張するやら、と困り果てた体で頭を振る士郎。
 嘘、信じられない――凛はそんな瞳で士郎を見つめる。今鉄板を挟んで、遠
坂凛と衛宮士郎の間に透明な世界の断絶が発生しているような、そんな隔絶の
彼方を見つめる瞳。

「だって、お好み焼きって炭水化物の固まりじゃないの。それにご飯も炭水化
物、そんな炭水化物ばっかりの食卓なんて正しくない。お好み焼きはそれ単体
で食卓を満たすものよ」
「いや、遠坂。誰がなんと言おうとお好み焼きはオカズだ。麺類はご飯分類に
入るが、お好み焼きは肉も野菜もあるし、ご飯扱いは納得できない。なにしろ
ソースを掛ける以上はオカズである資格を満たしている」
「じゃぁ士郎はソースカツ丼はオカズだっていうの!?」
「ソースカツ丼はキャベツの下にご飯があるだろう、それを混淆するのは遠坂
らしくない詭弁だ」
「う……そ、それならもんじゃ焼きで士郎はご飯を食べるの?」
「……喰うんじゃないのか?いや、東京の下町の習慣は知らないけど」

 やおらお好み焼きに大して両者相譲らぬ主張を繰り広げる。
 む、と凛が唸る。士郎も珍しく凛の言葉に一歩も引かない。魔術と人生に関
しては妥協しても、食卓と料理に対しては全く妥協の余地がない。それが士郎
の思想であった。

 そんな対峙を眺め、くすくすと忍び笑いが漏れる。
 それは――桜だった。この討論を聞きながら、得たりとばかりに暗い悦びに
満ちるように。

「衛宮先輩、遠坂先輩をそんなに責めないでください」
「おう桜――でも、これはその、ライフスタイルの根幹に関わる問題だからそ
の」

 士郎は助け船を出す桜に戸惑ったような声を上げる。だが、その桜の微笑み
の陰に潜むモノを士郎は全く感じ取っていないような素振りを見せていた。
 士郎、あなたの目玉は硝子玉かなにかなの――と凛は怒鳴りたかった。今の
桜はシロウが感じているような仲介の意図などあり得ない……

「だって遠坂先輩はいろいろその美しさを保たれるために苦心されてるんです
から……そうですよね?
「な、なによ桜……」
「だっておっしゃってたじゃないですか、胸から太る桜はいいわね、って……
ふふふふ……」

 びしっ、と遠坂凛は凍り付き、そしてひび割れた。

「………………………………………………………」

 桜の口調はその裏に……

 そうですよね先輩ったら、いや姉さんったら食べると私と違ってお腹から太
っちゃうんですよねお好み焼きとご飯を平らげたりしたらもうぶくぶくになっ
ちゃってスカートとか入らなくなって無理したら息が止まりそうになってみた
りしてそうなったら衛宮先輩になんだ遠坂ウチの飯が旨くて太ったのかとか言
われてその繊細な乙女心が粉砕されちゃうんですね姉さんったらそんなにかわ
いこぶりっこしても無駄ですよだって貴女は私の姉さんだから素直になっちゃ
えばいいんです堕ちて身を委ねて私みたいに衛宮先輩にいやらしくおねだりす
ればいいんですようふふふふふふふスキップで歌ってゴーゴー

 ……と。

 無音の高速詠唱がその忍び笑いであり、叩きつけられる魔法は震えるような
喜悦と歪んだ堕ちる愛であって――それに凛は、負けてしまいそうになる。

 勝手に追いつめられる凛、そして無意識の敵意で追いつめる桜、それに気が
付かずぼけっとしている士郎。

 すとん、と凛の背後で物音がした。
 そこに立っていたのは、金糸と鋼糸を結い上げたように颯爽としたセイバー
の姿。援軍来る、そう凛は一も二もなく振り返り、尋ねていた――

「ねぇセイバー?やっぱりあなたはどう思うの?」
「凛?……夕食はお好み焼きですか。ふむ、どうというのはそのご飯とおみそ
汁のことですか?」

 尋ねるセイバーに、残り三人がシンクロして頷く。
 そして――

「もちろん私も頂きます。お好み焼きだけではいささか食卓の彩りに物寂しい」
「な、だろ?セイバー」
「………………………………………………………」

 ――また、イージーミスをやらかした。

 凛は顔を掌で覆って項垂れる。
 だってこの、食いしん坊を味方だと信じて何を問わずもがなの事を聞いてし
まったのか――

「……凛、何か私は間違ったこととを言いましたか?」
「…………なんでもない…………」
「あー、まぁ何だ、そうなら遠坂の分の盛りを少なくしてやろう。その分はセ
イバーと俺が食べればいいんだし、藤ねぇの夜食もあるしな。あ、桜、そろそ
ろいいんじゃないのか?」
「そうですね、はい……さぁ、ひっくり返して上げますね先輩、カチカチの先
輩をぺりぺりはがしちゃって、まだぬるぬるのここを次に硬くしてあげますか
ら、姉さんもいっしょに先輩を……はぁ……」
「だからそのエロ語りをやめぇえええええええぃ!桜!こうなったら実力行使
あるのみよ!うなれガントォォォォ!」

 ばひゅーん!

                                         《おしまい》