「よっ、先輩」

 中庭でしゃがみ込んでいたシエル先輩。
 俺が肩に手をかけると、ずささっと飛びすさった。

「……何か新しい遊び?」

「うー、遠野君……」

 先輩は、顔を真っ赤にして……両手でお尻を隠していて。

「どうしたの? 一体……」

「近寄らないでください!」

 そ、そんな。
 昨夜もたっぷり愛し合ったし、怒られるようなことをした覚えもないのに。

「私、遠野君とは距離を取ることにしたんです」

「へぇ、そりゃ何でまた」

 言いながら、じりじりと間合いをつめる。
 俺が進んだ分だけ、先輩も後退して行っていたが。

「とっ、遠野君がいけないんですよっ! 毎晩毎晩、後ろの方ばっかり……」

「……ああ」

 そうか、そういや前の方では数回イかせるだけで残りは全部後ろだったもん
なぁ。
 俺って後ろの方が好きな人だったんだな、納得。
 ……いやいや、先輩だって後ろの方が感じてる風だし。
 この場合、どっちが悪いってこともないんじゃないか?

「でも先輩だって、別に嫌がってないじゃないか」

「嫌がっても遠野君が無理矢理するんじゃないですかっ!」

「そ、そんなことは……」

 あ、時々ある。
 でもあくまで時々であって、毎回無理矢理しているわけじゃないぞ。

「わかった、オーケー。今日からは後ろはなしにしよう」

「……本当ですか?」

「本当だってば」

 じり、とまた間合いをつめる……が、今度は先輩は距離を取らない。

「嘘なんか吐いたら、おねーさん本気で怒りますよ?」

「はっはっは、俺が嘘吐いたことなんてあったかい?」

 じろり、と眼鏡越しに俺を睨む先輩。
 でも、そんな顔も可愛いと思う。
 そんな先輩の肩を抱くことに成功した俺は、早速今夜も先輩の部屋へ行く旨
を伝えたのだった。






「んっ……やっぱりこういう行為は正しき姿で行うのが1番です」

 じゅぷっ、じゅぷぷっ……。

「その割には、何だか物足りなさそうだけど?」

 俺は腰を動かしながら、十分過ぎるくらいに感じている先輩に意地悪なこと
を言ってみる。
 案の定、先輩は真っ赤な顔をして怒り出した。

「そんなことありません! 現にこうして凄く気持ちいいです……し」

 その時。
 先輩の頭から、ぷしゅうと湯気の立つような音が聞こえた気がした。

「先輩ってえっちなことも平気で言えるんだなぁ」

「いっ、今のは……」

「やーい、えっちなシエルー」

「とっ、遠野君のいぢわるっ……」






 何ラウンドか終えて、一服する。
 先輩はベッドにうつ伏したまま、はぁはぁと荒い息で夢心地。
 その髪を優しくなで付けながら、彼女の身体を眺める俺。

 ……お尻だ。
 お尻が目に入った。
 俺ってそんなに後ろ好きなのか?
 いやだって、今のは自然に目に入っただけだろ!
 ……でも、でもなぁ。

「よっし、次で今日は終わってシャワーでも浴びようぜ」

「ん……はい、わかりました」

 前の余韻が抜け切っていないのか、もそもそっと緩慢な動きの先輩。
 これぞ正しく、好機。

「ていりゃ!」

 がしっ。

 先輩の腰を両手で押さえ、目標ロックオン。

「と……遠野君?」

 今までは約束を守って、先輩が言うところの『正しき姿』でして来たけど。
 もう我慢の限界、こんな可愛いお尻を見て耐えられるかってんだー!

「ごめん、約束の話はちゃいちゃいちゃい」

 ちゃっちゃっと手を振り、ごめんなさい。
 先輩の淫汁で濡れていた俺の欲棒は、今までの束縛から解放され先輩の後ろ
の穴へと猛り狂うように打ち込まれた。

「ひぐっ!?」

「ああっ……やっぱりこれがなくちゃなぁ」

「ひっ、酷い……ちゃんと約束したのに……」

「ごめん、あんまり可愛いんで我慢出来なくなった」

 先輩の声からは、痛そうな雰囲気は伝わって来ない。
 むしろ、いつものように俺の欲棒をぎゅっと締めて来て。

「遠野君の……嘘吐き……」

 感じ始めている。
 そう、先輩はこんな女なんだ。
 俺がこんな女にしたかと思うと、背筋がぞくぞくする。
 シエル先輩は、この女は俺のもの……何と甘美な響きか。

「あっ、あふぅっ……♪」

 自分から腰を振りながら、受ける快感を全て零さず受け止めようとする先輩。
 ……俺は、遠慮なく理性を解放した。






「ふぅ……」

 今日の先輩も最高だったぜ、と言おうとして横を見ると。
 今までぐったりしていたハズの先輩の姿が見当たらない。

「あれ?」

「とーおーのーくーん」

 腹の底から搾り出したようなその声に、俺はびくっと反射的に振り返る。
 そこには。

「約束したのにー!」

「わわっ、第七聖典なんか持ち出すなって! 悪かったって!」

 素っ裸で、最凶の兵器を振り回す先輩。
 傍から見れば滑稽だったかもしれないが、俺にとっては死活問題。

「動くなー!」

 ぽぽぽぽすっ!

 ベッドの上に、小さなナイフが何本も突き刺さる。
 あの裸体のどこから出したのか、微妙に謎だ。
 なんて気楽なことを考える間もなく、俺の影はそのナイフに縫い止められて
いたのだった。

「ふふふ……いつも私が受けている恥辱の大きさ、その身で受けるがいいです」

「……え?」

 がきん。

 破滅のコッキング音が部屋中に響き渡る。
 先輩はにやりと笑いながら、第七聖典の切っ先を……俺の尻に向け。

「ま、まさか……冗談でしょ?」

「はい、冗談です」

 にっこり。

「じゃ、じゃぁ早くそれを下ろしてナイフを……」

「……嘘です」

「あひぃ!」






 ……どっかん。






<続きません>