それは大輪の薔薇の花

                        西紀 貫之  



「秋葉さま、お風呂の用意が出来てますよ。今日はお早めにお入りくださいね」

 読書中に声を掛けられ、もうそんな時間なのかと気がついた。

「ええ、わかったわ。ありがとう琥珀」

 入浴の順番は、私、そして兄さんの順。琥珀と翡翠はその後だ。
 私が入らないと、あとがつかえちゃう。
 髪の毛も長いと、洗うのも乾かすのも手間がかかるのよね。
 しかし、兄さんはよく体を洗ってるのかしら。
 なんかいつもカラスの行水みたいだし。
 いつか一緒に入って洗って差し上げられたらなぁ……。
 ……なに考えてるのかしら、私。さ、お風呂に行っちゃいましょう。


 かぽーん。

「ふう」

 一緒にお風呂、かぁ。
 兄さんをとりあえず私のものにしなきゃ始まらないわよねぇ。いっそのこと、
琥珀に一服盛らせて手篭めにしちゃおうかしら。

「なーんてね。ふふふ」

 そう、きっと、あたしのスレンダーな体に夢中になって……。兄さんは獣の
ように私のサーモンピンクの花弁に包まれたクレバスに黒々とした凶悪なもっ
こりを、こうズドーンと。

「……よ、よく洗っておかなきゃ」

 気は心。別に今日するわけじゃないけどね。
 こしゅこしゅこしゅこしゅこしゅこしゅこしゅこしゅ。
 ああ、しかし。兄さんを私のものにしたら、大浴場を使って痴態に耽るのも
いいかも。
 こしゅこしゅこしゅこしゅこしゅこしゅこしゅこしゅ。
 すこし温めの湯を張って、ちちくりあいながら過ごすの。
 こしゅこにゅくにゅくにゅくにゅくにゅくにゅくにゅ。
 あー、なんか濡れてきちゃった。
 洗いにくいなぁ、もう。私としたことが。
 ボディーソープ泡立てようとしても、なんかヌルヌルするだけでちっとも泡
が立たない。
 もうっ。ビラビラが指にまとわりつくわねえ、まったくもう。ひだの隙間洗
う身にもなってほしいものだわ。

「って……えっ!?」

 ビラビラ?

「って、私のビラビラってそんなにあったっけ!?」

 がばぁ!
 股間に顔を寄せる。
 ……うーん、ちょっと下付だから見えにくいわね。
 引っ張ってみようかしら。
 にょいーんにょーん。

「…………のびてるーぅ!?」

 うう、女淫がにょいーんにょいーんなんてシャレにならないじゃないのよー!
 こんなの見たら、兄さんが何を言うか分かんないじゃない!

『秋葉、なんかこんなにビラビラが……。一人でやりすぎたんじゃないか?』

 なーんて言われた日にはもう首くくるわよ! 兄さんの。
 で、でもまぁ、「花びら」って言うくらいだし、これくらいあったほうがも
っこりに絡み付いて気持ち良いに決まってるわ。そうよ秋葉、ポジティブシン
キーンッ!
 そう思えば、この黒いビラビラもなんか愛しく思えて……。

「って、黒いー!?」

 がびーん。
 浴槽に走り寄って湯船から直接股間にお湯をかけて泡を流し、そのまま片足
を浴槽の淵にかけて覗き込む。

「黒い……」

 ええ、黒いわ。
 我ながらちょっと退くわね、これ。
 引っ張ってみて、ちょっと内側を覗いてみる。うう、腰痛い。
 …………。

「赤黒い」

 じっくり見たのが初めてだったとはいえ、これはかなりショック。
 こんなことなら一人上手は控えておくんだったわ。毎晩五回はやりすぎだっ
たわね。反省。

『淫水焼けしてるなぁ、秋葉』
『我澱淫水、なんちって』

 こ、こんなの兄さんが見たらなんていうか。

『やっぱり初心な翡翠の綺麗な凹のがいいなぁ。秋葉のは食あたりしそうだ』

なーんて言われかねないわぁあああ!

「って、自分で食あたりなんていうなー!」

 ノリ突っ込み。

「でも、翡翠ってそういうことしてなさそうだから、すっごい綺麗なのかも」

 琥珀は真っ黒ね。腹黒いし。

「まさかとは思うけど、凹の綺麗さと処女の雰囲気で翡翠に兄さんを盗られる
かも」

 ってそりゃ冗談じゃないわよ!
 私はお風呂場を飛び出した。


「翡翠ー!」
「きゃああああっ!」

 扉を破って進入した私に、翡翠は身を退いて脅えた。

「あ、秋葉さま!?」
「翡翠」
「は、はい」

 蒼白寸前の翡翠の表情に、沢山の?マークが乱舞している。

「パンツ脱ぎなさい」
「……へ?」
「脱げと言ったら脱げぇぇぇぇ!」
「きゃああああ!」


 四つんばいに組み敷いた翡翠のお尻の肉を掻き分けて、私は愕然とした。

「ぴ、ぴんく色」

 負けた。
 完膚無き敗北よ、翡翠。

「うぇっ……ひっく。秋葉さま、ひどい」

 ひ、ひどいですって!?

「この処女がー!」

 私は翡翠の白いお尻をひっぱたいた。
 ばしーん。

「きゃうっ!」
「凹が綺麗なくせになに言うとるかウキャー!」

 ばしーんばしんばしんばしん!

「あっあっああっあああっ!」
「って、ナニやってるか秋葉ー!」

 瞬間、駆けつけた兄さんに羽交い絞めにさせられ、私は翡翠から引き離された。

「うう、兄さんー」
「全裸でナニやってますか、秋葉!」

 は、そう言えばお風呂場からここまでダッシュでした。

「翡翠もはやくお尻をしまいなさい!」
 翡翠は赤く腫れたお尻を隠そうともせず、不思議と顔を赤らめて小刻みに震えていた。
 ……目覚めちゃったかしら。
 もしかしたら濡れてるかも。あの綺麗な凹が、朝露に光る薔薇のように……
っておい!

「離して兄さーん! 翡翠を殺してあたしも死ぬぅー!」
「だぁあっ」

 必死に私を抑える兄さん。
 ああ、なんかこのまま組み伏せられて強引に犯されてみたい……。

「……あ、秋葉さん?」
「ああ、兄さんもっとー」
「……………………」
 あ、ちょっとあっちの世界に行き過ぎちゃったかしら。兄さん呆れちゃって
るみたい。


「なるほど、そういうことか」

 兄さんの部屋。
 シーツをかぶされて、お説教を受ける私。

「ひっく、だって、だってぇ」
「バカだなぁ秋葉。俺はお前の腐った牡蠣みたいなのが大好きなのさ」
「うう、ホント? ホントなの? 兄さん」
「ああ、本当さ。こっちに来てごらん」

 ぐいっ。

「あ……」

 くにゅくにゅ。

「ああっ」
「ふふふ、絡みつく感触がたまらないよ、秋葉」
「ああ、ビラビラが大きくて良かった」
「ふふふ、それにここは綺麗なピンク色だよ」
「兄さん。ああ兄さん。そこは違うわっ」
「ふふふ、よいではないかよいではないか」
「ああっ。あーれー」 





 ……というところで目が覚めた。

「なんて夢かしら、まったく」

 よく覚えてないけど、なんかすごく下品な夢だったわ。
 …………。
 おもむろに下着をずり下げる私。

「この私が、そんな真っ黒な腐り牡蠣みたいなわけ無いじゃないの」

 でも、なんか確認しなきゃ気が済まなくなってたりして。だって、自分のを
そんなにじっくり見たことないし……。
 あ、手鏡使いましょう。見やすいし。っと、体育すわりですこし足を開いて、と。

「……Vラインも、形も、色だってOKじゃない!」

 ああ、心配して損した。
 こう、指二本で開いてみても……。
 ああ、うっとりするほどのサーモンピンク。

 がちゃ。

「おはよう御座います、秋葉さま」
「あ」

 ……琥珀?

「……………………………………」
「……………………………………」
「……………………………………」
「……………………………………」
「……………………………………」
「………………………………ぷっ」



 どかーん!

「離して兄さん! 琥珀を殺してあたしも死ぬー!」
「な。なにがあった秋葉ー!」
「そんなの言えなーい!」
「うふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ」







 
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