月姫舞踏
                         春日ている
 

「……ぃ様」

「ん〜……」

「お兄様、いい加減に起きてください」

「んー……っはっ!?」

 いつもとは違う目覚ましの声。
 それに気付いた時、遠野志貴は慌てて跳ね起きた。

「あ、秋葉?」

「お兄様ったら……一体、何度起こせば気が済むのですか? 遠野の家の者と
して、しっかりした生活規則で動いていただかないと」

 琥珀さんや翡翠の声ではなく。
 どこかつんけんした、秋葉の声で目覚めを向かえた俺。

「あー……でも今日は日曜だろ? 少しくらい……」

「そのようなわけには参りません。毎日の規則正しい生活、それがきっちりと
した人格を形成するのです」

 俺は目をこすりながら、眼鏡に手を伸ばす。
 このままでは、安らかな眠りを妨げた咎で秋葉の線を切ってしまいそうだ。

「あふー……琥珀さんや翡翠は?」

「あら、昨夜の話を聞いていなかったのですか? 今日は2人は実家に戻って
おります」

「あー、そういや言ってたっけ」

 翡翠の声で起こされるのが日課になっている今は、何故秋葉が俺を起こしに
来たのか疑問である。
 言うところの『規則正しい生活』っても、精々2・3時間ズレるだけ。
 そんなに目くじらを立てることもないだろうに。

「んじゃ、今日は俺と秋葉の2人きりかぁ」

「……ええ、そうなりますね」

 何故か俯いて、顔を赤くしている秋葉。

「じゃ、朝飯でも食うか……その前に着替えるから、秋葉は外に出てくれる?」

「あ、はい」

 秋葉はびくんと反応して、慌てたように部屋の外へ出て行った。






「さて……2人がいないとなると、自分で飯の用意しなきゃな」

「あの、お兄様」

「ん?」

 やる気になっていた俺は、不意の秋葉の声で素に戻る。

「朝食は、私が用意しましたので……」

「お?」

 食堂に入ってみると、確かに朝食が用意されていた。
 しかも2人分。

「……冷めないうちに、と思いまして」

「……そっか、それで無理に起こしたのか」

 こくん、と秋葉は頷く。
 何だよ、結構可愛いところあるじゃん。

 とか思ったのも束の間。
 秋葉と一緒に席に着いたが……メニューを見てげんなりした。

「これ……何?」

「トーストとサラダとコーヒーですが……お気に召しませんでしたか?」

「いや、召すも召さないも」

 真っ黒に焦げた四角い物体。
 緑色の葉っぱが無造作に盛り付けられた皿。
 そして今まで見たことがないくらい異常に真っ黒な液体。

 ……トーストとサラダとコーヒー?

「うう、秋葉の料理はお口に合わないのですね」

 よよよ。

「いや、決してそんなことは」

 秋葉を泣かせるのは俺の本意ではない。
 そんなわけで、半ば無理矢理に目の前の物体を口に放り込み流し込む俺。

「ぷふー」

「あの……如何でしたか?」

「ああ、美味かったよ」

 正直なところ、味わっている暇なんてなかった。
 そんなことをしていたら、本来の味を認識してしまいそうで。

「よかった……家庭科で習っただけでしたから、どうにも不安で」

 お前の学校の家庭科はどんな授業をしているんだ。
 って言うか秋葉は平気な顔して食ってるし。
 見た目はコレだけど実際は美味かったのか……?

「つーか秋葉、今日は妙に俺に親切だな」

「ええ、折角のお休みですし……お兄様にはゆっくりしていただきたいと」

 おお、殊勝な心がけだ。
 お言葉に甘えて、ゆっくりさせてもらうことにしよう。

「ありがとうな、秋葉」

「いえ……いつも意地悪な妹と見られ勝ちですから、たまには名誉挽回の機会
をと」

 うむ、確かに。
 いつも俺をコロスような目で睨むし。
 いつも親の仇みたいな目で睨むし。
 いつも汚いゴミを見るような目で睨むし。

 ……俺って一体……。

「んじゃ俺は部屋に戻って本でも読んでるよ。悪いけど片付けしてくれる?」

「ええ、お任せください。片付けが終わりましたらお兄様の部屋へ参ります」

「お、おう」

 何か今日の秋葉は変だ。
 妙にしおらしい……って言うか素直って言うか。

 これは何かある。
 そう踏んだ俺は、ちょっと警戒しつつ自室へ戻るのだった。






 俺が部屋に戻って、しばらくして。

 こんこん。

「はいな」

「お兄様、秋葉です」

「入っていいよ」

「はい」

 ぎぃ……ばたん。

「もう終わったのか、秋葉は手際がいいんだな」

「いえ、お兄様の分と合わせて皿が4枚にカップ2つでしたから」

 そう言えば確かにそうだ、早くて当然。

「で、秋葉は今日は暇なのか?」

 俺はぽつりと言ってみる。

「何故お分かりで?」

「いや、俺なんかに付き合うって言ったら暇人しかいないかなーと」

「秋葉は決して暇ではありません」

 うむ、確かに。
 お嬢様学校に通っているんだし、日々の勉強も欠かせないだろう。

「んじゃ、何で今日は俺に付き合ってくれてんの?」

 俺は本を閉じて、秋葉に向かい直る。
 すると。

「下心がありますから」

「……はぁ?」

 下心って言っても。
 俺達は実の兄妹ではないとは言え、モラルってやつが邪魔をするではないか。

「お兄様、私のことをどうお思いですか?」

「どうって……いつも口うるさくて、規律に厳しくてちょっと生意気で」

「…………」

 秋葉は唇をぎゅっと噛んだ。

「でも、時々見せる表情が可愛くて……やっぱ俺の妹は秋葉しかいないなぁと」

「…………」

 秋葉は顔を真っ赤にして俯いている。
 さっき噛んだ唇の立場がないではないか。

「秋葉はいい妹だと思うよ、実際。よく気が付くし、手を回すのも早いし」

「……それは、妹としてだけの感情ですか?」

「え?」

 秋葉は、ベッドに寝転がっている俺の隣に来て。

「私は下心ありありですけど……お兄様は、私に対する下心はないのですか?」

「そりゃお前、一応妹だし」

「あくまでも一応です」

 ぎしっ、とベッドが軋む。
 秋葉が、俺に体重をかける。

「私はいつでもお兄様のことを……志貴のことを想っていると言うのに」

「おいおい、冗談はよせよ。俺達は一応兄妹だろ?」

 でも、またぎしっと音を立てて秋葉が距離をつめて来る。

「血は繋がってません……問題は何もないです」

 ぎしっ。

「その言葉は兄弟ってことを否定する言葉だぞ?」

「それはお兄様の考え方です。私にとっては違いますから」

 ぎしぎしっ。

「秋葉……俺だって男なんだから、女の子にそんなに迫られたら何するか」

「ええ、ですから私にとっては望むところです……」

 うぁ、もう完全にスイッチ入ってるよ。

「折角あの2人がいない今、チャンスだとは思いませんか?」

「いや、それはお前にとってだろ」

「ええ、そうとも言います」

 ぎしっ。

「私としては、折角のこのチャンス……存分に生かしたいと思いますが」

「だ、だってお前……俺がその気にならなきゃやることも出来ないぞ?」

「ええ、ですから私がその気にさせれば問題ないでしょう?」

 するり、と秋葉は着衣を脱ぎ始める。
 俺は呆気に取られて、それを止めることも忘れてしまい。

「さぁ……志貴はどうするのですか? 男性の部屋で、下着姿になった女性に
恥をかかせるのですか?」

「いや、恥も何も」

 お前が勝手に脱いだだけじゃん。
 とは言えなくて。
 下着姿の……絵に描いて時間を止めておきたいような、綺麗な秋葉の肢体に
見とれていた。

「……秋葉、結構いい身体してるな」

「嫌ですわ、何を今更」

 胸を強調するように、腕を寄せて。
 その胸元に、自然と俺の目線は吸い込まれて行く。

「もしお兄様に想い人がいても構いません」

「ま、待てよ秋葉」

「待ちません……私は8年も待っていたのですから、これ以上は待てません」

「う」

 それを言われると弱い。

「あのさ、今の俺には好きな人なんていないけどさ」

「では、今この瞬間から私を想い人にしてくださいな」

 秋葉、俺の言うこと聞く耳持たず。

 ぎしっ、と言う音と共に秋葉が俺の身体に覆い被さって来る。
 最早俺には逃れる術は残っていない。

「あ、秋葉……?」

「お兄様……私を女にしてくださいな」

 そして、俺が避ける間もなく口付け。
 局部に続いて敏感な部分、そこを秋葉に占領されてしまって。

「……もしかして、これから秋葉以外の子を好きになるかもしれないんだぞ?」

「ふふふ……そんなことも考えられないくらい、お兄様を虜にしてみせます」

 どこから来るのかわからない自信を持って、秋葉が言う。
 そんな真摯な瞳に、つい俺も引き込まれて。

「言ったな……それじゃ俺もこっからは我慢しないぜ?」

「うふふ、よかった……私には興味を持っていないのかと思っていました」

「まさか……ここまでされて我慢している男は少ないぜ?」

 俺が秋葉の身体を押し返し、逆に自分の身体の下に押し倒すと。
 秋葉は怯えるどころか、微笑みで返して。

「秋葉はずっとお兄様のことを想っていました……それが今成就するのですね」

「悪いが俺は、8年前からこっちお前を妹として以外は見ていない。兄として
悪かったとは思っているがな」

「ええ、それも構いません。ただ、お兄様が私を見てくれさえするのなら……」

 きゅん、と俺の胸が鳴る。
 こんな可愛いことを言う秋葉がどうしようもなく愛しい。
 これは秋葉の何かの術か? それとも……?

「秋葉……」

 言いながら、秋葉のパジャマを脱がせる。
 その秋葉は、怯えるどころかそれを嬉しそうに受け入れて。

「ああ、お兄様……♪」

 血を分けていないと言えど、仮にも兄と妹。
 その妹を、俺は今から手にかけようとしている。
 そんな異常な状況に、俺は興奮していた。

「いいのか? これ以上は本当に洒落じゃ済まないぞ?」

「私は、お兄様のことを洒落で考えたことなどありませんよ……本気で想って、
本気で心配して……本気で愛していました」

 男として、女の子にここまで言わせていいものか。
 俺の自尊心が震えている、こいつを愛せと。

「秋葉……何だかお前のことが愛おしくなって来た」

 口だけの話ではない。
 ここまでされると、本当に秋葉のことだけしか目に入らなくなってしまう。

 ……彼女いない歴に終止符ですか!?
 いや、妹だけど血は繋がってなくてだから彼女と言っても差し障りはないし
でも今まで妹として接して来たから何だか背徳感がいやでもそれがまた何とも
言えなく……。

「はい、存分に愛してください……♪」

 俺は小さく頷くと、着衣を脱ぐ。
 トランクス1枚の姿になると、ベッドに横たわった秋葉の傍に座り。

「……後悔するんなら今のうちだぞ」

「後悔なんてしません。だって、ずっとこうなることを望んでいたのですから」

 ……何て可愛いことを言うんだ、この秋葉め。
 そんなことを言ったら、俺が自分を抑えられないじゃないか。

「じゃ、いただきます」

 秋葉に向かって手を合わせ、一礼する。
 きょとんとしていた秋葉だったが、やがてその意味を理解したらしくて。

「お兄様……私は食べ物ではないですよ?」

「いや、だってすこぶるご馳走じゃないか」

 言いながら、秋葉のブラを取りにかかる。
 フロントホックのブラは、思ったより簡単にホックを外せた。
 もしかしたら俺に気をつかって、外しやすいフロントホックを選んだのかも
しれない。

 ふるるん。

 秋葉の胸が、ささやかに揺れる。

「秋葉……胸、可愛いな」

「もう、お兄様ったら……私より胸の方が可愛いのですか?」

「いや、秋葉の胸だからこそ可愛いと思ったんだぞ?」

 そう言うと、秋葉は両手で自分の胸を隠した。

「お兄様の、えっち」

「どっちがだよ」

 どくん、と胸が高鳴る。
 衝動に任せて、秋葉の両腕を押し退ける。
 すると、またふるんと秋葉の胸が揺れる。

「こんな可愛い胸しやがって……こうしてやるっ」

 言うなり、俺は目の前の乳首に吸い付く。
 既に高まっていたのか、秋葉の乳首は十分な固さを帯びていて。
 舌で転がすように舐めると、頭の中でころころと言う擬音が鳴った。

「んっ……」

 下唇を噛み締め、声を押し殺す秋葉。
 そっちがそのつもりなら、と声を出させる為に俺の舌は更に激しく動く。
 義理とは言え、妹を抱いていると言う感覚が俺の心を刺激しているのだろう。

 いつもの秋葉の、あの表情を崩したい。
 ……秋葉の、この身体を堪能したい。

 ころころ、ころころ。

 ふにふに、ふにふに。

 舌触り、手触りが微妙に心地いい。このままそれだけを続けていたいと言う
気持ちになって来る。

 だが、そういうわけにも行くまい。
 やるべき時は、やることをやらなければいけないのだ。

「秋葉、ちょっと腰浮かせて」

 びくん、と秋葉の身体が震える。
 遂にこの時が来たか、とでも言うかのように。
 だが、秋葉は素直に腰を浮かせた。その間に、俺は秋葉のパンティをするり
と脱がせて。

 右足を抜き、左足にくるんと巻いて通す。
 これなら後で探す必要もないし、見た目にも可愛らしい。実に効率的である。

「やっ……」

 両手で秘部を隠そうとする秋葉。
 今更ここまで来ておいて、何をやっているのだろう。
 
「手どけないと……無理矢理しちゃうぞ?」

「そ、それはちょっと」

 慌てて手を退ける秋葉。
 可愛らしいピンク色の『女の子』が、昼間の眩しい陽射しを浴びて淫らに俺
の目前に晒される。
 秋葉は両手で顔を覆ってしまい、その表情は覗えない。が……きっと、顔を
真っ赤にして消え入りたいとか思っているのだろう。

「秋葉、『頭隠して汁隠さず』だぞ」

 秋葉の秘部に触れると、くちゅっと音がした。
 身体を強張らせていた秋葉が、びくんと揺れる。

「身体の力抜いて……俺に任せろよ」

「は、はい……」

 すっ、と秋葉の全身から力が抜ける。
 これは言われてもなかなか出来ることではない。さすがは秋葉の精神力。

 既にじんわりとパンティに染みを作っていたそこは、俺の指をすんなり受け
入れた。

「秋葉……お前、えっちだな」

「ああっ、言わないでください」

 とは言っても、もう濡れているのが事実。
 俺が胸を愛撫しただけでここまで濡れたとは言わせない。

 ぴちゃっ。

 わざと音を立てて、秋葉の秘部を舐め立てる。
 俺の舌が動く度に、秋葉の身体も一緒になってびくんびくんと動く。
 これは結構面白い。

「ああっ、お兄様っ……」

「志貴でいいよ」

 言って、また舐める。
 秋葉のそこからは、既にシーツに滴り落ちるくらいの愛液が流れ出していた。

「秋葉……お前、こんなにびしょびしょにして……お漏らしみたいだな」

「そんな……」

 相変わらず両手で顔を隠していて。
 そんなに俺に顔を見られたくないのか。
 そう思ったら、どうしても秋葉の顔が見たくなってしまった。

 片手で秋葉の秘部をいぢりながら、もう一方の手で秋葉の手を掴む。
 その腕には既に力が入っておらず、すんなりと動いた。

「……秋葉、泣いてるのか?」

 秋葉の双眸からは、涙の筋が頬を伝っていた。

 俺が怖いのか、それともこうなってしまったことを後悔しているのか。
 その答えがわからないままでいると。

「い、いえ……続けてください。これは嬉し涙ですから」

 何だか納得が行かないが、今は秋葉の言葉を信じるしかない。

「いいんだな?」

 俺がそう訊くと、こくりと頷いた。
 俺は秋葉の両の脚の間に割って入り。

「行くぞ……」

 のるん。

「うぁっ……」

 俺のモノを入れる際、秋葉が少し腰をずらしたが。
 思ったよりすんなり秋葉の膣中に入ることが出来た。
 途中でちょっとした抵抗があった気がするが、それは些細なことだ。
 何せ俺は、今まで感じたことのない感覚を味わうことで懸命だった。

「秋葉、すげえ熱い……」

「お、お兄様のも熱いです……」

 その表情は、痛みを堪えているようで。
 でも、どこか嬉しそうで。

 俺は秋葉と繋がったまま、彼女の身体を抱きしめた。

「秋葉……」

 俺の言葉は、それだけで。
 次の瞬間には、自然と腰を動かしていた。

 貪るような、乱暴な動き。
 その度に、秋葉が悲鳴にも似た声を上げる。

「う、あうっ」

 勿論俺の耳には届かない。
 そんなことより、秋葉を蹂躙することに夢中になっていた。

「はぁ、はぁ……」

 思ったよりすんなり入ったくせに、秋葉の締め付けはきつい。
 それに耐えることもせず。俺はただ、腰を動かす獣と化していた。

「あき、は」

 最期の瞬間、秋葉の膣中からそれを抜いたのは最後に残っていた一片の理性
だったかもしれない。
 秋葉の白い肌の上に、その肌より更に白い粘液が迸った。






 次の日。
 琥珀さんと翡翠が帰って来て、屋敷には一応平穏な日々が戻った。
 だけど、もう俺達には平穏な日々は戻って来ない。

「お兄様、秋葉は今日も参りました……」

「お、おう」

 秋葉の表情には、恥辱と期待が入り混じっていて。 
 そして今日も、俺は秋葉の身体をかき抱くのであった。






<続きません>