Please, kiss me, more...



 暗い部屋の中、寄り添う影がゆっくりとほどける。
 しかし完全には離れない。
 甘い恋人同士の逢瀬。

「……ねぇ志貴」
 白いハイネックのサマーセーターを身につけた女性――輝く金髪の下にいつもならば、その美貌にそぐわない、でもらしい――コケティッシュな笑みを浮かべているのだが、今は違う。
 少し照れたようにはにかみ、頬をそめている。

「なんだ、アルクェイド」

俺の言葉を聞いて、てへへへ、と笑うアルクェイド。

「私ね、志貴のキス、好き、だよ」

 ――なにを言い出すんだ、突然。
でも、アルクェイドの口からそんな言葉がでると、思わず照れてしまう。
 そんな俺を見て、さらに照れるアルクェイド。
 両手を俺の首にかけ、俺の額にこつんと自分の額を当てる。
 それを受け止めるように俺はアルクェイドの腰に手を回す。
「……まず志貴ってさ。唇がふれた後、下唇を噛むじゃない。そして舌先でなぞって」

 ――おい、俺ってそんなことしているのか?
キスについて語り出すアルクェイドに心の中で突っ込む俺。
「それでね、志貴。そうすると舌がわたしの中に入ってくるの。歯をねぶってね。歯茎をなでて、それからわたしの舌に触れてくるの」
アルクェイドは下を向きながら語り続ける。
「舌がふれると、わたしはびくん、となって」

――それは確かに、そうだな。
 今までの経験からして、アルクェイドは舌を絡めようとすると、体を硬直させる。
「でね、舌を絡めて、わたしの舌を吸うのよ――そうするとほんわかした気分になるの――」
下目使いで、俺を見る。
 少し照れて、下目使いのアルクェイドを見ると、俺の心臓の鼓動も高まる。
 その朱い瞳は濡れて――。
 その頬は上気して――。
 誘うように、舌がチロチロと見えて――。
 なんていうか色っぽい。

 思わず、ゴクリ、と喉が鳴った。

「そしてね、キスが終わって目を開けると、そこに志貴の顔があるの」
そんな潤んだ朱い瞳で俺の瞳をのぞき込む。
 人ではないその朱い瞳は、とても潤んでいて、そこには俺の顔だけが写っていた。 「――あぁ志貴とキスしているんだって実感すると、胸がきゅんとなるの」
 そしてそっと囁く。

「ほら」

そういうとアルクェイドは腰にまわっている俺の手をほどき、そして自分の胸にあてる。
 肉感のある胸。それにそっと押しつけられる。
「聞こえる、志貴――私の心臓の音」
 手は熱く、触れている胸も熱く、自分の荒い息がイヤに耳につく。
 何度もいじり、こねまわした乳房。ボリュームのあるそれは、少しも垂れたところがなく、張りがある。

「――こんなにドキドキしている」

 アルクェイドの鼓動なのかそれとも自分の鼓動なのか――それともその両方なのか、俺にはわからなかった。

「――好きだよ、志貴」

 そして彼女からキスしてくる。
 俺はキスしながら、舌で歯を撫でる。
 その特徴的な犬歯――吸血鬼の乱杭歯を舐める。
 アルクェイドが可愛い。
彼女が吸血鬼のお姫様だということは知っている。
この舌でふれるこの歯もその証拠の一つだ。
 でも、俺には関係なかった。

 アルクェイドが純白のイメージなのは、書かれていないノートだからだと気づいたのは、ロアと戦った後。
 あの時、ロアは一つの綴られた十七編の手記だった。
 もし過去や記憶、思い出と呼ばれるものが、ロアのような手記や日記やノートだというのならば――アルクェイドは名前を書くどころか包装ラップも外されてない、おろしたてのノートだった。
 だから、俺はアルクェイドというノートに色々書き込む。
 この世界にたくさん楽しいことがあるよって。
 世界には意味がない楽しいこと、意味がある楽しいこと、それらが混在して、万華鏡のようにキラキラと輝いていて、しっちゃかめっちゃかなくせに人を魅了してやまない輝きを放っていることを――それらをひとつでも多くアルクェイドに教えたかった。
 そしてアルクェイドが楽しいと思うこと、好きだと思うことを色々とやってやりたかった。もしそれが「幸せ」と呼ばれるものならば、幸せをアルクェイドにあげたい。
 それが俺の嘘偽りのない本心であった。

 そっと首筋にキスする。
 ほのかな石鹸の香りにまじって、男性を痺れさせ、くすぐる女の香り――アルクェイドの香りがした。
 それは男を誘う淫蕩な牝の匂い。
興奮した頭で考えながら、首筋を舐めた。
「――それも、好き」
アルクェイドは浮かされたような声で囁く。
そして胸を揉む。
「――これは、どう?」
「うん、それも」
アルクェイドの乳首を指先で探す。
 それはすでにしこっていた。
俺はイジワルに囁く。
「――ここでする?」
わざと言う。
かぁっとなるアルクェイド。耳たぶまで赤くて可愛い。
「し、志貴――ベットに行こうよ」
 でも返事をせず、耳たぶを甘噛みする。
 きゃう、と悲鳴を上げるアルクェイド。
その耳に舌をはわせる。
「……ダメだって……志貴……」
その声から抵抗感がなくなっていく。
「これも好きだろ」
耳を舐めて、再び噛む。
もう一方の手をお尻にあてる。
そのまぁるい弾力のあるおしりをなでる。
逃げようと腰が動く。――が、逃がさない。
 俺はそのまま固定して、アルクェイドを弄ぶ。
「……ベットに……志貴」
 でもその声は甘く――
 か細く震えていて――
確かにアルクェイドの身体能力はすごい。
夜ならば俺の直死の魔眼でも、線どころか点さえみえない。
不死身の真祖。
吸血鬼のお姫様。
なのに
それなのに。
こんなに細くて、
こんな弱くて、
こんなに小さい。
こんなに可愛い。
こんなにも愛しい。
 こんなにも――。

 セーターをたぐしあげて、ブラジャーの上から胸を揉む。
 その間、キスを、舌を絡めるのはやめない。
 とぎれがちの吐息をはきながら、アルクェイドは甘く啼く。
ブラジャーで押さえられていても、その胸は大きくたわわで。
 ブラジャーの上から思わずこね回す。

「もぅ……痛いよ、志貴ぃ」

文句を言う声も甘く、俺の脳髄を刺激する。
サーマーセーターは乱れ、でも胸の形ははっきりと解って。

俺はそのままアルクェイドの背に手を回し、ブラジャーのフックを外そうとする。
その行為も、もどかしい。
しかも手探りだから、やりづらい。でも衝動に駆られた俺は、急いでそれを外そうと努力していた。

「こういうのも好き」
アルクェイドはとろんとした目つきで囁く。
「――好き?」
フックを外しながら聞き返す。
「ん――下着を……志貴に外して貰うって……志貴がわたしを求めているんだなって……」
「そうか、好きか――」
 ブラジャーのフックが外れないので、ズらす。
そして手を当てる。
「――やん、志貴ぃ」
でもその声はあまり嫌がっていなくて。
「ブラジャーがゆがむよ」
下着を心配する声に苦笑し、
アルクェイドはすっと離れる。
「もぅ服だって……こんなに皺だらけになっちゃって……志貴のエッチ」
ぼそぼそという。
こちらに背を向けてセーターを脱ぎ、ブラジャーを外し始める。

「じゃあ」
アルクェイドの背後から近づくと、下に手を伸ばす。
 スカートに手を入れて、そっとスキャンティに触れる。

「ダメ、志貴」
振り向こうとするが、俺の指が触れた瞬間――からだが硬直する。

「これも好きか」

スキャンティは湿っていた。
スキャンティの上からそっと撫で回す。
濡れたスキャンティは陰毛もわかるぐらい、ぴったりと張り付いていた。

 深いく熱いため息をつくアルクェイド。
「あぁ……志貴、好きだよ」
 上からそっとなで回すが、布のせいで直接ふれることはできない。その曖昧な感覚に、アルクェイドはもどかしげに腰を動かす。

「――志貴」

 切なそうに潤んだ瞳で、アルクェイドがこちらを伺う。
 体がかすかに震えていて、とても愛らしい。

「なんだ」
でもスキャンティの上から撫でるのはやめない。
「イヤよ……そんな――」
「なにが?」
ワザととぼけて、アルクェイドをいじめる。

 指はスキャンティの布きれのため、周辺部をなでるだけでその奥に、アルクェイドが触れて欲しいところに触れることはできない。
 アルクェイドの花心に触れると、あ、と声を漏らす。

「ねぇ……志貴ぃ」
でも俺は気にせずにアルクェイドをじらす。
 言うまでやめないつもりだった。
体がふるふると震えて、体をこちらに預けてくる。

「ねぇ……志貴……志貴ぃ」
ただただ俺の名前をつぶやくばかり。
アルクェイドはそっと、俺のものにスボンの上から触れてくる。
そして撫でる。そんなに強くない。
スボン越しのため刺激はないといってもいい。
でもその潤んだ瞳と上気した頬、甘く切なそうな吐息で、俺は興奮していた。
「ねぇ……志貴……」
そのままアルクェイドはチャックをおろし、ごそごそと俺のをまさぐる。
そして俺のを探り当てると、そっと触れる。
「こんなにして……」
アルクェイドは、たぶん、反撃を試みようとしているのだろう。
でもその声は震えていて、艶があり、潤んでいた。
「アルクェイドこそ――」
そして俺はぬれぼそったスキャンティの横からようやく手を入れる。
 その濡れぼそった感触がたまらない。
 中に入れたとたん、アルクェイドは息をのみ、ぶるっと震える。
 アルクェイドは俺のを掴み、そしてゆっくりとしごき始める。
 そっと指を入れてみる。
とたん花びらが指にまとわりつく。
「あ、あ、あ」
アルクェイドが声を漏らす。
 でもいれるのはほんの先だけ。一本だけ。
「……やん……志貴……」
もっともっととその目は、その指は、その声は、せがんでいた。
でも入れない。入れてやらない。
「なぁ、これ――好き?」
そっと囁く。
アルクェイドは、こくんと頷く。
「好き……好きだから……ねぇ」
「じゃあ」
指をもう少し奥まで入れてあげる。
指に粘膜がからみ、きゅきゅっと締め付けてくる。
「あぁん、志貴ぃ」
アルクェイドは涙目となり、ぼぉっとこちらを見る。
アルクェイドの手も俺をしごき続けている。

「―― ! 」
突然の刺激に俺も声を漏らしそうになった。
アルクェイドの手はそのまま下の陰嚢へと伸ばし、やわやわともみ始めていた。
 突然の強い刺激に、腰のところが痺れる。
「――なぁ、アルクェイド」
返事はない。ただ甘く吐く吐息のみ――。
「お前の握っているそれ、好きか?」
「――う、うん、好きだよ……志貴、大好きだよ……」
そういうと、強くしごきはじめる。
「……これが動くのが……わたしの中に入るのが……奥まで突かれるのは……」
熱に浮かされたかのように、しゃべりだす。
「……これが熱くて……硬くて……入れて、挿れて、お願い……志貴っ!」

 俺はたまらず、アルクェイドをそのまま床に押し倒すと、いきり立ったそれをアルクェイドの中に挿入した。
…………
……




「もー志貴ったら、ケダモノー」
アルクェイドはYシャツ一枚だけ着込み、しわくちゃにそして愛液と汗と体液で汚れてしまった服をまとめながら、ぷんすか怒っている。
 ――いや、まずかったか。
つい反省する。
 アルクェイドのかわいらしさに、ついなんかやってしまった。
 しかしケダモノって――いつの間にかそういう言葉も覚えていたんだな、とふと感心したり。
「志貴ったら、もー」
アルクェイドは琥珀さんの、めっ、のポーズをマネする。
 アルクェイドというノートのページは、ゆっくりといろんな雑記で埋まっていっているようだ。でも書かれている内容を想像してみると、それはまるでクレヨンで書いた幼稚園児のラクガキのように思えて――。
 それがなぜか、アルクェイドに――こんなに綺麗で美人だというのに――
 よく似合っていて。
 とても可愛らしくて。
それがなんだか微笑ましくて。
  ――だからつい笑ってしまった。

「あー、もぅ」
アルクェイドはこちらにずんずんとやってくる。
「わたしは怒っているんだからねー」
口でぷんぷん、と擬音まで言いだす始末――。

 そしてアルクェイドは俺に耳打ちする。
それはまるでお姫様というよりも、小さな子供のように。

   でもね。そういう志貴も好きだよ。

そしてはにかむ。

   志貴がすること、みんな大好きだよ
   でも、わたしが一番好きなのは――キスなの

それはまるで、可愛らしい秘密を打ち上げる子供のように

   だから――だから、もっとキスしてね――志貴。

そしてアルクェイドと唇を重ねた。

あとがき

 ようやく書けました。18禁です。えぇ胸をはってもいいくらい18禁です。
 しかし18禁が書けた、といって胸をはるわたしってばいったい……。

 内容はMoonGazerの 阿羅本さんの「アルクにはソフトSMがよく似合う」で、ふーんそうかー、じゃあそれで頑張ってみようかな。
 と思い立って書いてみました。
 ソフトSMというか、言葉責めというか……まぁそのあたりになったかな、とかなんとか……ごにょこにょ(笑)、とという感じです

 これは実はもうひとつ別の話があります。たった1日だけアップした、本来の#009です。
もっている人は貴重ですよー(笑)<いやまだ正式公開前でもっている人とか書くわたしって……をひをひ。
 もし持っているひとがいるとしたら、それと今回の話を比べてください。そうすると瑞香のクセ、文体がよぉっくわかります。
 そしてそのときの後書きに書かれていたことは、あぁこういうことか、と納得してください。というか納得しろ、とあえて命令系(笑)

 とにかく、瑞香らしい、アルクェイドのラブラブを書けたのは、とても嬉しいことです。
 ラブラブは書けるのですが、18禁には苦しんでしまって……。
もっと書きたいんですけどね。

 次は何を書くのやら。
 まだシエル先輩も、翡翠さんも、琥珀さんも、書いておりません。
 主要登場ヒロインを書きたいですね。
 そうすることで、その人となりを瑞香なりにつかめるような気がして。
 SSを書くにしても、やはり人となりがつかめてこそ、というのが、瑞香にはありまして。
 やはり精進は常日頃、ということなのでしょうか。
 不精な瑞香にはとても耳の痛いことなのですが。

 ――ともかく。
 また別のSSで。
24th. March. 2002
#009+


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