このSSは巴祭(三人祭り)の出展作です。

[ Moon Gazer ]という、阿羅本さんのサイトにある阿羅本さん作SS
   Curatio vulneris gravior vulnere saepe fuit.
   Dum fata sinunt vivite laeti.
   Nec possum tecum vivere, nec sine te.
   Forsan et haec olim meminisse iuvabit
通称ショタ志貴シリーズの私的番外編です。


















 一子は自分の目を疑った。
 雑踏の中。
 駅前の通り。
 つまらない映画とつまらない流行歌とつまらないファッションに包まれた喧噪。
 そんな中で、白昼夢を見てしまった。
 それは昔、自分の家に遊びに来ていた時の姿。
 かわいい、半ズボン姿の愛らしい姿。
 心臓が跳ねる。
 目を思わずこする。
 夢だ。夢に違いない。
 一子はそう考える。自分の思いや嗜好に基づいたちょっとあぶない想像を、つい夢想してしまったのだ。
 そう思った。
 そして見る。
 やはり――いた。
 そこに昔から知っていて、育ってしまって少し残念だったような、でもよかったような、そんな複雑な心理を抱かせた半ズボンがよく似合う男の子。
 夢? それとも幻?
 そう考えながらも、口が動いていた。

「……有……間……?」

 とたんその少年が吃驚した表情を浮かべて一子の方を向いた。
 その愛らしい瞳に、白いすべすべな肌に、思わずうっとりしてしまうほど。
 一子は見とれてしまった。
 夢想していた時と同じ、いやそれ以上の華奢な可愛らしい少年姿。
 なにかがこみ上げてきた。

「……イチゴ……さん……」

 その少年の幻想であるべき姿は、はっきりと乾一子のあだ名を昔のまま呼んだ……。









Homo homini lupus.   人間にとって人間は、狼である









 一子は思わずかけより、少年の肩をつかむ。
 そして上から下まで何度も確認する。視認する。
 どうみても、有間、だった。

「……痛いよ、イチゴさん」

 少し怯えるような、そそる声にようやく掴んでいた肩から手を離す。

「あのぅ志貴さん。こちらの方は?」

 横にいる着物を着た赤毛の少女が笑みを浮かべながら尋ねてくる。

「あ、琥珀さん。こちらイチゴ……じゃなくて乾一子さん。有彦のお姉さんだよ」
「あぁ」
「一子さん。こちらは琥珀さんで遠野家で家事一般をやってもらっているんだ」
「……あぁ」
「はじめまして」
「はじめまして」

 奇妙に歪んだ圧力をもった沈黙。
 一子の瞳は志貴がなぜこうなったのか、という疑問に満ちあふれていて。
 琥珀はどう反応してよいのか、志貴の言葉を待っていて。
 そして志貴本人はどう説明してよいものか、思案していた。
 なんていうか恥ずかしい。知り合いと会いたくなくて屋敷に篭もっていたのに、とある理由で外へ連れ出されたのだ。
 しかし外にいかないと、このまま翡翠や琥珀の格好をしなくてはならない。なんていうか――それはイヤだった。だから琥珀とともにこうして外へ出かけたのだが。
 誰にも会わないように、会いませんように、と神仏に祈りながら来たというのに、こうもあっさりと見つかると、神仏に対して何か一言いってやりたくなる気持ちだった。
 カチンとジッポーが鳴る。それにびくんとは可能する志貴。一子はタバコに火をつける。チリチリとやけていく。そして吐く。紫煙がたなびき、消えていく。
 そして一言、

「今日はどうしたんだい?」

すると琥珀がしゃべりだす。

「ああ、今日は志貴さんの服を買いに来まして。こうなってしまった――」

 ここで一旦、視線は幼くなった志貴に移る。それに合わせて一子の目も動き、ふむと納得したかのように頷く。

「……志貴さんに合う男の子の服が屋敷にはないんですよ。ないと不便ですので……」

 そう。いくらこればっかりはどうしようもなかった。小さいころの服なんてなかった。あるのはほんの少しだけ。着替えが絶対的に不足していた。3、4着の服を回して着ればいいな、なんて志貴は思っていたが、まわりの女性3名はそうは考えていなかった。遠野家の長男が、わたしの志貴様が、わたしが管理しているのに使い回して着るだなんて、ゆるせない。
 なぜ女性はこうもファッションというものに拘るのか志貴にはわからなかった。
 そんなのはいいよ、面倒だし、と最初は断っていたが、しかし一致団結した三人の強制力が伴った言葉に志貴は折れた。

「兄さん、このままですと、服がなくなってしまいます」
「志貴様、そうなりますと……」
「右の赤いヒラヒラがいいですか? それとも左の青のリボンですか?」

 と可愛らしい少女趣味まるだしの服を取り出して迫ってきたのである。
 このままだと、琥珀や翡翠、あるいは秋葉の小さいころの服を着て、女装して日々過ごす羽目になる。というか3人ともそれが目的っぽくて、目が怖かった。
 カメラを用意しましょう姉さん、イヤですよ翡翠ちゃん、今はデジカメですよ。琥珀、きちんと全員にわたるように焼き増しするのよ、という言葉の前に志貴は折れるしかなかった。
 観念して外に、服を買いに出かけたのだ。

「でもなんでもいいよって言っているのに琥珀さんったら」

 志貴は抗議する。服を買ってくるのに自分がいちいち出かける必要はないと、文句をいう。ぶちぶち文句をいわないと、今、知り合いに見られたことに対して恥ずかしくて、顔から火が噴き出しそうなほどだった。
 それをやんわりと、

「でも志貴さんの今の体型にあった服となると試着とか重要ですし。それにあう服がすぐに見つかるという保証もありませんし。そうじゃないとフリフリの男の服をわざわざ特注しますよ。それに今育ち盛りですし。わたしも翡翠ちゃんもお人形遊びは大好きなんですよ。着せ替え人形は最高ですね。だから、こうして買い物しているわけですよ」

 そしてあはっとした笑み。
 途中なんの説明にもならない説明で、なおかつ、今、どうして志貴がこの姿になったのかという説明は一切なかったが、納得したように頷く一子。
 それでいいのか、と突っ込みたくなるが、一子には説明はいらなかった。
 その幼くなった志貴の姿を、この目でしっかりと見れたのだから、この際細かいことはどうでも良い。
 つぶらな瞳。ぷにぷにのほっぺ。やんちゃのさかりの体。すらりとした白い脚。華奢な体つき。
 すべてにおいて、一子にとって決定的だった。これ以上ないほど。

「なぁ有間」

 こんな姿を見られて恥ずかしいのか視線を合わそうとしない姿がまたそそった。
 思わず声がうわずりそうになっていた。

「……じゃあ、有彦のお古はどうだ?」
「お古、ですか?」

 琥珀は首をかしげる。
 すると機先を制するように、志貴は口を開く。

「あ、それでいいよ。どうせいつかは元に戻るんだから、改めて買うなんてもったいないよ」

 金持ちなのに貧乏性が心まで刻まれている小市民な志貴らしい言葉。
 でも秋葉様がなんていうか、と反論しようとする琥珀に対して、さらに雄弁をふるう。

「それに今から何件もお店をまわったら、夕食に間に合わないだろ? 今日は秋葉が何にも用事がない日で早く戻ってくるんだろう?」
「ですけど……」
「秋葉は朝からみんなで食事が出来ることを楽しみにしているんだから。うん、それに俺も腕によりかけたものを食べたいし。なんなら翡翠も一緒に4名で食事でもしないかい?」

 参りました、といった表情で頷く。

「わかりました。では乾宅へ……」
「あ、いいよ。有彦んとこに行くのならお金はいらないし、道も知っているし……」

 そういってチラリと一子さんの方を見る。
 その上目遣いの視線がたまらない。
 一子は上の空のまま、頷いた。

「有間はうちにちょくちょく来ていたからな」
「でも有彦は……?」

 すこし心配そうにこちらを伺う、その怯えたような眼差しに心臓が射抜かれる思いだった。
 なんとか声をふるわさずに一子はしゃべり続ける。でも視線は愛らしい志貴のその姿から微動だにしない。

「今、あいつは『いつものこと』をしている」

 とたん志貴は破顔する。その眩しそうな笑みに、くらり、とくる。

「『いつものこと』ってなんですか、志貴さん?」
「あぁ有彦はふらりと平日の格安ツアーで旅に出かけるクセというか趣味があって、今はいないんだって」
「というわけで目撃者はわたし一人で済ませられるぞ」

 一子はいつものウィンクしながら答える。
 その一人で済ませられるという言葉に引かれた志貴は大きく頷く。
 その様子はまるで大きく尻尾をふる子犬のようで、一子は体にぞくぞくしたものが走るのを感じていた。

「……わかりました」

 ため息をつきながら、琥珀は引き下がる。

「ではこれから献立の材料を買いに行きますので、志貴さん、門限までには戻ってきて下さいね」
「あぁ」

 志貴は大きく頷く。
 ここでうんって言わなきゃなぁいけないよな、と一子は頭の片隅でそんな不埒なことを考えていた。


◇     ◇     ◇


 志貴が乾家に入ると、大きく安堵のため息をついた。
 いつ誰かに見られるかと心配していたためである。
 その怯えた様子が、とても一子の心をくすぐる。
 呼吸が荒くなるのがわかった。
 なんていうか、いけないことをしている気分。
 その背徳的な不道徳的な感覚は、一子の心を妖しく昂揚させる。
 後ろで家の扉を閉める。
 不用心だからな、と思いながらも、きちんとチェインまでかけるのは――どうしてだろうか?

「ぜんぜん変わってないな」

 そういって志貴は一子の方をむいて、無防備に笑う。
 その笑みにコロリといきそうになる。
 そんな一子にかまわず志貴はあたりをぐるりと見回す。
 昔見たことのある光景。昔から知っていた構図に、思わずうれしくなってしまう。
 はっと思い出して、奥の戸棚にいく。そしてあけて上をみると、文字が書かれている。
 シキ
 昔、陣地取りごっこをした名残。気づかれないように、そっと戸棚の中の一番下の天井に書いた。
 もう忘れてしまったもの。
 もう二度と思い出すことがないはずだったもの。
 そしてもう二度と目にすることがないはずだったもの。
 それを再び見ることができて、つい志貴は弾んだ声をあげる。
 そんな無防備で無邪気な姿に、一子はうずうずしていた。
 話題をそらさないと襲ってしまいそうだった。
 この華奢で可愛らしい男の子を手込めにしてしまいそう。

「な、なぁ……有間」
「なに、イチゴさん」

 でも話題なんてなかった。なんとか別のことに考えを移そうとして声をかけただけで、意味があるわけではない。
 頭を高速に回転させながら――それでも視線は志貴の姿をずっと捉えっぱなしだった――つい思いつきを口にする。

「眼鏡がないな」
「うん」

 志貴は笑う。

「この体になったら目もよくなっちゃって……今のところ、眼鏡はいらないんだ」
「……そうか」

 眼鏡をかけていない志貴の姿に違和感を感じて仕方がなかった。
 上目遣いに眼鏡、そして半ズボンに白い足。それが一子が夢想していた有間そのものだった。
 だから何か足りない。
 どうしたの? と覗き込んでくる。
 その可愛らしい事といったら。
 そのまま抱きしめて口づけの雨を降らせたいほど。ほおずりしてしまいたくなる。
 つい息苦しさを感じて、胸元のボタンをひとつ外す。

「あ、あのぅ……イチゴさん」
「……あぁ……こっちだ……」

 そうして二階の物置へと案内する。
 開けると、カビ臭い澱んだ臭いと防虫剤の独特の息が詰まる臭い。
 うっそうとあるタンスをひっくりがえして、ようやく目的の古着を見つけだす。

「ほら」
「ありがとう」

 にこっと笑う。
 つい一子は顔を背ける。
 本当に襲いたくなってしまった。
 秘蔵の小学校での運動会の写真――有彦と志貴が写っているのを思い出す。まさにそのまま。顔を背けたまま、

「有彦の部屋で試着してみろ」
「うん!」

 そして走っていく。
 まるで本当に小学生のようだった。
 息をもらす。粘ついていた。暑苦しい。
 そして、ふと、思いついて、一子は自分への部屋に取りに行った。


◇     ◇     ◇


「入るよ」

 そういって一子は扉をあける。
 目の前の光景に心奪われた。
 志貴がその小学生の姿のまま、少しだぶついた服を着ているのだ。

「ちょっと大きいな?」

 長袖からちょこっと出ている小さい手。襟元にうずまっているハニーフェイス。
 その姿に一瞬、息がとまる。

「どうしたの、イチゴさん?」
「あ……いや」

 心臓の音が激しくて聞こえてしまいそうだ。そして自分が抱く邪な欲望を覗かれてしまっているかのよう。顔が火照ってくる。

「有間、これちょっとかけてみろ」

 そういってだしたのは、黒縁の眼鏡だった。

「……これって」
「眼鏡だ」

 そして一子は頭を掻く。

「眼鏡がないと、有間が有間じゃないような気がして……」

 声が小さくなって、最後は聞こえないほど。
 でも志貴はにっこりとわらって、うん、といって受け取って、かける。

「どう?」

 そういって志貴は笑う。
 可愛らしいハニーフェイスに大きい眼鏡。ずりさがってかけているというよりもかかっているだけ。そしてにぱっと笑う男の子。
 心臓が――とまった。
 理性も――とまった。
 そのまま、押し倒す。

「イチゴさんっ!」

 志貴は驚いて目をまん丸くしている。それさえもこんなに一子の心を惑わせるほど、可愛らしい。
 そんな驚いて可愛らしい志貴の唇を奪う。
 息が重なる。
 志貴の吐く息ひとつのがさないつもりで唇を重ねる。
 ねぶり、唾液を送る。
 志貴の唇から唾液がもれ、その唇がてらてらと輝いていやらしい。
 何度もその唇をついばむ。
 柔らかい男の子の唇。まだ第二次性徴前の可愛らしい唇。
 たまらない。
 熱く震える吐息が心地よい。
 志貴の体が反応してしている。
 一子の舌が志貴のを探し出すと、絡め始める。
 絡めて、すすり、舐める。
 一子さんの舌が口蓋にはいずり回り、微量な快感が走る。
 ぬちゃりとした甘い唾液とぬめぬめとした舌が志貴の口を蹂躙していく。
 粘つき、どろりとした粘着質な音だけが支配する。
 一子は志貴の鼓動が感じられた。激しく打っていた。もしかしたらわたしのかもしれない、と思いながらも、その鼓動に熱さを感じていた。
 志貴はその熱く柔らかい一子の体につつまれて、息さえもできない。
 若返って作り直された体は敏感なのか、これだけで反応してしまう。
 全身を微量の電気が流れる。
 ビリビリと流れ、圧力がじわりじわりと高まっていく。
 逃げ場がない。
 口からもらそうにも、そこには一子のとろけるような唇がふさぎ、タバコの香りとともに快感を送り込んでくる。
 とろんとした目で一子さんを見る。
 潤んだ瞳。
 切なくて、愛おしくて、どうしようもなくて、そして弾けてしまった時の瞳。
 その震える瞳がそっと閉じられる。
 と同時に舌がまた口の中を犯していく。
 ぬるぬるとした舌が、タバコ臭い一子さんの唾液が、とろけるようなぷるぷるの唇が、志貴から理性をうばっていく。
 そしてゆっくりと下半身に熱が集まってくる。

「……舌を出して……」

 一子の声。それに反応して舌を出す。それに絡みつく一子のそれ。
 ざらざらとした舌の表面が舌の裏を表を嬲る。
 舌につたわって堕ちてくる唾液を志貴は一生懸命飲み込んでいく。
 タバコ臭いのに、いがらっぽいはずなのに、なんて――甘い。
 唾液を飲み込むたびに、皮膚の下になにかがはいずりまわるようなムズ痒い感じがする。
 たまらない。
 息を吐いて楽になりたい。
 なのに。
 一子の甘い唾液がゆるさない。
 一子のざらついた舌がゆるさない。
 一子の女の香りがゆるさない。
 ただ――震えるだけ。
 身悶えするような、爛れた快感の虜になるだけだった。
 皮膚の下をはいずり回るこの官能が、ゆっくりと熱をもって、志貴を嬲る。
 体を縮め込んで耐えたいというのに、一子はそれを許さない。
 唇が再び重ねられ、舌は飲み込まれる。
 一子の口の中で舌が蹂躙される。
 こんなにも蹂躙されてしまう。
 すごくて、手足がつっぱってしまう。
 びくん、びくんと、一子の口の中で舌が嬲られるたびに反応してしまう。
 そんな反応に、一子はうっとりしていた。
 長い間夢想していた、この有間の、この志貴の、この男の子の唇を味わっているという快感。
 頭がぼおっとしてしまう。
 ただ口づけをしているだけだというのに。
 ただ舌をなぶっているだけだというのに。
 ただ下に押し倒しているだけだというのに。
 この少年の体の柔らかさが。
 この少年の体の臭いが。
 この少年の体の味が。
 この少年の。
 この有間の。
 この。
 それだけで身悶えてしまう。
 腰の奥の深く眠っていた一子の性癖があふれてきてしまう。
 可愛らしい男の子。
 それを組み敷いてイタズラしている。
 そうイタズラしている。
 淫行条例にひっかかってしまう内容。
 でも。
 一子の理性はとろけてしまっていた。
 この可愛らしい有間という肉体にとろけてしまって、霧散してしまい。
 この体に溺れてしまっていた。
 口づけだけで志貴の体の自由を奪うと、あわただしく自分のワイシャツのボタンを外す。
 引きちぎってしまいたくなる。
 ブラがフロントホックでよかったな、なんて思いながら、それも外す。
 外気が冷たくて火照った躰に心地よい。
 突然のことに志貴はわからなかった。
 なぜ突然一子に襲われるのか。
 有彦のお姉さん。すぼらですちゃらかで横柄で――でも可愛らしい一子さん。
 それに今の俺には秋葉がいる。
 あのつっけんどんしているくせに本当は可愛らしい秋葉。秋葉を守ると誓った自分。
 なのにこうして、女の人に組み敷かれていて。
 甘く切ないわななきに痺れてしまう。
 
「……だ、駄目だよ……イチゴさ……ん……」

 潤ませながら哀願する。
 その姿に、一子は女が刺激される。ズキリと電撃が走る。
 とろりとあそこがしめってくるのが感じられた。
 志貴が快楽に顔を赤らめながら、感じながら首をふりながら、息も絶え絶えにしゃべるその姿はとてもそそって。
 つい――その首すじに舌をはわせる。
 つて――上着をたくしあげる。
 感じているのかぷるぷると震えている。
 顔どころか耳も首も真っ赤だ。
 白い肌が羞恥と官能で朱色に染まって、ゾクゾクしてしまう。
 肉が薄い、華奢な子供の体が見え始める。浮いたあばら骨が一子の官能の火を点す。
 そこに舌を這わせ始める。汗をかいたためかしょっぱい。そして暖かい。
 チロチロとした舌が志貴の体をよじらせる。
 神経がひとつひとつそそり立つ感じ。鳥肌が立つような、粟立つような快感に志貴は襲われていた。
 一子は志貴の乳首をそっと吸う。唇で甘噛みしながら、舌先で嬲る。
 すでに乳首は勃っていた。初々しい肌色に近い乳首を笑いながら、少し強めに噛む。
 あぁ! と志貴の口から震えた声が漏れる。
 その声に一子は身震いするほどの悦楽を感じる。
 左手で服をたくしたまま、右手で志貴の股間に手を伸ばす。
 熱くなっていた。
 半ズボンの上からでもわかる固く熱いモノをそっと撫でる。
 志貴の体がわななく。
 その反応が愉しくて、もっとこね回す。
 ズボンの上からゆっくりこすり、高ぶらせていく。
 一子が視線を下にずらすと、半ズボンから見えるすらりとした白い太股がまぶしい。そんな志貴の膝が小刻みに震えていた。

「……駄目だよ……イチゴ……さん……」

 震えたか細い声で名前を、その顔で、その声で呼ばれるたびに、一子に熱いうねりが発生していた。
 女の肉の奥深くでゆっくりとふつふつとわいてくるような――うねり。

「……どうして欲しい……有間……」

 深い愉悦。いやらしく昏い悦び。
 うち震え、痺れるようなオンナの喜悦に、一子は興奮していた。

「……もっといじってほしいのか……有間……」

 一子の声もうわずっていて掠れて聞きづらい。でも熱くねっとりとした響き。
 志貴は顔を真っ赤にさせて、荒い息をして、いやいやしていた。
 半開きの唇がふるふると震えていて、なんて可愛らしい、と一子はついとろけた頭で考えてしまう。
 何度でも、幾度でも、その唇を、その体を、その肉体を、蹂躙してしまいたくなる。
 志貴がそのように誘っているように見えてしまう。
 だから――。

「――っ!」

 志貴の体がまた震える。
 半ズボンの裾から手をいれて、ブリーブの上から志貴のを握りしめる。
 その熱さと逞しさに一子は震えてしまう。
 小さいくせに、子供のくせに、熱くて柔らかく弾力があって、そして硬い。この不可思議な感触を手のひらで充分に味わう。こね回し、こすり上げ、指先で嬲る。
 志貴はただ、あぁ、あぁ、と声を漏らすのみ。
 熱く脈打つそれを握りしめ、こするたびに志貴の口から甘美なとろけるような声がもれる。
 そしてブリーブの中にも手をいれて、それをじかにさわる。
 先の皮がぐちゃぐちゃで、腺液でぬるぬるだった。

「有間……ぬるぬるだぞ……」

 先走りの腺液を塗りたくりながら、志貴のそれをつよくこする。
 鈴口に人差し指をあて、こする。
 くびれたところを指でなぞる。
 裏の筋に指を這わせる。
 それだけで、志貴はうめいていた。泣きそうだった。感じきって、涙を浮かべそう。目が赤く潤んでいて――そんな志貴の姿を見て、一子はますます高ぶっていく。
 体の奥底からのうねりはヤケドするようなとろみとなって、背筋を幾度も駆け抜ける。
 その震える声が。
 その赤く潤んだ瞳が。
 そのわななく唇が。
 そのつよい男の臭いが。
 その赤くそまったすべすべした肌が。
 そのガクガクしている膝が。
 こんなにも、一子をとろけさせていく。
 にぎっている股間から爛れた牡の匂いが漂ってきて、たまらない。
 ぬちゃぬちゃとした腺液の味がしてしまう。まだ含んでもいないというのに、口の中いっぱいに志貴の味が、あのすこしえぐみがある男の味がひろがって、その男の臭いが鼻をぬけるような感じがする。
 たまらなかった。
 志貴を嬲りながらも、一子も嬲られているようだった。
 熱く震えた声で、目の前の男の子を責め立てる。

「……こんなにも感じているのか……有間は……」
「……駄目……でちゃうよ……でちゃうよ……一子さん……」

 哀願する志貴を無視してさらにこすり上げる。

「何が……でるんだ……有間……」

 興奮しきって真っ赤になりながらも、一子は尋ねる。
 言わせたくて。
 嬲りたくて。

「……あぁ……でちゃうよ……」

 太股を内股にしてぎゅっと耐えるような仕草をする。
 そんな志貴を見ながら乳首を弄び、股間をいじる。

「……何がでるというんだ……有間?」
「……精液が……精液がでちゃうよ……」

 その言葉をきいて淫らな笑みをにんまりと浮かべる。
 淫婦の笑み。
 爛れた愉悦に微笑を浮かべる女の笑み。

「……じゃあ、さっさと出せ……ほら……」

 強くこする。
 緩急をつけて嬲っていた指の動きは、ただ絶頂へと導くために、激しくこすり上げる。

「……ほら……」

 志貴の口からはただ嗚咽のみが漏れる。
 ぬちゃぬちゃと半ズボンの中からしめった淫音が聞こえる。


「……ほら……」

 ひざがガクガクいって耐えられそうもない。
 体をよじって官能から逃れようとするが、一子はさらに責め立てる。
 さらに強く、さらに激しく。ただ――淫らに。
 一子の荒い息と志貴の荒い息が重なっていく。つまっていく。
 こんなにもつまってしまって、志貴は息さえできない。

「……ほら!」

 ぐいっと、鈴口をえぐられた途端、志貴の腰が前へ突き出される。
 指先に、手のひらに熱いどろりとした粘液。
 かかったところが、やけどしそうなほど熱い。
 志貴の口から絶頂の喘ぎ。
 びくんびくんと出している逸物をさらにこすり上げる。
 痛いぐらいの悦楽に、志貴はうめく。
 でもやめない。
 搾り取るように、一子は嬲り続ける。
 手のぬるぬるとした感触を、熱さを、味わうようにこすりあげる。
 青臭い臭いがひろがり、半ズボンがゆっくりと染みとでき、ひろがっていく。
 その染みに一子は口づけする。
 青臭い牡の匂いを胸いっぱいに吸い込む。
 いやらしい臭いに一子はくらくらしていた。
 そしてえぐい味。
 その爛れた味にうっとりとしてしまう。
 それを堪能すると、頭が真っ白になる。
 頭が真っ白なまま、ズボンの上から舌を這わせ、口づけし、志貴のを充分に味わう。
 まだ震えている志貴のをまだ握りしめ、こする。
 どろどろとした熱い感触がたまらなく淫らにさせた。
 乱れて苦しくて啼く志貴の痴態が、たまらなくて。
 一子の手はとまらない。
 粘つきどろりとした白濁液を出した男根になすりつけるよう。

「……いっぱい出したな……」

 そうして半ズボンからゆっくりと手を引き抜く。
 どろどろだった。
 白濁した粘液がこびりつき、その柔らかな女の手を汚していた。
 それを丹念に舐めとる。
 まるで甘いものを舐め取るかのような、そんな淫らな姿に、志貴の体はまた反応していた。
 今達したばかりだというのに、腰骨の奥から熱いものがたぎってきた。
 感じきって顔を赤くして涙目になっている少年。
 半開きの口からもれる荒い息。
 ひの唇から少しもれた涎。
 汗をかいて、きらきらと輝く肌。
 光をあびて産毛が輝いている。
 目はとろんとしていて。
 体はすこし小刻みに、そして、時折びくんと大きく震えている。
 服は乱れ、胸ははだけ、ズボンからは濃い性臭が漂い、なんて淫猥な痴態。
 そんな志貴の姿を見ると、一子の爛れきった神経に幾度も熱い波が走り抜けていく。
 一子はねっとりと笑う。
 なんともいえない淫蕩な笑み。
 そんな蕩けるような笑みをうかべたまま、目の前の少年の体を抱きしめる。
 力いっぱい。
 やさしく。
 そして耳元に囁く。

「よかった……か……」

 その言葉に少年はびくんと反応する。ふるふると震える涙目をこちらに向ける。

「ひどいよ……一子さん……」

 官能の火照りがまだ治まらない、か細い声。
 なんてたまらない、甘い声。
 だきしめたまま、起こす。

「……ひどい……か……?」

 少年の抗議がなにか遠いところから聞こえてくるよう。
 その抗議さえも、一子をただ高ぶらせるのみ。
 そして志貴の半ズボンを脱がせる。
 何を行われているのかわからない呆けた視線。
 その視線に、無垢なる者を汚していく背徳感にゾクゾクするものを感じながら、粘ついた声で話しかける。

「ああ……ひどいかも……な……」

 そして一子は自分も座り込み、あぐらをかく。背後から抱きしめるように、その上に華奢な少年をのせる。
 半ズボンはベルトがなかったため簡単にはずれる。
 精液でねちゃちゃに汚れたブリーブの上からなでる。
 喘ぎ声が一子の耳に心地よい。
 一子の神経を悦楽に浸らせてしまう。
 そのいやいやと首をふるか弱さ。
 身悶えするはかなさ。
 嬲って、苛めて、泣かせてやりたい。いくらでも啼かせたい。
 ふと思いついてタバコに火をつける。
 そしてそれを志貴の可憐な唇に押しつける。
 半開きの唇に押し込まれ、つい反応してくわえる。
 とたん、体を激しくまさぐる。
 そのほっそりとした指先で、すべすべした肌を、蹂躙していく。
 少年は頬を朱色に染めながら、喘ごうとする。

「タバコが落ちたら……火傷……するぞ?」

 その声に反応してタバコを必死に噛む。
 喘ぎたいのに喘げず、涙目で耐えていた。
 そのかわいさといったら。
 ふるふると震えるまつげ、鼻からもれる荒々しい息。なにかを耐えているような必死な顔。
 こんな肉の悦びで惚けきった顔を見ているだけで、一子は達しそうだった。
 そのまま、耳を舐める。

「――っ!」

 志貴は切なそうに、狂おしそうに顔を歪める。
 そして両手をまわして、股間をまさぐり始めた。
 体に見合った大きさのそれ。
 それを両手でにぎる。
 腺液でてらてらしたソレを弄ぶ。いじる。
 皮かむり気味のそれを右手でむいて、左手で下の袋をいじくる。
 指先で、えらをなぞり、粘膜をこすり、鈴口をえぐり、袋をにぎり、玉をもむ。
 その都度、体を官能にねじらせる少年。
 口にはその童顔に不釣り合いなタバコ。
 それを噛んで必死に堪えている。
 でもその顔は快感でふるえて、耐えられない様子。
 一子も耐えられない。
 こんな可愛らしくいやらしく身悶えする少年の痴態をみて、脳髄はとろけてしまう。
 もっと求めて、はしたなく指を動かす。
 その熱い陰茎をこすり、時にはとがって硬い乳首をつまみ、舌で汗をかいてしょっぱい首筋をなめ、少年の青々しい体臭を胸一杯に吸い込む。
 ぎゅっと玉をにぎると、動きがとまる。だからさらに強くにぎる。すると腰をもじもじと動かす。それを全身で押さえ込みながら、陰茎の先のえらばったところを指先でつっと撫でる。
 痛いぐらい感じていて、志貴は涙していた。
 神経接続が完全にできあがったばかりの若い体には激しすぎる官能。
 その甘美な悦楽を一子の指先が的確に見つけだす。
 撫でられるだけで、こすられるだけで、握られるだけで。
 ただ――それだけだというのに志貴の体はぐにゃんぐにゃんになってしまう。
 体どころか頭さえ、理性さえもぐにゃんぐにゃんになってしまって、残るのはただ快感を求めてむせび泣くいやらしい牡のみ。
 とろとろとあぶられる官能の火に、神経がチリチリとやかれ、爛れていく。
 体がつっぱるかと思えば、力が抜け、躰の奥のとても深いところから狂おしいほどなにかが突き上げてくる。衝動にかられて、声をあがってしまいそうになる。
 なのにタバコが邪魔して、させてくれない。
 漏れるのはぐもった声と荒い息だけ。
 フィルターを噛みきるような強さで噛みしめ、声を殺す。
 だから、押し上げてくる何かは躰に溜まっていく。
 溜まって、澱んで、さらに躰を熱く、淫らに焦がしていく。
 身をよじっても、躰をふるわせても、啼いても、それはゆるしてくれない。
 ただ――淫らに、淫蕩に、いやらしく、この志貴の躰を貪っていく。貪られて、狂ってしまいそうになる。
 一子の指先は的確に快感を引き出すが、射精まで導かない。じわりじわりと弄ぶだけ。
 だから躰の奥の圧力が高まっていくだけ。
 どこにも逃げ場はない。
 甘いくせに、痛くて狂おしい――この悦楽。
 志貴は涙するしかなかった。
 一子の躰に微弱な電流が流れ始める。
 もうあそこが濡れているのがわかった。
 すでにショーツは濡れ、もしかしたら厚手のジーンズに浸みているかも知れない。
 いやらしい女の蜜でぬれてしまっているかも。――いや濡れてしまっている。こんなにも濡れているのだから。
 いじりたい、と思うが、それ以上に志貴をなぶりたかった。
 志貴が喘ぎ、躰をそらし、涙するたびに、皮膚の下をざわざわといやに刺々しい電流が流れていく。このいやらしい電流は一子の心をも、体をも支配し、この行為に没頭させる。
 もっと見たい。
 もっと感じたい。
 もっと嗅ぎたい。
 もっと触れたい。
 もっと味わいたい。
 この夢想していた少年の躰を存分に。
 そう思えば思うほど、どんどん浸っていく。溺れるぐらい。
 いっそ溺れてしまえ。
 自堕落で刹那的な快楽主義である彼女は自嘲の笑みをうかべ、志貴のやわらかいおしりへと手を伸ばす。
 ドキドキする。
 ここは――まだいじったこともないし、いじられたこともない。
 禁断の背徳感が彼女を高ぶらせていく。
 そして汗ばみ、つるんとした尻の肉をわって、菊門にふれる。
 びくんとひときわ大きく少年の躰が震える。怯えている。怯えて――啼いている。
 チラリとこちらを見る目がそそる。
 そして指をゆっくりと沈めていく。
 ぎゅっとしまってなかなか入らないが、それでもそこをいじり、指を沈めていく。

 入ってくる!

 志貴の躰は反応する。
 ゆっくりと犯されていく感じ。
 じわじわと、じわじわと、何かが入ってくる。
 ムズ痒いような、苦しいような、痛いような、そんな感じ。
 そしておしりが熱い。
 まるでその指が熱をもっているよう。
 熱くてたまらない。
 やめて、と視線をおくるが、一子はただ笑うだけ。
 はいってくる。
 イヤなのに――どんどん熱く、狂おしい圧力が高まってくる。
 あそこがさらに硬く大きくなる。
 それをいじる一子の笑い声に羞恥心がかきたてられる。
 でもそれも性悦の高ぶりに消えてしまう。
 さらに熱く硬くなったそれをもてあそばれる。
 腺液はどんどんあふれ、びくんびくんと跳ねてしまう。
 赤黒くなって、全身の血液が、神経がそこに集まったよう。
 もうそれしか考えられない。
 それを丹念にいじられる。こすられる。こんなに。こんなにも。
 5本の指すべてをつかって、志貴の性感をさらに深く目覚めさせていく。
 こんなに感じるなんて――でもまだそれは底ではない。
 さらに深く、淫らな感性を一子の白い指は引き出してくる。
 そしてうしろに入ってくる。
 指だからほんのちょっとのはずなのに、胃まで入ってきたよう。
 そのまま口からでてしまうよう。
 まるでくわえているタバコが、出てきた一子の指のように感じられてしまう。
 躰の奥を、肉体のすべてを女性に支配されている感覚。

「……有間……すごい……」

 一子の指はほんの第一関節が入り込んだだけ。
   だというのに、志貴のそこは飲み込むようにぐいぐいと動き、熱くしめつけてくる。
 しめつけられるたびに指先から甘い刺激が駆け抜ける。
 そしてゆっくりと出し入れする。
 入れるたびに。
 出すたびに。
 そして右手で前の男をこするたびに。
 いじるたびに。
 どんどん分泌液がこぼれてくる。
 いやらしく、青い少年の臭い。
 むんとするぐらい。
 こんなにこぼれてくる。
 そのたびに自分のもこぼれているのがかわる。
 とろとろになって熟れているあそこをめちゃくちゃにこねまわしたい。
 つい腰を動かし、太股をこすりあわせるようにする。
 でも腰を動かすたびに、躰を動かすたびに、志貴が泣き叫び、たまらない。
 そのすべすべしたなだらかなせなかに乳首がこすれて気持ちいい。
 熱い肌で一子の乳房が弄ばれているよう。
 こすれて――痛くて――気持ちいい。
 勃っているのが、とんがっているのがわかる。熱くはりつめていて、胸がふくらんでいるよう。
 だから、こうしてこすりつけてしまう。
 こんなにも若い男の子の肌でこすって、こすられて、こすれて――たまらない。
 そして腺液でぬれた手を志貴の口へもっていく。
 青臭い液で濡れた手でタバコを掴み、灰皿に捨てる。
 とたん、大きな喘ぎ声。
 少年の、ソプラノの喘ぎ。
 淫らに啼く。
 わななきの声。
 こんなにも啼いて、叫び声にも似た声をあげる。
 ゾクゾクする。
 悪寒めいたそれが全身を駆け抜けて、狂おしいほど。
 昏い愉悦がかけぬけて、こんなにもわなないてしまう。
 だから――さらにいじる。さらにもてあそび、こね、いじくりまわす。
 前も、後ろも。
 関係ない。
 ただただ、躰がやらしく動く。
 ただただ、指が淫らに動く。
 いじって、ひろげて、こすって、さする。
 震えるような声をどんどん高ぶらせるために。
 志貴の甘い少年の声が甘美な愉悦に声をあげるのを楽しむために。

「いく……のか……有間……」

 返事はない。
 ただ涙目でこちらをじっと見るだけ。濡れぼそった子犬のような目。
 すごい。こんなにも、狂わせる目。

「いくのなら……いく、といえ……」

 そして指をぐくっといれる。今度は第二関節まで。
 熱くぬるぬるした腸。おしりが一子の指をしめてくる。
 そしてえらと裏だけをこする。
 あ、あ、と耐えられそうもない声。

「いく……いちゃう……」
「……いくのか……」
「……いく……いく、いく、いくっ!」

 声のトーンはどんどんあがっていく。
 苦しい。
 息ができない。
 熱くて、苦しくて、高まって、高ぶって。
 肉体がバラバラになってしまう感じ。
 なのに、ジンジンとしたかゆみと疼きが快感となって駆け抜けて。
 すごい。
 汗がとびちる。
 すべすべの若い肌が真っ赤に火照って、とても綺麗で。とても淫らで。
 そのほっそりとした指先がひくつき、足の甲がのび、びくんと震わせて。
 ぐもったようなしめった音。
 はぁはぁという荒い息。
 どちらのものがわからない。
 涙がこぼれるほど強く、激しく。
 強まる牡の匂いに牝の匂い。
 オトコとオンナのいやらしくも爛れた香り。
 口の中はからからでひからびて、乾ききっていて。
 その舌は淫らにうごき、首筋を、鎖骨を、耳を、顔を、唇をぬらぬらと汚し。
 ずり落ちかけた眼鏡から覗ける、感じきって惚けたつぶらな瞳。
 とめられなかった。
 とめようもなかった。
 とめる気もなかった。
 ただやらしい絶頂へと向けて、一子と志貴は絡み合っていた。
 あんなに荒れていた呼吸がひとつになる。
 昂揚しきった吐息が、重なり合って、さらに興奮を呼び起こす。
 
「……いく……」

 鳴き声でささやく。
 うかされたような声。
 その口を一子は唇でふさぐ。
 ねじって唇を甘くせがむ志貴のを、激しく奪う。
 こぼれる唾液を舌で舐め、半分ひらいた口にいれて、犯す。
 前も、後ろも、口も、すべて犯す。
 こんなにも蹂躙してしまう。
 唇でふさいだのに、志貴の声が漏れる。

「……だめ。でちゃうよ……」
「……たくさん……出せ……」

 熱病にかかつたような熱く粘ついた声で、志貴を促す。
 舌でもっと汚し、前をもっと犯し、後ろをもっと陵辱した。
 そしてさらに指をふかく、とうとう根本までいれた時。

「っ、ああああ、い、いく。いっちゃうっ!」

 ひときわ声が高まり、幼い躰がびくんと震える。
 腰が突き出され、白い粘液が飛び散る。
 音がしそうなほど、強く、濃く、たっぷりと。
 おしりに入れた指がぐいぐいと飲まれていく。
 きつく締め上げられて、食いちぎられそうなほど。
 一子の躰にも甘美なものが駆け抜ける。
 脱力し、ほうけた志貴のその顔が。
 そのうっとりとした、性悦にひたったとろんしたいやらしい顔が。
 口からながれる一筋の涎が。
 強い、青臭い性臭が。
 一子を襲う。
 うねりとなって、皮膚の下をはいずり回っていた悦楽が、そのままいっきにあそこに集まって。
 太股が濡れるぐらい、濡らしていた。
 痺れる。
 苦しい。
 こんなに動いてしまう。
 こんなに濡れてしまう。
 強い刺激。
 抱きしめている少年からのつよい刺激。
 躰が跳ねてしまう。
 そして反対に縮こまってしまう。
 真っ白になる。
 志貴だけになっていく。
 志貴という名の昏い愉悦。
 一子は感じきって、さらに志貴の躰を躰をつかってぎゅっと抱きしめる。
 指はそれでもなお志貴をいじっていた。
 おしりを犯し、精液を出している男根を最後の一滴までしぼりだすように、こすりつづけている。
 あそこからとろりとした愛液が、どんどんこぼれていくのを感じながら、白い精液がまき散らしされていくのを、感じきった頭で眺めていた。


◇     ◇     ◇


 タバコに火をつける。
 たなびく紫煙。
 ニコチンが心地よい。

 悪いこと、したかな? 

 ふと殊勝な心がけでチラリと寝てしまった幼い少年の志貴を横目で見る。
 男と女のいやらしい臭いが充満していた。
 乱れ爛れきった室内。
 白い粘液がとびちっていてすごい有様。
 はぁっと眠くてあくびをする。

 でも可愛かったな。

 一子は志貴の無防備な寝顔をみて、そう思った。
 あの涙をたたえた瞳。喘ぎ声。朱色にそまった頬。感じてしまって震えるその幼い体。
 たまらなかった。
 そして堪能した。堪能しきった。
 幼いそれを挿入したわけではないが、一子にはもう満腹だった。
 風邪をひかないように、志貴にちらばった服を上からかけてやると、そっとそのほほに口づけする。

 でも、いけないのは有間だからな。

 一子は可愛らしく寝ている志貴にむかって心の中でつぶやく。

 こんなに無防備で可愛らしいから。
 わたしみたいな人間の前に、その姿は犯罪的だからな。

 自分の行ったことを棚に上げて、そっと囁く。

「そんなかわいい姿を他の人に見せたら、駄目、だからな――有間」

 そういいながらも、目覚めたら絶望的な顔をしてうろたえる可愛らしい志貴をどうやって宥めながら、その姿態を鑑賞しようか、とそんな不埒なことを、一子は眠い頭で考え続けていた。
 そしてころんと横になって、やさしい寝息をたてはじめた。
 幼い志貴の躰を抱き枕のように、抱きかかえながら。



あとがき


 なぜか90,000hit御礼SSになってしまいました(笑)

 本当はこのショタ志貴18禁は月姫蒼香さんと三澤羽居さんにむかれちゃう(笑)話を考えていました。けど、これって浅上+凸とかぶってしまうのでどうしましょう? と考えていますと、さすが阿羅本さん。「一子さんでゴー」と囁いてくれました(笑)
 もう加速装置です。ターボです。過給器です。一気にフルブーストでかいちゃいました(笑)
こんなにもあっさりとかけていいのでしょうか? と思うぐらい。
 一子さんがショタだったら、ということで、かーなーりー、ヤバヤバな性格にしてしまって、一子さんファンの方、ごめんなさい。
 ショタとかって、マニアックでいいとわたしは思っています。というかマニア。それにこだわりがない駄目でしょう。
 というわけで壊れた、腐女子ライクな一子さんにしました。
 どうだったでしょうか?
 しにをさんの橙子さんが素晴らしくて、橙子さんほど苛めなくて、でもショタとして苛めるというバランスに注意した……つもりです(笑)
 そして。
 そーにゅーはなしでもいいよね? ね? いいよね?
 やらしい、というのは雰囲気ですから。行為ではなく、雰囲気。わたしはそう思っています。
 だから――いいですよね?

 ではまた別のSSでお会いしましょうね。

8th. November. 2002 #72

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