姫はじめられ?

 遠野志貴は動けなかった――悦楽が躰をこんなにも束縛するものだとは、知らなかった。
 だから、ベットの上で大の字になって倒れているしかなくて。
 躰にはしる淫楽にただ溺れるだけで。
 理由は簡単で。
 アルクェイドが、シエルが、秋葉が、翡翠が、琥珀が、5名かがりで志貴を嬲っているのだ。
 ただ――喘ぐことしか、志貴にはゆるされていなかった。


 アルクェイドは志貴の右脇からその薄桃色の唇で男をチロチロと舐めていた。
 てらてらと唾液をこすりつけて、先の粘膜をそぐように舌を這わせている。
 舌が淫らな音をたてるたびに、痺れるような鈍痛が走る。
 左脇には秋葉が座り、そして竿に口づけしていた。その長い黒髪を掻き上げながら、一心不乱に甘噛みしている。疼きににたものが躰を痺れさせていた。
 シエルは眼鏡をかけたまま、乳首を転がしている。
 強く弱く、甘くなめ回し、口の中で舌で転がされている。
 ただ吐息しか漏らせない。
 そして大胆なのは、翡翠と琥珀だった。
 志貴の足を大きく開かせておいて、ふたりは志貴の股間に座り込み、顔をうずめ陰嚢をしゃぶっていた。
 しわくちゃなそれを頬張り、ふたりで玉をひとつひとつ口の中でもごもごさせているのだ。
 違う温度でふたつのそれを転がされ、強く吸われる。
 翡翠はおずおずとだが熱心に、琥珀はチロチロと強弱をつけて。
 腰の奥から何かが這い上がってくる。
 誰かの舌がはいずり回り、唇が動くたびに甘い電気が駆け抜けた。

 アルクェイドはちらりと秋葉を盗み見ると、亀頭を秋葉の方へとふる。
 粘膜のそれは唾液でぬらぬらになっていて、イヤらしく輝いていた。
 秋葉は竿から口をはなすとうっとりしたようにそれを見つめ、口に含む。
 今までとは別の温かい粘膜に包まれ、体に震えが走る。

「ねー志貴、いいでしょう。こういうのも」

 そういうとアルクェイドは竿に舌を這わせる。裏筋をチロチロとゆっくりと撫でていく。
 ゆっくりとゆっくりと、いやらしく、チロチロと。
 鮮やかな色をした舌が、丹念に撫でていく。
 秋葉の唾液を舐めつくし、自分のだけにしてしまうかのよう。

「兄さんのここ、震えていますよ」

 秋葉はいったん口を離して熱くねっとりとした吐息を吐く。
 唇は淫らに濡れぼそり、また先を口に含む。
 大きく動かさず、ただ吸う。
 吸いながら、舌先で鈴口を嬲る。
 ぐにぐにと舌が入り込んでこようとするたびに、強い刺激が背筋を駆け上る。
 刺激が肌を粟立たせる。
 胸をかきむしりたくなる。

「ふふふ、遠野君。真っ赤になっちゃって……」

 シエルも目元に朱色を散らしながら、甘く囁く。
 そして胸元の傷痕を、乳首をなめ回しながら、指先を動かす。
 とたん志貴はぞわりと身を震わせた。
 シエルの指が、志貴の首筋をそっと掻きあげていた。シエルは笑いながら、さらにそろそろと掻き上げてくる。触れるとも触れないともいえないような、かすかな触感が志貴の体をわななかせた。
 そのまま今度は掻き下ろし、鎖骨をなで上げ、脇をくすぐる。
 むずがゆいような悦楽。くすぐったい官能。
 そのたまらない触感に志貴は呻いた。

 強い衝撃が走る。
 陰嚢がとろけそうだった。
 翡翠と琥珀が頬をすぼめるぐらい吸うのだ。
 睾丸をその温かい口の中に頬張り、甘い唾液の海で揺らしながら、すすり上げる。
 すすられるたびに、ビリビリとしたものが肌の下を掻き上げてくる。
 音をたてて、ようやく解放された時には、切っ先からとろとろと先走りの液がこぼれていた。

「あは、どうでしたか、志貴さん」
「……こんなもので……よかったでしょうか、志貴様」

 ふたりの言葉に志貴はただ潤んだ瞳を向けるだけ。
 その瞳にある快楽を認めると、また二人は奉仕を始めた。

 アルクェイドのほっそりとした柔らかい指が根本をこする。
 強くない。
 可愛いぐらいの刺激。
 可愛らしい愛撫だが、ここまで高ぶった性感にとっては拷問に等しい。
 そのやわやわとした刺激が物足りなくて、腰が動いてしまう。
 もっと強くしごいて欲しいと、涙目で訴える。

「志貴、気持ちいいっていったらやってあげるよ」

 アルクェイドはにんまりと笑う。
 その朱色の瞳が細く、まるでイタズラ好きな猫のような煌めく。
 志貴は声にならない声をあげて、か細く震えながら頷く。
 ふふ、と笑うと、アルクェイドはこすり始める。
 でもゆっくりと、嬲るように――。
 でもそろそろと何ががこみ上げてくる。
 腰の奥の根本がズキンと痛むぐらい。
 柔らかい刺激のはずなのに、快感がじわじわと迫ってくる。
 わき上がってきて、志貴の脳髄を灼く。
 とたん秋葉が口の中でぎゅっと締め上げる。
 一気に脳髄がかき乱される。
 頭が真っ白になる。
 出してしまったかと思うほど。
 大きく男根は動き、秋葉の口の中で暴れた。
 それを愛おしそうにほおばり、しゃぶり続ける。
 そしてシエルの指使い。
 その未知の感覚をもたらす指先は、志貴の顔にまでのぼり、唇をやわやわと刺激していた。
 口づけもしていないのに、唇はジンジンと痺れていた。
 そして陰嚢と睾丸をねぶられる愉悦といったら!
 志貴はいったい自分がどうなっているのかわからなかった。
 違う温かさの舌と指先に弄ばれて。
 全身は汗まみれでぬるぬるしているというのに。
 それさえも気持ちよい。
 まるで全身の毛穴から淫水があふれているかのよう。
 漂う淫水の臭い。
 女の淫らな臭い。
 志貴が放つ牡の匂いなどかき消えてしまうほど。
 ただただ女のもつ、ねっとりとした芳香が、志貴の肺をいっぱいにしていく。
 牝の香りが男をなぶっていく。
 高ぶらせていく。
 この女たちの汗が、吐息が、震える声が、躰をわななかせていく。
 男の気を揺り動かし、なぶっていく。
 むせかえるほどの芳香。
 痺れるような、疼くような悦楽の波に翻弄される。
 考えるどころか、息さえできない。
 全身がねっとりとした官能に包まれて、躰がよじれてしまう。
 頭の芯まで痺れるような疼き。
 そして時折走る痺れるような快楽。
 躰が疼いて仕方がない。
 疼いて、苦しんで、でも気持ちよくて。
 全身に火がついたよう。
 とろ火でよってじりじりと灼かれていく、この感覚。
 いやらしい官能の火でちろちろとあぶられるこの感触。
 やらしくて、たまらなくて。
 アルクェイドの声が、
 秋葉の黒髪が、
 シエルの指先が、
 翡翠の肌が、
 琥珀の唇が、
 志貴を離さない。赦さない。
 志貴は牝の海にひたっているかのようであった。
 その海はどろどろとしていて、粘液質で、温かくて、優しく包み込んできて――たまらない。
 そのどろりとしたものが、躰の奥と呼応する。
 息を吸うたびに入り込んできて。
 息を吐くたびに出ていって。
 惑わせる。
 目眩ませる。
 痺れさせる。
 すべての感覚が、たゆんで、ただただ切なくて、いやらしく啼いてしまう。

 アルクェイドは股間から顔をあげると、志貴の首筋にふれる。
 吸血鬼のような口づけ。
 でも吸わない。
 ただ唇を触れ合わすだけ。
 それだけで――こんなにも。

 秋葉は存分に男根を味わう。
 両手で竿を握り、こすり、舌をはわせ、味わう。
 淫欲におぼれきった爛れた笑みを浮かべ、舌でちろりと唇を舐めると、甘噛みを始めた。
 その度にずきんと腰の奥に響く。

 シエルは志貴の唇を奪う。
 唇をあわせ、息もさせず、舌を入れてくる。
 軟体動物のようなそれは志貴の口の中を蹂躙していく。
 歯茎をこすり、舌を絡めてくる。
 にゅるにゅるとしたそれで舌のザラリとしたところをなで上げ、舌の後ろもチロチロとこすられる。
 口の性感帯が次々に開発されていくようだ。
 じんわりとした痺れがうまれ、後頭部を灼く。
 そして志貴の唾液を舐め尽くそうと、舌が暴れる。
 こんなに暴れているというのに、心地よい。

 翡翠は陰嚢から離れ、右太股を舐め始めている。
 舌でチロチロと、ゆっくりと丁寧に舐めて、ゆっくりと降りていく。
 膝頭をなめ回し、膝裏に接吻し、すねを甘噛みする。
 こんな愛撫は初めてだった。
 それを見ていた琥珀も口を離すと、翡翠と同じように左足を嬲り始めた。
 神経がばらばらになっていくような感覚。
 ほどけて、ばらばらになっていって、消えてしまう。
 そしてふたりは足までたどりつくと、指をしゃぶりはじめた。
 びっくりして顔をあげる志貴を無視して、一心不乱にしゃぶる翡翠。
 琥珀は指の間を舌で舐め、上目遣いでこちらをみて笑っていた。
 爛れた快感があった。
 知らない場所が舐められ、ねぶられ、口づけされて、こすられて、掻かれて――。
 全身が熱くとろけていく。
 とろけてしまう。
 感じるのは、悦楽だけだった。
 躰が捩れてしまう快感。
 5人の女性に奉仕されるという官能。
 5人の女性に責められるという淫楽。
 何がなんだかわからない。
 躰のどこかで快楽が常に弾け続けて、志貴というものがなくなってしまうかのよう。
 形が保てない。
 バラバラになる。
 どろどろになる。
 いやらしいこの牝の海の一滴となって、とろけていく。
 とろけて、ぐにゃぐにゃになっていって。
 残るのは、わななき、ただ打ち震える、牡、だけ。

 アルクェイドは志貴の胸に口づけする。傷痕をなめ、楽しそうに、志貴を嬲る。
 志貴のぐもって押し殺した喘ぎを聞くたびに、目を細め、うれしそうに這わせた。
 汗をかいて少ししょっぱい味が広がる。
 でもそれも志貴のだと思うと心地よい。
 舌でやわやわと志貴の感じるところをなでるだけで、こんなにも躰が震える。
 志貴が自分の舌先で、指先でわななくのを見るたびにうれしくなってしまう。
 いつもならば、逆に志貴に翻弄されるだけなのに。

 今回は違うからね、志貴。

 ワザと音をたてて舐める。
 ピチャピチャとまるで猫のように舐める。
 舐めているのは自分だというのに――。
 こんんなにも痺れてしまう。
 志貴の躰を舐めているから。
 志貴だから、こんなにも気持ちよくて。
 声をふるわせ。
 長い睫毛をふるわせ。  その朱色の瞳をふるわせ。
 淫欲にその躰をふるわせて。
 こんなにもいやらしくふるえてしまう。
 唇が、舌がうずいて仕方がない。
 志貴。志貴。志貴。
 鎖骨を舐めると、あそこからじんとしびれる。
 ぬれていくのがわかる。
 指でひらけば滴りが落ちてしまうほど。
 あそこが充血して、ぬるぬるしているのがわかる。
 志貴のが欲しくてうずいている。
 躰がきゅうっとなるほど、求めている。
 志貴。志貴。志貴。
 感じて、躰をよじらせる志貴は可愛らしく。  自分のもどんどんいやらしく濡れてしまう。
 太股につつっと伝わるのがわかる。
 溢れてくる。いやらしいオンナの蜜が、こんなにも溢れてくる。
 志貴が欲しくて、こぼれてしまう。


 秋葉の頭は沸騰していた。
 口でそれをしゃぶり、ほおばり、舌をはわせているだけだというのに。
 口の中がとろけていく。
 つよい男の臭い。
 牡の香り。
 口に含むたびに塩っぽくて酸っぱいような味が広がる。
 えぐみのある味。
 それが愛しい兄さんのだと思うと、それさえも――愛おしくなる。
 口にいれて、喉奥まで熱い塊を感じるたびに、躰にいやらしい電気が流れる。
 頭の中が兄さんのそれでいっぱいになる。
 口を満たすそれがビクンとふるえるたびに、それがうつって秋葉の躰もふるえてしまう。
 口いっぱいほおばって、喉奥いっぱいまでくわえこみ、顔をゆする。
 離したくなかった。
   この熱い兄さんの男というものをずっとこの口いっぱいにほおばっていたかった。
 そしてその淫らな熱さが移って、意識を灼く。
 意識がとろけていって、もうそれだけしか考えられない。
   とたん。
 あそこがひくつく。
 はしたない、と思うのに。
 そう思えば思うほど、あそこがひくつき、痒みににた何かを発する。
 そこから発生するいやらしいさざ波。
 それがさらに胡乱にさせる。
 沸騰させて、何も考えさせない。
 いやらしくて、甘くて、たまらない、兄さんの――それ。
 顔を真っ赤にして、陶酔した表情のまま、頬張り続けた。
 口の中でびくんと動くたびに。
 口の中が牡の匂いであふれるたびに。
 乳首が尖っていくのがわかる。
 痛い。
 尖って、張りつめて痛い。
 さざ波だったそれは、どんどん強くなっていく。
 はしたなく女花がひくつき、ねっとりとした熱い蜜をためていく。
 胸がはりつめて、痛い。
 全身が熱く焼けるよう。
 おしゃぶりしているのに、口さえも心地よい。
 じんじんとしてきて、まるで快感の坩堝になったかのよう。
 入れるたびに、出すたびに、含むたびに、そのまま脳にまで志貴のそれが届いているかのよう。
 それで脳髄が、秋葉というものがかき乱されて、メチャクチャにされて、犯されているよう。
 めちゃくちゃになっていくだけ。
 メチャクチャで、デタラメで、ただ――翻弄されて。
 歯も、歯茎も、口の粘膜も、舌も、ただ肉の悦びしか感じられない。
 ただそれにうっとりと浸り続けた。


 ただの口づけ。
 接吻。
 キス。
   幾度となく重ねたというのに。
 まだ慣れない。慣れるということを知らないかのよう。
 シエルは志貴の唇をそっと吸う。
 吐息さえ逃がさない。
 唇を重ねながら、舌でくすぐる。
 志貴の舌もおずおずとでてくると、強引にからめ、吸う。
 いやらしい粘液の音をたてながら、吸い、ねぶる。
 今度は志貴のが入ってくる。
 口をあけ、志貴のなすがまま。
 眼鏡の奥の目を胡乱にさせ、志貴の舌を存分に感じる。
 口蓋をこすられ、ほほの裏さえこすられる。
 粘膜がこかられて、じんじんとした悦びが走る。
 志貴の舌がこするたびに、吐息がかけられるたびに、甘くわななくたびに、うるんだ瞳がふるえるたびに、オンナからゆるゆるとなにかがこみ上げてくる。
 せりあがってきて、狂おしいほど。
 腰をゆすって、ねじらせ、この肉体の悦びにひたってしまいそうになる。
 思わず我を忘れて淫語の叫びをあげてしまいそうなほど。
 喉を震わせて、いやらしく恥ずかしい言葉を叫び出しそうになる。
 かき乱して、突っ込んで、動いて欲しくて。
 こんなに風にやってほしいと、じゅぶじゅぶと音を立てて、舌を絡める。
 唇から涎がしたたり落ちても関係なく、ただお互いの唇と舌を貪りあう。
 舌を絡め、唾液を啜りあい、舐め尽くし、蹂躙しつくした。
 そのたびに、あそこから淫らな衝動が駆け上り、シエルをわななかせた。
 まだいじられてもいないおしりの穴さえも、きゅきゅっと動いて快感をせがんでいるのがわかる。
 ただ口づけをしているだけだというのに。
 舌が、息が、臭いが、唇が――こんなにも乱れさせてしまう。
 いやらしく乱れて、こんなに求めて、こんなにも切なくて。
 でも舌と舌が絡み合い、唾液を啜りあい、粘膜をこすりあうだけで。
 頭の中がスパークする。
 白くなっていく。
 シエルも、エレイシアも、埋葬機関もなにもなく。
 ただの女に。
 いやらしい牝に。
 ただ男をもとめるオンナに。
 眼鏡と眼鏡がぶつかってカチャカチャと鳴るのも、もどかしく。
 唇をただ奪い合い、舌を絡めつつ、唾液を貪るのであった。


 ……志貴様、志貴様、志貴様……。

 翡翠はただただ呪文のようにその言葉を唱えていた。
 足の指を舐めるのに何の抵抗感もなかった。
 これが志貴様の指だと思うと、何の躊躇いもなく口に含めた。
 含んだ時の志貴のびっくりしたような顔が快感に歪むのを見ると、それだけで躰が熱くなっていった。からら  はしたないはずなのに。
 口の中の唾液で指を洗うようにしゃぶっているだけだというのに。
 こんなにも蕩けていく。
 やらしいものが全身に広がっていく。
 志貴様のならばどこも不浄ではないのです、と言いたいぐらい。

 そうわたしは志貴様専属のメイド。

 足の裏に口づけする。

 だから――こんなことさえできてしまう。

 そして舐める。

 志貴様が求められるのならば、こんなことでさえも。

 舌をだして、ペロペロと丹念に舐める。
そして指に戻り、爪ひとつひとつ、指をしゃぶり、ちゅぱちゅぱと吸う。

 ……志貴様……しきさま……シキサマ……

 どんどん胡乱になっていきながらも、翡翠は舐め続けた。
 志貴様の指。
 志貴様の爪。
 志貴様の足。
 志貴様の甲。
 何もかもが愛おしい。
 愛おしくてたまらなくて、しゃぶってしまう。
   舌をはわせ、唇をよせ、口に含み、唾液でぐちゅぐちゅとゆすぐ。

 ――こんなことをしているのに……。

 翡翠の頭は霞がかかっていく。
 じんわりとしたぬるま湯に使っているかのような感覚。
 全身がとろけて、ばらばらになっていく、気持ちよさ。
 志貴様に奉仕しているという感覚が。
 志貴様が感じているという思いが。
 こんなにも大胆にさせる。
 させてしまう。
 顔が熱くなる。
 でも――やめられない。
 気持ちよくて。
 志貴様の足を舐めているだけだというのに。
 気持ちよい。
 躰がこんなにも求めている。
 志貴の足の指でさえも、求めて、こんなにも。
 こんなにも。
 こんなにも。
 熱くなって。
 霞がかかって。
 痺れて。
 疼いて。
 こんなにも。
 こんなにも。

 ――志貴様……。

 翡翠は奉仕の、服従の、媚びる悦びに溺れていった。


 ペロリと舐める。
 とたん志貴が呻く。
 そしてチロチロと舌を指の間にいれて、くすぐる。
 ぬるぬるとしたものにくすぐられて、また呻く。
 そうしながら、琥珀は横の翡翠を盗み見る。
 顔を真っ赤にして、ただ一心不乱に足の指舐めに没頭している妹の姿に、琥珀はどきんとする。
 足の指をその小さな口にほおばり、顔を羞恥にそめ、伏し目がちに奉仕する姿。
 同じ顔をしている妹のその倒錯的な服従しきった痴態に。

 ――わたしも……わたしもあんな顔を……。

 そう思うと躰が熱くなっていく。
 躰がぷるんと震え。
 どろりとした何かが奥底で蠢いて。
 あそこからなにかがにじみ出てくる。
 あんなに一生懸命に、いやらしくねぶる姿は顔を覆いたくなるほど恥ずかしくて。
 なのに、あんなにも気持ちよさそうで。
 目をとろんとさせて。
 淫蕩にゆるませて。
 まるで雌犬のように。
 さかりのついた獣のように。
 一心不乱に。
 すごい。
 あんなにくわえて。
 あんなところまで。
 大胆に。
 それと同じようにやっている。
 とたん躰がズキンとしびれる。
 痺れて唇がぷるぷるとしてしまう。
 媚肉からじわじわと浸み出てくる。
 いやらしい汁がしたたり落ちてしまう。
 すごくて。
 狂おしいほどの性悦が駆け上っていく。

 翡翠ちゃんと同じことをするだけで、こんなに……。

 湯気が出そうなほど、熱くねばついた息を吐く。
 その瞳は淫らな輝きをたたえ。
 足の裏に口づけする。
 舌をだして、舐めて、ねぶる。
 躰が熱くてたまらない。
 躰が震えてたまらない。
 うずいて仕方がない。
 こんなに感じて。
 こんなにも感じて。
 切ないほど。
 うずいて。

 ――翡翠ちゃん、わたしも一緒に堕ちますから、ね……。

 そう考えて、琥珀は妹と同じ顔で淫乱な笑みを浮かべ、また足の指に口づけした。


 気の遠くなる程の快感。
 わけがわからなかった。
 五人それぞれの舌と指先で同時に責められているので、一体なにがなんだかわからなかった。
 しかもそれぞれの舌の、それぞれ違うザラザラした感触が堪らなく、熱く滾られていく。
 たまらず悲鳴を上げた。
 身をよじって、苦痛にも似た快感から逃れようとするが、5人の愛撫はそれさえも赦さない。
 だから両手両足を踏ん張って、必死に耐えるしかなかった。
 こみ上げてくる熱い高ぶりが胸を焦がす。
 腰の奥からなにかが突き上げてくる。
 たまらない。
 苦しくて、出したくて。
 痛いぐらいなのに、それさえも気持ちよい。
 すると、シエルが志貴を立たせる。
 膝立ちにさせると、後ろに回り込む。
 志貴にはなにをされているのかわからない。
 なすがまま。
 意識は半分快感で飛んでいた。
 するとおしりの肉がつかまれ、冷たい風があたる。
 それを楽しそうに好奇の目でみる4名。

「いつもわたしが啼かされていますからね」

 そういうと、シエルは志貴のそこに口づけした。
 むずむずするような快感。

「志貴さんはここをいじるんですか?」

 素早く琥珀がシエルの横へ動いて、いっしょに志貴のアヌスを苛める。
 皺をなめてべとべとしているそこをほぐすかのように、指でこすり上げる。
 じんわりとしたものがこみ上げてくる。
 その横をぬるりとした温かい舌がくすぐる。
 腰が動いてしまう。
 それを無理矢理おさえつけられて、ほじられ、ひろげられて、いじられる。
 熱い。
 熱くて、ジンジンしている。
 すると、アルクェイドは仰向けになって志貴の下に潜り込み、志貴の睾丸を口に含む。
 強い刺激。
 そのやわらかく温かい唇でぎゅっと締め付けられる。
 鈍痛に似た快感が背筋をわさわさとかけずり回る。
 うめき声さえもれてしまう。
 痛いぐらい吸われて、甘噛みされているというのに。
 気持ちよくて。
 気の遠くなるような快感がビリビリと駆け抜けていく。
 秋葉はいきりたった竿をにぎるとこすり始める。
 それにつられて、翡翠も手を伸ばし、こすり上げる。
 やわらかいふたつの感触が、男を高ぶらせる。
 なにがなかだかわからない。
 おしりを舐められ、ひろげられて、玉がしゃぶられ、ねとねとにされて、男根がこすられ、亀頭がいじられる。
 いやらしい高ぶりだけがあった。
 苦しい。
 苦しいのに、気持ちいい。
 目眩がする。
 貧血にも似た感覚。
 頭がぼおっとして。
 神経はただ快楽だけを伝えてきて。
 目の前がチカチカする。
 躰をよじり、首をゆすって逃れようとしても。
 逃げられず、たた嬲られて、いじめられて。
 弄られて、内臓がよじれるほど。
 躰の中の内臓さえもふるえて、のたうちまわってしまって。

「……駄目、だ」

 志貴はいやいやする。

「……駄目だよ……」
「なにが駄目なの、志貴?」
「そうですよ、遠野君」
「はっきりいいった方がよいですよ、兄さん」
「志貴様、どうなさったんですか?」
「志貴さん、良すぎるんでしすか?」

 あまりにもつよい快楽に涙腺までもゆるみ、涙を流す。
 顔は真っ赤で、躰はおこりのように震え、ただ官能の波にさらされて、意識さえ保てそうもない。
 ただ悩ましげに吐息を漏らすだけ。
 淫楽の刺激にわななくだけ。
 全身がいやらしいアルコールにつけられたかのよう。
 躰全体にいやらしく染み渡り、かあっとさせて、胡乱にさせていく。
 染み渡って伝わって、痺れていく、この性悦。
 すごい。
 たまらない。
 達したとおもってもまだ達せず。
 まだその上が。
 まだその先が。
 まだ。
 ねじられる。
 ねじれてしまう。
 躰がよじれて、まがって、唸って、ひねって、縮まって。
 躰に流れるやらしい官能が。
 淫らな刺激が。
 狂おしいほどの性悦が。
 こんなに躰を。
 こんなにも躰を。
 躰を、精神を、心を、魂を。
 犯していく。
 収斂させていく。
 こんなに蹂躙していく。
 こんなにも弄ばれてしまう。
 玉をしゃぶられて。
 おしりをいじられて。
 男をしごかれて。
 鈴口をこすられて。
 淫らな水の音。
 いやらしい腺液の臭い。
 溺れるほどの女の香り。
 むせかえるほどの牝の匂い。
 爛れた花の香り。
 躰の内側さえも、こんなに。
 躰の内側さえも溢れさせて、溺れて――いく。
 ただ――淫らに。
 ただ――官能に。

「……ああ」

 志貴が堪え切れそうな様子でうめく。
 ただでさえ性感は高ぶっているというのに。
 女たちは次々に刺激を与える。
 いやらしい細波は、いつしか荒れ狂う波となって。
 志貴の躰を虜にする。
 嬌声をあげさせる。
 涙を流し、口からただ意味もなさない喘ぎだけが漏れ、すすり泣くだけ。
 蕩けていく。
 淫らに蕩けていく。
 そんな志貴の痴態を、女たちは、それはうっとりと眺め、

「いくのね、志貴」
「ここも気持ちよいでしょう、遠野君」
「兄さん、さぁ」
「志貴様早く楽になれた方が」
「あはー、もうぬるぬるですよ」

 唇が、舌が、指先が、志貴を弄ぶ。
 さらに弄くり回し、啼かせる。
 そして。
 シエルの指がぐにっと入ってきた時。
 琥珀の指が広げた時。
 アルクェイドに睾丸をぐにゅっと吸われた時。
 秋葉の指先が鈴口をこすった時。
 翡翠の手が竿を下から一気にしごいた時。
 頭が白くなる。
 強い刺激が幾度と啼く背筋を駆け上り。
 脳髄をかき乱して。
 ただ真っ白になっていく。
 背中がのけ反り。
 びくんと躰がふるえ。
 腰を突きだして。
 真っ赤に怒張したそれが跳ね。
 淫蕩な快楽が男の気を、牡を震わせて。
 それに悶絶しながら。
 弾けた。
 白濁液が飛び散る。
 男根が震えて、大きく飛び散る。
 こってりとしたそれが牡の精が目の前の二人に飛び散る。
 顔を、鼻を、頬を、唇を、胸を白濁した粘液が汚していく。
 志貴の躰はたまりきったものを吐き出すために大きくガクガクと揺れていた。
 男根は暴れ、まき散らす。
 こんなにもあるのかというぐらい、思いっきり吐き出す。
 むせかえるほどの牡の匂い。
 牡の精の匂いが立ちこめる。
 それをかぐわしい香りかのように、女たちは恍惚の表情を浮かべ。
 躰全体で受け止める。
 そしてそれは下にいるアルクェイドにもしたたりおち、汚していく。
 華麗といっていいほどの美貌をどろどろに汚していく。
 白くねっとりと汚していくというのに。
 金髪の美女は官能に震えながら、喘いでいた。
 それを楽しそうに見つめながら、シエルと琥珀は媚肉からのわななきに身を任せ、おしりを弄び続けた。
 熱く灼ける様な官能の荒波の中、志貴の意識は蕩けて消える。
 出したというのに、さらなる快感が志貴の意識を奪っていく。
 消え去ってしまって。
 志貴というものが、ただのどろどろとしたものになって。
 アルクェイドに。
 シエルに。
 秋葉に。
 翡翠に。
 琥珀に。
 ただいやらしく、すべてを出し尽くしてしまったかのようであった。
    ・
    ・
    ・
    ・
    ・
    ・
    ・
    ・
    ・
    ・
「……はっ」

 志貴は目を覚ます。
 全身にじっとりとした脂汗。
 そして快感に敏感になって粟立った肌。

 …………。
 …………。
 …………。
 …………今の……夢?

 脂汗をぬぐいながら周囲を見回す。
 まだ夜明け前の、薄暗い自分の部屋。
 ひんやりとした空気が汗ばんだ肌に心地よい。
 とてつもない快感に、まだ腰の奥が痺れていた。
 思わず夢射してしまったのではないか、と思うほど。
 思い返すだけで、爛れた快感にひたれそうなほど。
 音もなく、黒猫が志貴の前に現れる。

「……レン、もしかして今の……」

 こくりと頷く。

「ははは、初夢を見せようと思ってたって……」

 またこくりと頷く。

「はははははは」

 レンに自分がどう思われているのか、一度じっくりと話し合わなければならないな、と思った。

「え、なに?」

 ………………。

 ――俺はそういう人となりだって……はははははははは。

 1月2日そうそうから渇いた笑いを浮かべるしかなかった。

 ――この淫夢、初夢って……ま、まさか現実のものになるわけ……ないよな。

  チラリとレンを見ると、ぷいっと向いて出ていってしまう。

「なぁレン。おーい。今の初夢で本当になるなんて……ないよな……な、レン」

 そしてレンの言葉が届く。

 ――自業自得、と。

 渇いた笑いを浮かべる志貴は、取り巻く女性たちが出し抜いて『「姫はじめ」はわたしで』と画策しているとは、まだ知るよしもなかった……。




あとがき

 あけましておめでとうございますSSのはずなのに……なぜ18禁(笑)
 しかもレン落ち(笑)
 正月ネタを考えていましたら、レンって夢魔で淫夢をみせるですよね、と思いついちゃったのが、もともとの発想です。
 頭ワルーなSSを目指しているのですが、なんか失敗しています。文体もなんかちくはぐな感じ。
 最初三人称を目指していたのに、いつの間にかいつもの書き方をしてしまって、ぐちゃぐちゃ。
 ……まぁやらしければOKなんですけどね。

 ではまた別のSSでお会いしましょうね。

31st. December. 2002 #82

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