天抜き・四十八手



作:しにを







1「否定はしていないよね?」


 式 「なあ、幹也。
    これって……、本当に普通の行為なのか?」
 幹也「式が不快ならやめるよ」(あくまで優しく)
 式 「そんな事はないけど」
 幹也「よかった」(行為再開)
 式 「でも…ん、んん……、はぁはぁ。
    ……」(僅かに心に引っ掛かりを残している)






2「オーダーメイドなら、凄い額になるのだよ?」


 橙子「せっかく作ったのだがな」
 幹也「悪趣味でしょう、何ですこんな……いや見事だとは認めますけど」
 橙子「我ながら会心の出来だざ。
    いや、ある意味本物以上だぞ。練習用として最適だと思うがね」
 幹也「でも式そっくりの……」
 橙子「残念ながら人形は人形だから本物と接しても感動は薄れんよ。
    それに、式に対して正確に25%の機能ダウンしておいてた。
    それでもこんなに蕩けるほど柔らかくて、ここなんて……。
    どうやって調べたか?
    それは企業秘密だがね。で、給料の代わりとして受け取るかね?
    ふーん、悩むか。難儀なものだな」






3「お望みなら」


 橙子「排泄器官だと思うから不思議かもしれないが、人間の体はどこも大な
    り小なり性感帯ではある。
    手の甲や耳を弄るだけで絶頂に導くのは可能だ」
 鮮花「なんでわたしで試すんです」
 橙子「黒桐で実演する方がよかったかな?」
 鮮花「……」
 橙子「何故、黙る。
    おまえもだぞ、式」
 式 「……」(何気に頬を赤くした顔を逸らしている)




4「問題なし」


 橙子「…で決して後ろを使う行為は、必ずしも異常ではない。
    慣れれば後腔を性行為として使われて、かなりの快感を覚える。
    なあ、黒桐?」
 幹也「そうですよね」
 橙子「さらにだな……」
 鮮花「何か凄い事を……」
 式 「さらりと流された気がする」






5「気合一閃」


 アルバ「下世話な話だとは思うが……、
     君はもう性欲などは根絶しているのかね?」
 荒耶 「否。溢れるほどにある」
 アルバ「そ、そうかね。しかし……。
     東洋の思想化は猛る気を静めると言って血を抜いたりしたそうだが、
     そんな真似をしているのかな」
 荒耶 「それも否。
     そうだな説明よりも……、確かめるか?」
 アルバ「何を……、な、おい、こんな処でって、え、な、おおおッッッ」
 荒耶 「単なる排泄行為に過ぎん」(拭いながら)
 アルバ「何もせずに……ううむ」(妙に感嘆)






6「嬉よりまず驚」


 橙子「女としての存在を否定された……」
 幹也「そんな、いきなり全裸で部屋に飛び込んできたら退きますよ。
    それが誰でも同じです」
 橙子「そう?」
 幹也「そうですよ」
 橙子「式でも?」
 幹也「……ええ」
 橙子「間が空いた。考えた。やっぱり私は女として失格だと……」
 幹也「ああ、もう。
    酔ってるみたいだけど、何かあったんですか?」






7「俺って最低だ……みたいな」


 幹也「ずっと、式とこうなるのが夢だった」
 式 「……」(至福の表情)
 幹也「あの時に想いを遂げなくて良かったよ」
 式 「……え?」






8「絡みつくような」


 橙子「ああ、黒桐、ちょっと指を出して、そう、そのまま」


   にゅるん


 橙子「じゃあ、今度は抜くから動かないで。
    お、これくらいの抵抗があるか。
    ふむ、膨張率を考えるともう少し緩くして、そのかわり中を少し細工
    しようか。
    協力ありがとう」
 幹也「あの……今の?」
 橙子「さあ、何かなあ」






9「お姉様の誘惑」


 橙子「黒桐、私と寝てみないかね。
    後腐れも無いぞ」
 幹也「お断りします」
 橙子「即答か。まあ、そう言うと思ったよ。
    じゃあ……」(おもむろに眼鏡をかける)
 橙子「私では女として魅力は無いですか?
    久々にそういう気分になったので、黒桐くんさえ良ければ、私の事を
    可愛がって欲しいんです。
    難しい事は考えないで楽しんでくれればいいですし、何でも黒桐くん
    の言う通りにしますよ?」(柔らかく微笑み)
 幹也「ええと、その……」(凄い葛藤)
 橙子「何が違うのかしら?」(可愛く小首を傾げて)






10「どきどきします」


 藤乃「あ……」(真っ赤)
 幹也「嫌、だった?」
 藤乃「いいえ。唇も舌も何度も奪われたけど、本当に口づけしたのは初めて
    だから」
 幹也「……」(もう一度、顔を寄せる)
 藤乃「はい。う…ん……」






11「スリーピング・ビューティ」


 式 「まさかとは思うが、寝たきりで再起不能だった俺に変な事してないだ
    ろうな?」
 幹也「式……」(静かに)
 式 「な、え……、ごめん。幹也、酷い事言った、謝るから」
 幹也「うん。そんな真似する筈無いだろう?」
 式 「そう…だよね」
 幹也「そりゃ、ちょっとは頬に触れたり手を取ったりはしたけど」
 式 「……うん」
 幹也「ああ、思い出すとあれも良かったな。今夜はそういうプレイにしよう
    か」(ぶつぶつと)
 式 「プレイ?」






12「外観からはわからないけど」


 橙子「いい加減諦めろとは言わないが、他の者で我慢する気は無いか?」
 鮮花「幹也以外ですか?」(鼻で笑うように)
 橙子「幹也の子供」
 鮮花「え?」
 橙子「どうかね、これはこれで禁忌に触れる存在だろう」
 鮮花「……」
 橙子「仮定として惹かれるものはないかね?」
 鮮花「否定はしません」
 橙子「そうか、ではあと5ケ月と6年ほど待ってくれ」(立ち去る)
 鮮花「ちょっと、その妙に中途半端で具体的な日数は……、橙子師ッッ!!」






13「男は臆病なものです」


 式「さんざん切り刻まれたりして来たんだぞ。
   痛みの耐性だって人並み以上にあるんだから。
   そりゃ、戦闘時とは勝手が違うけど……。
   あれで、やめる事は無いじゃないか。
   幹也の、意気地なし」(枕に八つ当たり)






14「半裸の男と二人の女」


 式 「何をしている?」
 幹也「もごもごもご」(じたばた)
 橙子「さすがに式も怒ると言うより、呆れているな」
 鮮花「それはそうでしょう、こんな姿……」






15「最初から見てるとどうなんだろう」


 式 「……」
 幹也「ん……、あ、え…、ああ、おはよう、式」
 式 「……おはよう」
 幹也「どうしたの……って、何見てるのさ、式?」
 式 「あ……」(真っ赤)
 幹也「生理現象だから」
 式 「知ってる。でも……」
 幹也「でも?」
 式 「朝まで何度もしたの……」(言いつつ恥ずかしくなって背を向ける)
 幹也「……そうだなあ」(しみじみと) 






16「乙女の園で」


 橙子「礼園時代の私?
    それはもう清らかだったとも、ふふふふ、ああ、もうこの上なく。
    いや、実際男の手ひとつ握らずに過ごしたぞ。男の手はな」


 鮮花「……」
 式 「……」
 幹也「何だよ、二人して背中に隠れて……。僕だって怖いよ」






17「拙さが残るのがかえって」


 幹也「……初めての時はあんなだったのに。
    もしかして、一人で練習したのかな。
    そう考えると……、うわ、堪らないものがあるな」






18「どんなのかな」


 橙子「ああ、黒桐。ちょうどよい処に来たな。
    生殖器を見せてくれ」
 幹也「………………はい?」
 橙子「変な意味じゃない。人形師としての仕事の要件だから、恥ずかしいと
    思うが力を貸して欲しい。頼むから」
 幹也「真剣な顔してますね。うーん、そういう事なら。
    でもいつもは、そんな事は頼まないですよね」
 橙子「ああ、今回は形状に特殊な注文があってな。
    普通のものなら見慣れているけど、サンプルとしては思い当たるのは
    黒桐しかいなくて…って泣きながら出て行くな。
    おい……って。仕方ない、記憶に頼るか。確かこうなってて……」






19「羞恥の表情」


 式 「うんん、やだ、恥ずかしいよ、幹也」
 幹也「でも、こんなにしてるよ?」
 式 「あ、何で幹也はこんな時にはこんなに、ひうッ」
 幹也「式がこの時には見違えて可愛くなるからじゃないかな。
    そんなに嫌?」
 式 「…………嫌じゃない。
    幹也が喜ぶなら、恥ずかしいけど嫌じゃない」
 幹也「本当にどうしていいかわからないほど可愛いよ、式」






20「責任取って貰おうか」


 橙子「いや、不幸な事故だったな」
 幹也「事故?」
 橙子「ああ。軽い多幸作用のあるクスリと聞いていたから黒桐にも勧めたん
    だが、まさか男に対してのみ強烈な発情作用があるとはね……」
 幹也「それでも、橙子さんなら抵抗して止められたでしょ?」
 橙子「か弱い女性が? 無理無理。
    あーあ、黒桐に何度も陵辱されてしまったなあ。
    ほらほら、こんなに……。ふふ、まだこぼれて来る」
 幹也「しくしくしく」






21「でもちょっとほっとしたような」


 式「覚悟して来たのに。
   替えの下着とかも用意して、いきなり抱きつかれたりしても平気なよう
   に、体も念入りに清めて。
   もう……。
   三日ほとんど寝てないからって。
   でも、少し安心しちゃったな。
   独り寝は寂しいから、隣りで寝させてね、幹也」


  幸せそうに、幹也の背中に寄り添う。






22「心は我のものならじ」


 鮮花「……最低の形で、長年の想いは遂げた。
    幸せ。
    幹也で満たされた。
    でも……、結局……、妹としてすがって幹也を苦悶させて、そして心
    をがんじがらめにして、愛してもらった。
    ごめんなさい、兄さん。
    それでも…、いえそれだからこそ幸せを感じている狂った妹を許して
    下さい」




23「優しくするからね」


 橙子「まあ、人間とて生物であるからして、本能に従えば何とかなるさ。
    まさかおしべとめしべの説明から始めなければならない訳でもあるま
    い、二人とも?」
 幹也「そうですよね」
 橙子「最初はどうしても緊張して体もかたくなるし、ぎこちなさから変に力
    が入って痛かったりするかもしれない。
    でも、お互いに好き合っての行為だ、それすらも喜びになる」
 幹也「……」
 橙子「まあ、何もかも式に身を委ねていれば終わるから」
 幹也「はい」(真っ赤になりつつも素直に頷く)
 橙子「……いや、頷かれてもな」




24「痴態の声が外へと洩れて」


 橙子「あん、うまいじゃないか、意外に。
    そうよ、そこを……、ああッ、いい、平気だ。それくらい……。
    え、やだ、そんな広げて。あ、そんな奥まで。
    ふふ、可愛いな。
    そんなに気に入った、?
    なら、ほら、こんなのは……、黒桐、どう? ふふふ」


 鮮花「……ひ、一人よね。
    幹也は上にいるもの。
    でももしかして……」(魔術書を手に、扉をノックしかけて立ち竦み)






25「あるいは星の徴」


 橙子「……」
 幹也「あれ、アルバムですか」
 橙子「まあ、過去の愚昧な様を見ているのさ。過ちとも言えるな」
 幹也「橙子さんの写真じゃないじゃないですか」
 橙子「大部分は礼園時代かな……」
 幹也「だから女の子ばかりなんですか」
 橙子「こんなに食べていたか。しかし節操が無いな、我ながら」
 幹也「……え?」




26「さらにひとつ撃墜」


 幹也「……ちょっと橙子さん」
 橙子「うん?」
 幹也「なんで鮮花の写真が、逃げないでちゃんと説明してくださいよ」






27「それもまたひとつの愛のかたち」


 橙子「まあ、愛していても……、いや愛するが故にこそ、その愛する対象を
    ぼろぼろにしてしまいたい願望などというのは誰しもあるものだよ」
 幹也「そうですか」
 橙子「例外なくとは言わないがね。
    そう思わないかね?」(視線を少しずらす)
 幹也「え、ええっ?」
 式 「……」(そうだなあ、と言う顔で頷き)
 鮮花「そう……かも」






28「犬め」


 橙子「ふぅ、苦労はしたがかなりの報酬ではあったな。
    これであれやこれや、ああ、給料もようやく払えるな。
    ふむ、地に伏して靴にキス、いやいや、足の指を丹念にしゃぶったら
    支払ってやると言ったら、どうするかな?
    ……。
    うんうん」(何やら感じ入った様子で眼をつぶり浸る)






29「中身は尋常でないけど」


 橙子「黒桐のどこが良かったのかね?」
 式 「うん?」
 橙子「最初はむしろ嫌っていたのだろう。
    少なくとも、うるさくて煩わしい存在に過ぎなかったのだろう?」
 式 「ああ」
 橙子「払っても払っても付きまとって、でも、心に鎧を作っていた自分には
    それがやがて嬉しさに変化して……かね? 
    そして断絶を乗り越えて結ばれてか。しっかり女の子しているな」
 式 「悪い?」(小声)
 橙子「いや、全然。可愛いじゃないか」






31「目的の為には1」


 幹也「あれ……、なんだか眠く、な…う…うん……………」
 鮮花「ごめんなさい、幹也。
    こんなやり方で既成事実を作ろうとしている愚かな妹を許して」


    ゆっくりと逸る気を抑えつつ、幹也の服を取り除いていく。


 鮮花「な、貞操帯?」




32「目的の為には2」


 幹也「あれ……、なんだか眠く、な…う…うん……………」
 鮮花「ごめんなさい、幹也。
    こんなやり方で既成事実を作ろうとしている愚かな妹を許して」


    ゆっくりと逸る気を抑えつつ、幹也の服を取り除いていく。


 鮮花「な、なんで女物の下着?」




33「目的の為には3」


 幹也「あれ……、なんだか眠く、な…う…うん……………」
 鮮花「ごめんなさい、幹也。
    こんなやり方で既成事実を作ろうとしている愚かな妹を許して」


    ゆっくりと逸る気を抑えつつ、幹也の服を取り除いていく。


 鮮花「ふふ、そう言えばずっと昔は幹也とお風呂入ったっけ。
    まだ憶えている。
    …………ふうん、昔のままなんだ」 






34「何故持っているのかが気になりますけど?」


 橙子「そう言えば、前に給料代わりに渡したアイテムの数々は役立っている
    かね?
    なんなら追加でもっとあるけど。
    ぼつぼつのついたのとか、締め具とか」(からかい口調で)
 幹也「そうですね、お願いしようかな」(平然とにこやかに)
 橙子「(まさか、まさか……、怖い男だなやはり)」






35「恥辱にあえぐ少女」


 幹也「確か、鮮花のおしめ替えた事あるよ」
 鮮花「何ですって?」
 幹也「母さんの手伝いで、よくは憶えてないけど」
 橙子「ほう、そんな羞恥プレイを」
 鮮花「羞恥プレイ言わないで下さい。
    幹也も私の顔見て何考えているのよ」




36「どうしてもと懇願されて」


 式「そんな事なら、俺だって幹也にした事があるけどなあ。
   何が楽しいんだか」(ぽつりと)






37「初めての……」


 幹也「大丈夫、式?」
 式 「ああ」
 幹也「けっこう……、血が出てる」
 式 「仕方ないだろう、あんな……。
    平気だよ、痛くて、でも嬉しかったから」
 幹也「……」
 式 「痛ッ」
 幹也「ご、ごめん」
 式 「平気だって。うん、優しく拭いてくれているから、そんなに痛くない」
 幹也「拭くだけじゃ、おさまらないな。
    お風呂入ろうか、式?」
 式 「う、うん……」
 幹也「よし」
 式 「……」
 幹也「式?」
 式 「すまなく思っているんだよな、幹也は?」
 幹也「う、うん」
 式 「じゃあ、風呂まで俺を運んだりしようなんて気になったり……」
 幹也「え? あ、うん、そうだね、ちょっとじっとしててお姫様」
 式 「うん」(幹也の首に手を回し、幸せそうに)
 幹也「軽いな。ずっとこうして抱いててあげようか?」
 式 「馬鹿」(でも、もっと幸せそうにして頬を幹也の胸に……)






38「一人上手」


 橙子「二人部屋だったな、鮮花は」
 鮮花「はい。それは橙子師の頃から変わりませんから」
 橙子「そうか。では、夜とか困らないかね?
    トイレにでも篭ってというのも、危険だし。
    こっそりと声を押し殺して……」
 鮮花「な、な、な……」
 橙子「していないのかね?」
 鮮花「そ、それは……、その……」
 橙子「別に恥ずべきことではないのだがね」
 鮮花「何か咥えたりして、わからないようにして……」
 橙子「ほう、いつの世も変わらないものだな、ふふ。
    でもしているのに気づいてもお互い見てみぬ振りかもしれないが、兄
    さんとか幹也とか呼ぶのを聴かれたら大変だな」
 鮮花「そう思うといっそう……。一人の時より……」
 橙子「なるほど」






39「水流れ、そして弾け」


 式 「どうしてもしなくてはダメ?」
 幹也「ダメ。
    見せてくれるって言っただろ?」
 式 「でも、こんな……」
 幹也「……」
 式 「汚いだけじゃない」
 幹也「でも、見たいんだ」
 式 「幹也の…変態。
    うん…、あ、ああッッッ」


   ちょぽ…ちょろろ…ちゃぱちゃぱちゃぱ……。


 橙子「と言った合成の音声を前につけると、先に目の前で録音してみせた単
    なる水音がだな……」






40「マーラ様降臨といった」


 幹也「うん、これ……うわっ、脈打ってる」
 橙子「当たり前だ。そこらの人形と一緒にして貰っては困るな」
 幹也「でも、なんでこんな処まで……」
 橙子「逆だよ。そこが重要なんだ。
    そういう目的の依頼でな」
 幹也「ああ、なるほど。
    でも、この大きさって僕の腕くらいありますよ」
 橙子「MAXはこんなものではないぞ。
    言わば今は、甘勃ちの状態だ」
 幹也「甘勃ちって、妙齢の女性が嬉々として……。
    でも、そんなの挿入できないでしょう、幾らなんでも。
    あ、そうか、観賞用ですか」
 橙子「いやあくまで実用本位のものだ。
    無理とはなんだ、使い勝手の確認は何度もやってるぞ」
 幹也「えっ?」
 橙子「他ならぬ私自身でな。当然だろう、プロの仕事だ。
    手抜かりがあってはいけない。うん、感心したようだな?」
 幹也「いえ、感銘受けたのは……、そこじゃなくて。
    しかし、そうなんだ」(がたがたぶるぶる)






40「果てしなく蒼い空の下で」


 式 「やっぱり、こんな処で……」
 幹也「ダメ」
 式 「だって……」
 幹也「部屋ならいいんだろ?」
 式 「うん、こんな外でなんて」
 幹也「でも、普段より念入りに結界張って鮮花と出掛けたんだから、僕たち
    だけだよ。誰もやってこれないし、知覚する事もない」
 式 「それはわかっているけど」
 幹也「ダメ。ほら、式だってこんなに……」
 式 「だって、回り全部……、あ、幹也、そんな……」





41「自分が罪を負うことで、あなたが癒せるのならば」


 藤乃「うん……ふぅッ」
 幹也「あ、そこ……」
 藤乃「気持ち…いいですか?」
 幹也「うん、でも…」
 藤乃「う…んんッ、はぁ。
    気にしているんですね、どうして私がこんな事できるかを思い出して?」
 幹也「……」
 藤乃「いいですよ、気にしないで下さい。
    あんな目にあって、憶えさせられた事ですけど、悦んでもらえるなら。
    それに、見てください。
    何しても反応が無いって言われてたのに、今の私は……」
 幹也「何もしていないのに、こんななんだ。
    それに白い肌に赤みが差して、綺麗だ。
    柔らかいし、なんて滑らかな肌触り。素敵だよ、藤乃ちゃんの体」
 藤乃「ああ、凄い。
    なんで、こんな触れられただけで……。
    これなら、私の……、せんぱ…ううん、幹也さん」
 幹也「何、何でも言ってよ」
 藤乃「全部忘れさせて、代わりに幹也さんでいっぱいにして下さい」
 幹也「わかったよ。あ、そんな事まで……」
 藤乃「嬉しいから、やらされてではなく、自分の意志でしているのが。
    だから、もっと……」
 幹也「うん、いいよ、いくらでも……。
   (ごめん、式。後で何でもして償うから。
    一度だけ藤乃ちゃんの為に目を瞑っていて……)」
   (あくまで優しい表情をまったく崩さずに)






42「人形遊び」


 橙子「よく出来ているだろう?」
 鮮花「……自分の兄が、こんな人形になっているのは嬉しくないです」
 橙子「依頼主の注文に合致したのでな。
    やっぱり良く知っている題材の方が、ノッて作れる」
 鮮花「良く知っている?」  
 橙子「ああ、隅から隅までな」
 鮮花「……」(まさかという疑惑を顔に強く浮かべ、人形と橙子を交互に)




43「人形遊び2」


 橙子「……では、私と黒桐が何ら肉体関係が無いと納得して貰った処でまた
    しばらく工房に篭るから」
 鮮花「ちょっと橙子師、これはどうするんです」
 橙子「ああ、放っておけば良い。
    額に口づけしたら人間らしく動いて……要するにあの用途の為に働き
    始めるが、そうしない限りは大人しくしているから」


   ドアを背に足早に立ち去りかけ……。
    
 橙子「何か言い忘れたような。
    そうそう、あれは女性向の人形でなくて男性向で、なおかつ攻め側だ
    と……、まあ、動かない限りは無害なんだが。
    おや、あのつんざくような悲鳴は……、我が弟子の、遅かったか?」






44「拘束する者は同時に拘束されているとか何とか」


 橙子「目についた女を追い掛け回して、嫌だとはっきり拒絶されても止めず、
    夜も家までやって来て黙って覗って、根負けしたのに付け込んで接触を
    増やして、とうとう洗脳するように心を掴んで、死ぬの生きるのという
    騒ぎを起こして、肉体関係を結んで体でもほだして虜にして、後はずる
    ずると今に到るか。
    実に性質が悪いな、黒桐」
 幹也「そういう言い方をされると否定のしようも無いですが、一つだけ訂正
    します」
 橙子「ほう?」
 幹也「虜になっているのは僕の方です」(きっぱりと漢らしく)
 橙子「そ、そうか」(毒を抜かれて)






45「野外調教系羞恥プレイ」


 幹也「ね、試してみようよ」
 式 「嫌よ」
 幹也「絶対にわからない。バレるどころか怪しみすらしないよ。
    式さえ普通にしていればね」
 式 「でも……」
 幹也「だったらこっちの服を着る。
    僕としてはそっちも楽しいけど?」
 式 「そんなの、裸より恥ずかしい……」
 幹也「だったら、ね?
    僕だけが式が何をしているのか知っているってのが良いんだから。
    別に式がどれだかいやらしいか他人に見せたい訳じゃないんだよ」
 式 「どれか選ばなきゃダメなのね。
    なら……」


 橙子「という会話を何故か記録したのだが」
 鮮花「何故かって……」
 橙子「そんな事より、楽しみじゃないか?
    式がいかな姿で我々の前に現れるのか」
 鮮花「それは……、はい」
 橙子「ふふふふふ」
 鮮花「……ニヤリ」




46「野外調教系羞恥プレイ2」


 橙子「……」
 鮮花「……」
 式 「ど、どうしたんだよ二人とも」(動揺している顔で平静を装っている)
 橙子「わからんな」(小声)
 鮮花「そうですね、外観はいつもと同じです」(小声)
 橙子「でも、さっきからどこか上の空で」(小声)
 鮮花「気もそぞろですね」(小声)
 橙子「あれかな、その手の道具が挿入されてて、スイッチで振動とか」(小声)
 鮮花「幾ら何でも、でも……」(小声)


 幹也「いいなあ、あの和服の下にブルマーが穿かれていかと思うと……」






47「こじんきょーじゅ」


 橙子「ふぅ……、ああ、満足」
 幹也「…そうですか」(くぐもった声)
 橙子「ああ。だいぶ巧くなったよ、黒桐。
    これなら、式を相手にした時も充分リードできるだろう」
 幹也「なら、いいけど」(胸の谷間から顔を上げて)
 橙子「自信を持っていい。
    今なんて本当に、この私が我を忘れたくらいなんだから」
 幹也「はい……、教わって良かったです、橙子さん。
    でも……、あんな事全部しないとダメなんですか?」   
 橙子「……」(さりげなく視線を逸らす)
 幹也「橙子さん?」
 橙子「……」
 幹也「橙子さん!」
 橙子「怒るな、何も嘘教えた訳では無い、しっかりと役にたつ。
    ただちょっと余計な事まで教えすぎたと言うか……。
    そうだな、3日目くらいまでの分迄に抑えれば、いいんじゃないか」
 幹也「3日目? じゃあ、残りの7日分は?」
 橙子「おまけの応用編みたいなものだな。
    それもかなり特殊な……、万人受けしないと言うか……。
    だから、最初は試さない方がいいな。
    かなり退かせて、もしかしたらもう相手にしてくれない……かな?」
 幹也「あれだけ反復させられて、完全に身について……」(絶望的な表情)   






48「夜ニ彼ノ人ヲ想ウ【ダイジェスト版】」


 鮮花「幹也……。
    子供の頃、私が家から出る前、再開した時、そして今。
    どの姿も色褪せる事無く憶えている。
    思い浮かべるだけで幸せになれる。
    だけど……」(切なく息を吐く)
   「今夜はそんな気分じゃない……、もっと、こう……。
    そうね、幹也が式と抱き合って、そしてもっと……。
    そんな事をあえて想像して、あ、もう胸が締め付けられて……。
    でも、ふふふ、こんなにどきどきして、ここも……」


    指が動く。くちゅりと小さく水音を立てる。


   「うん……、これで今夜は……、楽しませて、幹也。あ、あぁぁッ……」
















あとがき




 と言う事で、質より量な「天抜き」でした。
 書いているうちに、副題の四十八手って言葉が頭に浮かんだもので。
 全部呆れずに読まれた方、ご苦労様です。


 蛇足ながら、普段はこれ書く時は「パロディ」と「えろネタ」は自分ルールで禁じ手にしています。
 抵触しているのも幾つもありますけどね。
 だから逆に15禁的なものと縛って書くのは面白くもあり、難しくもありでした。
 これが「月姫」でなら、もっと品の無いモノが羅列されたでしょうけど。
 あまり露骨なのは無いので、普段と差別化されているかはなはだ疑問ですが、
1本でも楽しまれたなら嬉しいです。




by しにを(2003/5/7)





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