月姫 SS


月光・夜桜・花煙

著 TAMAKI


 今夜は・・・


  銀色に輝く・・・


   月が見える・・・


    兄さん・・・


     貴方は・・・


      この銀色の・・・


       球体が好きでしたね・・・。






 ふと、目を覚ました。今夜は月光に照らされたから起こされ出てきてしまったみたい。

普段ならば、不機嫌になるのに・・・。辺りを見渡す・・・。





 そこには・・・



   咲き乱れたような・・・



     桜の花・・・





 「そっか・・・。私・・・好きだったな・・・。ここの桜・・・。」


 それは、この屋敷の庭にある桜の木の下だった。どうしても、名前が秋葉なので、

紅葉とか・・・と思われるかも知れない・・・。

でも、私は桜が好きである。春の真新しい心に相応しい初々しい色だから。







____そう、私はこの遠野の屋敷に帰ってきた。





   一度は大切な兄さんを奪い・・・




    一度は兄さんを奪い去りかけたこの屋敷に・・・






 いつかは、ここに縛り付けられると思って、大嫌いだった場所・・・




  私が一番愛している人がいる場所に・・・







 私が帰って、一週間くらい経った。兄さんは、最初の日の夜なんか、ずっと私と夜が

更けるまで話しにきた。そして、ずっと話した。私のいない間の、翡翠、琥珀の様子、

兄さんが帰ったときの二人の様子など・・・。

 こんなに話したのは初めてじゃないかと言うくらいに話した。





____そして、最後にこう言った・・・

「秋葉、俺は、ずっとお前の側にいる。もう、離れたりはしない。
だからずっと一緒にいよう。」







     ______涙が出た。






       だって、私が一番欲しい言葉だったから。









 そんなことを思い出しながら、桜を眺めていた。月光が桜の間から、差し込んでくる。



 不意に

 「こんなところに居たのか?風邪ひくぞ、秋葉。」

  私の後ろから、兄さんの声が聞こえた。




振り返る・・・




    そこには、優しく微笑む兄さんがいた。




      私をいつでも守ってくれた笑顔で・・・



「わかってます。でも、今夜はこの桜と月があったから・・・。だから・・・んっ」

 不意を突かれた。兄さんからのキス。奪うためではなく、優しく包み込むようなキス。

 そして、笑顔で言う。

「俺もだよ。今夜は月光がキレイだったから。目覚めたんだよ。で、中庭見たら秋葉が

居たから、一緒に見ようと思ってね。」

 赤面してしまう。こういう所に惹かれたのだから・・・。










  _____そしてしばらくは沈黙。




    二人は月と桜を見上げていた・・・














  「よぉ、こんな所で会うなんて、奇遇だねぇ。」
















  雲が月を隠した瞬間の声・・・。




    もう聞こえる筈のない声・・・。




      それが、沈黙を破った・・・。




 「貴方はシキ・・・。もう死んだはず!」

 そこには、いつかの殺人鬼が立っていた。

 とっさに私は睨む。

 しかし、兄さんが前に立った。

 「大丈夫。コイツには殺気はないよ。なぁ? シキ?」

 「あぁ、しかし、オマエもやるもんだねぇ。秋葉に行くとは・・・。親父が生きていたら

 どうなることか。」

クックックッと喉を鳴らしながら笑う。そう忘れもしない。三人で遊びまわった、あの時の

ままの笑顔のシキ。あの事件が起こる前の私も兄さんも好きだった遠野四季。

「なぁ、今日は久々に会ったんだ。秋葉もいるし、いつかの続きをしないか?志貴?」

 兄さんも微笑みながらいう。

「あぁ、そうだな・・・。秋葉もいいだろう?」

 私は異議がないのでうなずく。

 それを見たシキが笑う。

 「秋葉・・・オマエ、昔に戻ってるじゃねぇか?どうしたんだ?」

 兄さんが言う。

 「そうだな・・・。どうしたんだ?寒いのか?」

 かぶりを振る。








    ______違う。




       _____嬉しいだけ。




          _____もう叶わないと思っていたことだから。




               _____あきらめていたことだったから。








  かくして、三人で、お酒を飲んだ。二人とも情けないことに、地面に横たわっている。

 「おい!秋葉はどうしてこんなに酒に強いだ?」

  シキが兄さんに聞いている。











     _____三人でいろんなことを話した。




       _____今までのこと




         _____これからのこと










  シキは黙って聞いていた。時折、うんうんと頷いたりしている。



  そして、しばらくして、唐突に言った。



「────秋葉、オマエは、幸せになれ。こっち側に来るんじゃないぞ・・・」

「えっ?」

  不意にシキの姿が遠くなる。

「オマエには、イロイロ迷惑かけたからな。今度はオマエが幸せになる番だ。おい、志貴、

秋葉を泣かせるなよ。」

 笑顔でシキが言う。

「あぁ、わかった。約束するよ。シキ、またどこかで飲めたらいいな。」











     _____月が雲に隠れる





         _____風が吹く





             ______桜の花びらが視界を埋める





 _____風が止むと




   _____シキは消えていた。

















  ふと、兄さんがこちらを向いているのに気付く。




    もう一度、






今度は、私から目を閉じてキスをした。






















   「よかったな、秋葉。」













   そう聞こえた。













   私の髪に桜の花びらが乗って









    そして









       落ちた・・・。




























    〜〜〜〜〜F I N〜〜〜〜〜


あとがき

   こんばんわ。

   今回は秋葉さん的、「酔夢月」になってしまいました。

   本当は志貴くんとの18禁の予定が・・・・。

   いかがでしょう?

   こういうのって多いと思うのですが・・・。


   まぁ、楽しんでくれれば・・・



    でわ



    ‘02・4・11・P.M.


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