月姫 SS 訣 意 「君は真っ直ぐに育ってくれた。」 「素敵な人になったんだね。」 あの時のココロ。とうに私が失くしたものをあの子は持っていた。 そう、あの草原で出会った頃のまま、真っ直ぐで、ひたむきな気持ち。 他者を思いやるココロ。 ────本当に あの子には妹がいる。あの子を大切に思う妹・・・。 なぜなら、姉貴は私の父親を殺した。 情景は忘れない 真っ赤な部屋に佇む姉の姿を あれからは、姉貴とは連絡を取り合っていない。 なにやら、芸術家として有名になったらしい。 姉───橙子は、昔から、感情というものがなかった。 思い出すたびに、血が逆流するような怒りを覚える。 しかし、以前のようにあんなに憎いと思わなくなってしまった。 ────あの子に会うまでは・・・。 ただ、あの子と別れる二日前、協会から連絡が来た。 いつもはこんなに急いだような連絡はないのだが・・・。 手紙を開けて驚いた・・・。 姉貴が行方不明になったこと。 なぜか、ココロのどこかで、わかっていた。 姉貴がそうなるということに 姉貴は魔法使いとしては優秀だった。 私なんかよりも高度な魔法使いだった。 それに、あの性格である。 確か、なんていう名前だか忘れたが、いたように思う。 「思う」ではない。 いた筈だ。 どうしたのだろう。 昔の自分を思い出す。 魔法を教えてくれた姉 褒めてくれた姉 今回の仕事は「終えた」はずなのに。 しばらくは、独りで、どこかに、ぶらっと出かけようと思っていたのに。 「ふぅ、私もおせっかいだな」 言いながら、歩みだす。 ───事実、姉貴にそこまで出来るなら 相手も相当の能力の持ち主。 ───いくら私でも覚悟をしなきゃならない そして胸には 訣意を持って 〜〜〜Ｆ Ｉ Ｎ〜〜〜
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