〜Dream Life〜
  「志〜貴。こんばんは。」   窓を一気に開けて、志貴の部屋に入る。   「・・・あれ?」   志貴は眠ったまま。   せっかく今日は二人で夜の間はずっと遊ぼうって言ったのに。   ・・・そして、約束を楽しみにしていた私。   ・・・約束なんて忘れてしまったかのように眠る志貴。   このまま帰るのも癪なので、枕元に立ってみる。   「・・・なんだか、日本のお化けみたい。」   恨めしげに見下ろしたら、まさにそれ。   そんなことしても、志貴は目覚めない。   ―――コンコン   「あ・・・翡翠だ・・・。」   ふと、名前を呟いた瞬間、ドアが開いた。   「ア・・・・。」   こちらに気付いた瞬間に魔眼を使う。   ―――今日はこの部屋には志貴だけしかいないよ、ってだけの魔眼。   ・・・そういえばこんな魔眼の使い方も、前は全然しなかったなぁ・・・。   翡翠は一通り部屋を見回してドアを閉める。   でも、気付かれないのは気付かれないで、少し寂しい気もする。   ただ、今日はこうやって志貴と二人でいたい気分だった。    窓から月の光が射してくる。   満月のそれは、明るく、今夜は雲すらないのもわかるくらいだ。   その光に照らし出される志貴の顔。   彫刻のように整っていて、もう眼を開かないのかと思うくらい。       「ねぇ、志貴?」   ベッドに腰掛ける。   そして、答えのない相手にただ、話しかける。   ・・・こんなことも、以前はしなかったのに。   「志貴はね、私にとって、もう体の一部みたいなんだよ。」   あくまでも、微笑みながら。   そして、少し金色の髪を揺らせて・・・。   「だって、いなくちゃ、私が私じゃなくなっているみたいな気がするの。」   私の本心。   今日も、夜が待ち遠しくて待ち遠しくて仕方なかったくらい楽しみだった。   それを聞いているのかもわからない相手に告げていく。   「志貴は、私の中にずっといるの。」   そう言って胸に左手を当てる。   「この中に。」   そして右手は志貴の心臓の上に置く。   鼓動が聞こえて、ドクン、ドクンとコンスタントに私の手から聞こえてくる。      温かな体温が志貴から伝わってくる。   「ねぇ、いつも部屋に居るとき、ずっと、ずっと志貴のことを考えているんだよ。」   そう言って志貴の頬を撫で髪を掻きあげる。   少しクセのある、真っ黒な髪の毛。   「今は、お昼だろうな、とか、今は授業聞いているのかな、とかね。」   こう話しているだけなのに、微笑んでしまう。   「妹に小言言われてるのかな?とか、一杯考えるんだよ。」   こんな優しい口調、昔の私を知る者からすれば信じられないだろう。       ・・・でも、それが、今の・・、私。    「ねぇ、志貴、起きないの?」    そう言って、少し頬を撫でる。    ・・・やっぱり起きない。       「今ね、すごく思うの。この時間を、この時を抱き締めていたいって。」   今日、ここに来る前、月を見上げながら思ったこと。   「だって、こんな時間、二度とは来ないでしょう?私にはすごく大切で。」   これはここに来る途中で考えたこと。   「だって、志貴にすぐに会いに行くよりも、ゆっくり志貴の部屋に歩いて来るの。」   少し志貴の顔が「?」と考えたように見える。   「どうしてかって言うとね、その時間もデートなんだって思うと、楽しくて仕方ないの。    だって、こうしているのも、私には『デート』なんだよ。」   シエルあたりに聞かれたら、本当に驚かれるかもしれない。   「この間も一緒にオールナイトの映画観たよね。あの話、すごく好きだった。    滑稽なんだけど、二人の想いがすごく伝わってきて。」   おとついの土曜日、一緒に観た映画のこと。   ありふれた、当たり前のラヴストーリーかもしれない。   でも、私はすごくこういう話を大切にしたい。       朝の光がうっすらと照らし出されてくる。   「そっか、今日は来る時間が少し遅かったもんね。」       窓を開けて部屋を出る。   「じゃあね。志貴。今日の夜こそ、ちゃんと来るから、待っててね。」    朝が来る前に、そっと部屋を抜け出していく。     振り返らずに。       朝焼けの景色が私の眼前に広がっていく。   「志貴さま、おはようございます。」   いつもの朝のように、翡翠が挨拶をする。   「あぁ、おはよう。翡翠。」   翡翠は、少し迷っている様子なので、聞いてみる。   「なぁ、翡翠、どうしたんだ?」   「え?」と言った風に俺の顔を見て、   「志貴さま、昨夜は何かいいことでも?」   驚いた。夢の中でアルクェイドとソファの上でずっと話している夢を見たから。   「あぁ、いい夢を見たんだよ。」           ―――愛する人と、ずっと一緒にいよう、って約束する夢をね。     〜〜〜FIN〜〜〜
  あとがき   こんにちは。   瑞香さんへの、お見舞いSSです。   こう、ゆったりとした時間ありますか?というものがメインで。   やはりこういう時間って大切だと思いますね。    TYPE−MOONの人気投票も楽しみですね。   まったりと過ごす夜のSSでした。   楽しんでいただければ幸いです。   それに感想もいただければ。   あと、瑞香さん、ご自愛くださいね。   体は大切ですよ。   健康が一番ですから。   そして今年はインフルエンザが結構流行りらしいんで、これを読んでくれた方も   気をつけてくださいね。

TAMAKI

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